真実の3日目(2)~エピローグ
「まず第一に、ボクとキミがいた世界についての話をすることにしようか。ボクらが住んでいた世界は、こことほとんど変わらないよく似た世界だ。けれど、こちらの世界にはないものがある。それは、並行世界と元いた世界を行き来できる人々が存在しているということ。しかし世界中すべての人間が、そのような世界を超える能力を携えているわけではない。異なる世界に行くことができる人間――ボクらの世界ではそのような人種を、並行者と呼んでいる――になるためには、三つの条件がある。このうちの二つは先天的なもので後天的に習得することはできない。
一つ目の条件。並行者は、十五歳から十八歳までの間しか異世界に赴くことはできない。まあこれは時が来れば誰にでも当てはまることだ。二つ目の条件は、常識では考えられないような特別な力を有していなければいけないというもの。ねえ、ワタル。キミは普段生活していて、自分が他の人とは何か違う力を有していると感じたことはなかったかい?」
僕は曖昧に頷いた。
「あるにはある。でも、それはたまたま偶然が重なっただけで、別にそれが特別だとは思わない」
「その力っていうのは、少し先の未来を視ることができる、といったものでしょ?」
僕は驚いた。この力のことは誰にも言ったことがないのに。
「どうしてそれを知っている?」
「それはね、前にも言ったと思うけれど、ボクとキミが幼馴染だからだよ。ほら、見せたじゃない、遠足の時の集合写真。忘れちゃった?」
忘れているわけがない。あの、あどけなさの残る僕が映っている写真は切り抜いて机の引き出しに閉まってある。
「もちろん憶えているさ。あれは素晴らしい写真だ」
「そ、そうだね……」
何故だか、ロゼが憐みを含んだ目をこちらに向けてくる。
「ん、何かおかしなこと言ったか?」
「う、ううん。それよりね、あの写真には僕らが同級生だったことを示すほかに、もうひとつわかることがあるんだ」
そう言うと、ロゼは懐から件の写真を取り出した。僕が映っていた部分が切り取られている以外は、何の変哲もないただの集合写真だ。
「ほら、ここ見て」
指を向けられたところに目を落とすと、そこには眼鏡を掛けたおかっぱ頭の陰気そうな少女が映っていた。笑っている顔もどこかぎこちない。
「この子がどうかしたのか?」
小首を傾げる僕に、ロゼは苛立った声で言った。
「よく見てみなよ! この子誰かに似ていない?」
「そう言われてもなあ……」
第一、記憶を失っているんだから、わかるはずがないんだよな。
腕を組んで考え込んでいると、ロゼが僕に目配せを送っていることに気がついた。ロゼの視線の先には、渡瀬。隣には春人が寄り添っている。
もう一度、写真に目を戻す。確かにどこかで見たような気がしないでもない。それに、この翳りのある表情。
「もしかして、これって渡瀬なのか?」
ロゼは指で丸印を作った。
「正解」
現在の渡瀬が眼鏡を掛けて、髪をおかっぱにしたらこの写真の少女のようになるかもしれないな。
待てよ。ということは。
「まさか、僕と渡瀬も同級生だってのか?」
ロゼは首を大きく縦に振った。
「だとすると、お前が今まで言っていたことをすべて信じるとするなら、渡瀬も僕と同じように並行者とやらなんだな」
「その通り。あ、もちろんボクもだけどね」
顔を綻ばせるロゼ。そして明るい調子で続けた。
「どう? これで自分がこの世界の住人ではないってことがわかったでしょ?」
僕は小首を傾げた。
「うーん、とてもじゃないけどこれだけじゃ信じられないな」
「なんで!」
声を荒げたロゼは顔を近づけてくる。目に涙を溜めなくたっていいじゃないか。
僕は距離を取る。
