偶像 2
地は揃った。
槍は揃った。
民は揃った。
麦は揃った。
僕は沿岸商業都市ホールを制し、
そこから世界に戦いを挑もうとしていた。
僕は王都に向けて1万の軍勢を繰り出した。
もちろん彼等を生きて帰還させるつもりはない。
王都を制圧し、ハイランド王国を掌握すれば、
沿岸商業都市ホールなど、もはや意味がない。
僕は深淵の魔術師から深淵の国王になるのだ。
ふふふ……。
「あはははははは!!」
軍勢は西へ向かう……。
――・――
王都が見えてきたとき、ハイランドの軍勢が陣を構えた。
圧倒的な数だった。
それは王都に駐在している騎士団だけでなく
各支城や、砦からも集結された大軍団だ。
僕の軍隊の10倍くらの陣が整列してあった。
普通に考えれば勝ち目などない。
だがしかし、僕には勝算があった。
もちろんそれは闇の魔法だ。
僕はスケルトン等の召喚魔法の他に、
死んだものをアンデットそして生き返らせる魔法が使える。
大きな戦場であればある程、
その媒体となる死体には困らないのだ。
それを行うための時間稼ぎなど、
1万の兵があれば十分すぎる。
やがて王都の兵士達は
真直ぐ僕の軍勢に向かって進軍し激突した。
奮闘してはいるものの、
王都の軍隊と戦っているのだ。
士気はあがらずたちまち後退し始めた。
「……闇の胎動は、古の真理――!」
僕は5mを超す巨大なゴーレムを召喚すると
それに飛び乗り、敵軍へ近づく。
「……乙女が身籠り、それを産むであろう――!!」
死霊魔法。
死んだ味方や敵をアンデットとして生き返らせる。
ふいに起き上がった死体に怯み、
王都の軍勢の進軍が止まる。
その虚を突き、スケルトンやアンデット、
そしてホールの兵士達を突撃させた。
まるで砂の城が
波に飲まれていくように崩れ去っていく陣形。
兵士の叫び声や呻き声が戦場を満たす。
(勝てる)
僕は確信した。
こうなってしまえば、もう止まらない。
王都を破壊しハイランドを壊滅させるまで
僕は止まらないのだ。
狂気。
それが僕の胸に膨らむ。
神よ!
見るがいい!
これがお前の作った現実と
お前の作った運命なのだ!
今日という日に何十万という人間が死ぬ!
僕が、殺すのだ!
そして、この世界を裁く!!
僕の軍勢は王都の城壁まで迫った……。