偶像 4
突然の痛みに咽る。
そして吐血。
何だこれは……?
兵士の攻撃が当ったのか?
弓か? 魔法か?
いや違う。そんなものは当りはしない。
目眩に身体が振れゴーレムから落ちそうになるが
何とか踏みとどまる。
何が起きたのか分からないが、
もう少しで王都を破壊できるのだ。
逃げるわけにはいかない。
歯を食いしばってゴーレムにしがみ付き
指示を出す。
「行け……! ゴーレム……!」
「ブルォォォォォ!!」
強烈な雄たけびを上げ前進する。
破壊するのだ。王都を! ハイランドを! 世界を!
だがすぐに限界が来た。
意識が遠のく。ここで気を失っては無駄死にするだけだ。
僕は無念だが姿を消し、闇の中へと逃げ去った。
――・――
原因不明の吐血。
それの理由はすぐに分かった。
身体への負担だった。王都襲撃の後、
しばらく魔法が使えない状態が続いたのだ。
本来魔族の使う魔法は人間の僕が使うには
負担が大き過ぎたのだ。
魔力の力にとり憑かれた僕は、
身体を壊すまでそれに気付かなかった。
このまま魔法を使い続ければ、
僕は衰弱死してしまうが、ここでやめるわけにはいかなかった。
そこで僕が取るべき選択肢は2つ――。
1つは人間であるこの肉体を強化して、
闇の魔法に耐える用にする事。
2つ目は闇の魔法によって消費する魔力を軽減して
人間の肉体でも耐えれるものにする事。
生まれ持った身体を作り変えるというのは、
どうも考えにくい。僕は2つ目を選んだ。
そして錬金術によって魔法水薬を作り出した。
消費する魔力を軽減するのとは若干異なるが、
自身の魔力を高める事で、結果的に
身体の負担を減らせるのだ。
身を削りながら使う魔法。
この時から僕は破滅へ向かっていたのかもしれない。
いや、そんなものには
とうに向かっていたのだ。
世界に呪いを捧げたあの日から。
破滅は始まっていたのだ。