「だってそうだろ。第一、その条件とやらも根拠としては薄い。年齢制限は言うまでもないとして、その異能とやらだって、僕の場合は他人より少しだけ第六感的なものが鋭敏なだけかもしれないし。それにその写真だってそうだ。僕とロゼ、渡瀬の三人が本当に同級生だったとしても、お前の言う並行世界の話とやらが嘘っぱちで、ただの小学校の時の集合写真かもしれないじゃないか」
僕の反論を聞き終えると、ロゼは不敵な笑みをこぼした。
「確かに一理あるね。でも、ボクはまだ並行者であるための第三の条件を言っていないよ」
「ああそうか、三つあるんだったな。じゃあその最後の条件とやらを聞かせてもらおうか」
ロゼがぐっと表情を引き締めるのがわかった。その挙動を見て僕も唾を飲み込む。
「それはね…………ここだよ」
ロゼは自らの灰緑色の瞳を指差した。
「視力が悪いと駄目だったりするのか?」
だとしたら渡瀬は不適合なんじゃないか? さっきの写真では眼鏡を着用していたし。
「違うよ。瞳の色が大事なんだ。ボクのような灰色がかった緑色でないといけないんだ」
なるほどな。如何にもな話ではある。ロゼのような瞳の色はあまり、というかほとんどお目にかかったことがない。
「ほお。それは実にファンタジックなことだ。しかし、ロゼよ。その条件はお前に当てはまっても、僕や渡瀬には当てはまらないだろ。ほら、見てみろよ。僕の瞳の色はどう見たって黒だ。真っ黒だろ」
両目を見開いてみせる。しかし言い負かされたはずのロゼは一切の動揺を見せない。むしろその顔からは余裕さが垣間見える。
その態度に少しむっとした僕は、渡瀬に援軍を求めようと考えた。ベンチに目をやると、渡瀬はだいぶ落ち着きを取り戻したようで、いまは春人とぽつぽつと会話を交わしている。
「なあ、渡瀬」
近づいて訊ねる。渡瀬は伏し目がちながらもこちらを見た。
「な、なに、見境くん」
「ちょっと頼まれてくれないか。お前が必要なんだ」
「う、うん。わかった」
「じゃあ、すまないがちょっと顔を上げてもらえるか」
「こ、こう?」
渡瀬は躊躇いながらも面を上げた。案に違わず、彼女の瞳の色は黒だった。それもかなり大きい。僕はロゼに勝ち誇ったよう笑みを向けて言い放った。
「渡瀬の瞳もご覧の通りの色だ。これでお前が嘘をついていたことが確定したな。並行世界なんてない」
高笑いまであげてみせたけれど、ロゼは相も変わらず悠然とした態度を崩さない。
「ワタルの言うとおり、今は二人とも黒目だね」
「今は?」
時間帯によって、文字通り目の色が変わる人間など存在するのだろうか。実在したら、オッドアイどころの騒ぎではないな。
「ところでさ」
と言って、ロゼは懐から親指ほどの大きさの物体を取り出した。
「今日はまだ目薬差してないよね」
言われてはっとした。そういえば、朝、ロゼに急かされたせいで差すことを忘れていた。
「てか、なんでお前がそれを持っているんだよ」
ロゼは目薬のボトルをふるふると振った。
「洗面台の上にあったから拝借したの。で、どう? 目の調子は。痛かったりするでしょ」
瞬きを何度かしてみる。
「痛いというよりは乾いている感じかな。僕、実はドライアイだからさ」
「ドライアイねえ……いつから?」
「いつからって…………あれ?」
いつからだ。自分がドライアイだと自覚したのは一体いつだ。
「まあいいや。とにかく差しといたほうがいいよ」
投げられた目薬を受け取り、上を向いて点眼する。すると、みるみる瞳全体に潤いが伝わっていく。どうやら自覚以上に乾いていたらしい。キャップを締め、点眼薬をポケットに入れると、ロゼが口を開いた。
「話を戻そうか。ボクが言った第三の条件は、瞳の色が灰緑色であること。ボクは見たとおり、この条件を満たしているが、ワタルとイブキのは黒色。だからボクの言っていることはおかしい。そう言いたいんだね」
「そうだ。矛盾している」
「では、これからイブキに、僕の言っていることが矛盾していないということを証明してもらおう」
そう宣言すると、ロゼは渡瀬に顔を向けた。渡瀬は少しの間戸惑いをみせていたが、やがて胸中定まったのか大きく頷いた。
すると、渡瀬は信じられない行動に出た。なんと自らの瞳に指を突っ込んだのだ。
「おい、なにやってんだ!」
突然の行動に僕は思わず叫び声をあげてしまう。次いで、その青天霹靂の行動を止めるべく渡瀬の手を掴もうと試みたが、伸ばした手は春人によって阻まれてしまう。
「よく見てみろよ。目潰しをしているわけじゃないぞ」
言われてみて初めて気づく。よく見ると、渡瀬は指を突っ込んでいるわけではなかった。
顎を引き、上目遣いをすると、中指で瞼を引き下げ、同じ手の人差し指と親指を瞳に近づける。
そう、これは幾度か見たことのある光景だ。僕自身、経験がなかったから勘違いしてしまっていた。
「……なんだ、コンタクトレンズか」
ほっとしている僕を尻目に、渡瀬はもう一つの瞳からも同様にコンタクトレンズを外していく。外し終えたのを見計らって、僕は渡瀬に声を掛けた。
「まったく、驚かせるなよ。何事かと思ったよ」
「ごめんなさい。別に驚かせるつもりはなかったの」
申し訳なさそうに言うと軽く頭を下げた。
「勝手に驚いた僕が悪いんだよ。だから顔上げろって」
渡瀬は顔を上げる。そして僕と彼女の視線がぶつかる――その瞬間、我が目を疑った。
つい先ほどまで黒色であった彼女の瞳が――灰緑色になっていた。
「お、おい渡瀬……お前、その目」
渡瀬は沈痛な面持ちを浮かべたまま言った。
「……そう。私もこの世界の住人じゃないの。この瞳の色が何よりの証拠。普段は取り替え不要のカラーコンタクトレンズを着用しているから、瞳の色について言及されることもないわ。交換が不要な代わりに一日一回必ず点眼薬を差さないといけないんだけどね」
そう自嘲気味に笑うと、渡瀬は人差し指に乗っているコンタクトレンズをぎゅっと握りしめた。
「そして、見境くん。あなたも私と同じコンタクトレンズを使用しているわ」
あまりの突飛な発言に僕は笑ってしまう。
「嘘だろ? もし僕の目にレンズが入っているのだとしたら、違和感を感じるはずだろ」
「ええ、そうね。でも、その違和感がある状態が、当たり前の状態なんだと見境くんが感じていたとしたら?」
「…………」
渡瀬が立ち上がり、僕に歩み寄る。
「よかったら、私が取ろうか?」
優しく問い掛けられた僕は、力なく頷くことしかできない。
「じゃあここに座って」
指示されたとおりにベンチに腰掛ける。隣に腰を下ろした渡瀬が僕の顔に向かって手を伸ばす。白く冷たい手が僕の顎を掴む。もう片方の手も顔に伸ばされ、細く長い指が僕の瞼を引き下げる。
そして、瞳からなにかが外れる感覚がした。
「取れたよ、見境くん。反対のレンズも取るね」
そう言うと、渡瀬は手際よくもう片方の目に着けられていたレンズも外した。
「どう、どんな感じ?」
心配そうに一連の様子を眺めていたロゼが訊いてくる。僕は眉根を揉んでから答えた。
「いや、特に変化はないかな。強いて言うなら、目に対する圧迫感が多少和らいだくらい。なんだか、目が軽くなった感じがする」
「……傍から見たら随分変わったけどな」
春人が僕の顔をまじまじと見つめる。その言葉に渡瀬とロゼも頷く。
おそらく彼らには僕の瞳が灰色がかった緑色に見えているのだろう。自分で確認できないことがもどかしい。
でも鏡なんて持ち歩いてないしな……いや、あるぞ。
「ちょっと待ってて」
僕はそう言い残すと駆けだした。公園には高い確率で公衆便所が設置されている。そして、この豊丘公園にも。
公衆便所特有の嫌な臭いに顔をしかめつつ中へ。鏡は流しの上にあった。しかし、僕は鏡の前に向かうのを躊躇ってしまう。
これまでのロゼの言い分や渡瀬の表情などを見る限り、彼女たちが異世界からの来訪者で、この僕もそうだということはおそらく嘘ではない。九割九分そうなのだろう。
だが十割ではない。その一パーセントに縋って、僕は自分が並行者と呼ばれる存在ではないと否定することができる。けれど、もし鏡を見て自らの瞳が灰緑色であるとわかってしまったら、九十九パーセントが百パーセントになってしまう。そうしたら、もう逃げられらない。僕がこの世界の人間ではないということを認めなければならないことになる。とは言っても、今更引き返すわけにもいかない。ここまで来たのは自分の意志だ。誰かに唆されたわけではない。だからもう、選択肢は一つしかない。
臍を固めた僕は、鏡の前へと一歩を踏み出す。そして顔を上げた――
鏡に映った僕の瞳の色は、奇麗な灰緑色であった。
三人のもとへ戻ってくると、ロゼが声を掛けてきた。
「これで信じてもらえるよね」
僕は大きく頷いた。
「実感は湧かないけどな。でも自分の瞳を見た瞬間、お前の言っていることが嘘ではないと思えたんだ。説明しろと言われてもできないけれど、ただ、そう思ったんだ」
「……よかった」
ほっとした様子で胸に手を当てるロゼ。
僕は気になっていることがあったので渡瀬に訊いてみる。
「自分がこの世界の住人ではないことは理解できた。そして同じ瞳を持つロゼとお前が、僕と同じ境遇だということも。だとしたら、渡瀬も何か特殊能力を備えているんだろ。一体どんな力なんだ? よかったら教えてくれないか」
手から火を出したり、空を飛んだり、瞬間移動ができたりするのだろうか。もしそんな能力を持っているとしたら羨ましいな。僕の力なんてあってないようなものだし。
僕は何の気なしに訊ねただけなのだが、この問いを聞いた渡瀬はひどく狼狽していた。
「えっと、あの、それは……」
前髪が汗で額に張り付いている。その様子を見てとった春人がポケットからハンカチを取り出し、彼女に手渡す。
「もしかして、あまり口には出せないような類の力なのか?」
しかし、渡瀬には僕の声など届いていないようで、渡されたハンカチを顔に押し当てじっと俯いている。
「代わりに、僕がその問いに答えよう」
ロゼが口を開いた。その顔は何故か少し悲しげだ。
「まあ、それでもいいか。じゃあロゼ、教えてくれ」
「イブキの持つ力は少々特殊だ。そして、その力はボクがここにやってきたこと及び、昨日、今日と二日間にわたってボクが記憶喪失の演技をしていたこと、さらにはワタル、キミの記憶があやふやなものになっていることと深く関係している。いや原因といってもいい。では、言おう。イブキは――」
一拍置いてロゼは言った。
「他人の記憶を操ることができる」
「え……」口から声が洩れる。
もうなにを訊いても驚くことはないだろう、と高を括っていた。僕は足の力が抜けて地面に膝をついてしまう。
「イブキは他人、または自分の過去の記憶を消したり、書き換えることができる。つまり、偽の記憶を植え付けることができるんだ。そして、ワタル。キミの記憶が曖昧模糊になってしまっているのは、おそらくイブキがキミに対してその能力を行使したからだろう。もといた世界の記憶を消し、初めからこの世界の人間だという偽の記憶を与える」
僕はベンチから立ち上がり、ロゼに訊ねる。
「……そんなことが可能なのか?」
「可能もなにも、キミ自身が一番理解しているだろ?」
「で、でも」
僕はロゼに食ってかかる。
「渡瀬がやったっていう証拠なんてないじゃないか。僕が過去の記憶を失ったのだって、どこかに頭をぶつけたからかもしれないし……」
僕の反論を聞いても、ロゼは顔色一つ変えない。そして一歩僕に近づくと言った。
「じゃあどうしてキミは、自らの父親が単身赴任をしていることや、母親が他界しているなどという嘘を知っている。頭を打っただけで記憶まで書き換わるとでもいうのかい?」
「それは……」
反論できない僕を見てロゼは呆れたように首を横に振った。
「まあいい。とにかくイブキはキミに偽りの記憶を与えた。それがすべてだ」
そう言うと、ロゼはふんと鼻を鳴らした。
沈黙が下りる。しばらくすると、今まで黙っていた春人が口を開いた。
「お前はどうしてここにやってきたんだ」
話を振られたロゼは春人の方に体を向ける。
「そうだね、波流春人。まだその話をしていなかった。でも、その話をするにはいくつか説明をしておかなければならない」
咳を一つすると、ロゼは語り始めた。
「中学二年の終わり、キミとイブキはこの世界を調べるための調査員に選ばれ、中学三年に進級すると同時に世界を渡った。調査員とは言っても、実際にこの世界のすべてを調べるというわけではない。ただ学生としてこの世界で過ごしていくだけでいい。言うなれば留学生みたいなものだ。ただし、ひと月に一度、その月にあった出来事などを報告書にまとめて提出しなければならない。その報告書というのはボクのような学生でも閲覧ができるもので、学校全体に公開されているんだ。とは言っても、いちいちその報告書をチェックする人は多くない。なぜなら、ワタルとイブキの報告書には特別なことはほとんど書かれていなくて、至極当たり前のことしか書かれていなかったから。まあそれは二つの世界が非常に似通ったものであるから、別に二人のせいってわけじゃあないんだけどね。
でもボクは毎月それにしっかり目を通していた。二人がどういう暮らしを送っているのか、とても興味があったから。
そして、ワタルとイブキが旅立ってから二年近く経った三月の終わり。いつものように二人の書いた報告書を読んでいたとき、ボクはふと違和感を覚えた。二つの報告書の内容がとても似ていたんだ。なにが似ているのかは明確には言うことはできないけれど、直感でそう感じたんだ。その一度感じた違和感は、それ以前の報告書を読み返しいくうちにどんどん膨らんでいった。二つの報告書が似ていると言ったけれど、過去の報告書を読むと、イブキの報告書には特に変化はみられず、ワタルの報告書がイブキの報告書に似ていたんだ。その時、ボクは確信した。『もしかしたらワタルの身になにかあったのではないか』、とね。
そう思ったボクは、数日だけこちらの世界に行かせてくれ、と先生に頼み込んだ。先生も、二人の様子を見に行くだけなら、と特別に世界を渡ることを許してくれた。そうしてボクはこの世界にやってきた」
話し終えると、ロゼは大きく息を吐いた。
「それで僕のところにやってきたのか」
ロゼは小さく頷いた。
「キミに会えばはっきりすると思ったからね。そうしたら、キミはボクのことをすっかり忘れていた。おまけに、もといた世界のこともね。その瞬間、ボクは気づいた。イブキがワタルの記憶を書き換えたんだと」
初めて会ったときのロゼが何か知っている風な口ぶりだったのは、こういうことだったのか。
「僕にいろいろ訊いてきたのも、自らの推論に確信を得るためだったんだな」
「そうだ。確信が得たかったからね」
「なるほど。お前がこの世界にやってきた理由はわかった。でもまだ気になることがある。どうして記憶喪失のふりをする必要があった?」
僕の問いを聞いたロゼは皮肉めいた笑いをみせた。
「ボクがキミの家を初めて訪れた次の日。キミが学校に行った直後、イブキが家にやってきたんだ」
「渡瀬が?」
何故? という言葉が僕の頭の中を駆け巡った。僕に話すことがあるなら学校ですればいい。わざわざ、我があばら家に来る必要はない。とすると、僕以外の人間に会うために僕の家に来たということになる。僕の家にいる僕以外の人間は一人しかいない。いやでも、それはおかしい。渡瀬はロゼがこちらの世界に来ていることを知らないはずだ。それなのにどうして僕の家にロゼがいることを知っている?
ああ、待てよ。ロゼは言っていた。僕の家は盗聴されている、と。
……まさか。
「盗聴していたのは渡瀬なのか?」
突然の飛躍にロゼは目を丸くする。しかしすぐにもとの妖艶な表情を取り戻す。
「随分と察しがいいね。その通り。おそらくイブキはキミの家を盗聴していた。そしてボクとキミとの会話も聞いていたのだろう。これではワタルにすべてばれてしまう、そう思ったイブキはボクに会いにきた。ボクの記憶を消去するためにね」
と言うと、ロゼは渡瀬に顔を向けた。渡瀬は神妙な面持ちで頷くと、言った。
「あの日、見境くんがマンションを出たのを確認した後、私はあなたの家に向かった。そして、インターホンを鳴らして出てきたロゼの記憶を消した……はずだった」
すると、渡瀬はきっと顔を上げ声を張り上げた。
「そう、あのとき確かにロゼの記憶を消去したの。そして春人くんが書いてくれた置手紙を残して、私はロゼを連れて駅前に向かい、そこで彼女を置き去りにしたの。でも、なぜかロゼは見境くんの部屋に戻ってきた。そのときも疑問に思ったけれど、二人の会話を聞く限り、ロゼは記憶を失っていたようだったから一安心したわ。だけど、結局こんな状態になってしまっている。ねえ、ロゼ。どうしてあなたは記憶を失っていないの? 私の記憶消去は完璧だったはずなのに!」
そこまで言うと、渡瀬は自分の腿を力の限り叩いた。
いつも朝早くに学校に来ているはずの渡瀬がその日に限って遅刻ぎりぎりだったのは、このような理由があったのだ。それに、あの置手紙の筆跡。道理で見覚えがあったわけだ。 一昨日、春人の家を訪れた時、彼の母親はこう言っていた。『この表札、春人が書いたものなのよ』、と。
感情を昂ぶらせている渡瀬に、そう問われたロゼは宙を見上げると、言った。
「ボクが記憶操作に対する対策もなしにこの世界にやってくるわけないだろう」
その言葉に渡瀬は絶句した。おそらく、渡瀬の能力を封じる手があるのだろう。
二人の間に沈黙が下りる。僕は腕を組み、渡瀬の話を反芻する。
なるほど、そういうことだったのか。ロゼは渡瀬がボクの家にやってきた段階で盗聴されているのだと悟った。そして記憶喪失のふりをすることで渡瀬を油断させた。今日のデートだって渡瀬をここにおびき寄せるための罠だったのかもしれない。何故、一日中デートをしたのかはわからないけれど。
何度も頷いている僕を見て、ロゼがおもむろに口を開いた。
「どうやらワタルも事情を把握できたようだね」
「ああ、おおよそは。ただ、一つだけ腑に落ちないことがある」
「奇遇だね。ボクも一つだけどうしても理解できないことがあるんだ。おそらくキミの考えていることと同じだろうけどね。これはいくら考えても答えに辿り着かないんだ。ねえ、イブキ」
そう言うと、ロゼは渡瀬に近寄った。その声に真剣みが帯びる。
「どうしてワタルの記憶を操作したの? その動機はなに?」
「そ、それは……」
しかし、そこで渡瀬は口を閉じてしまう。
「ワタルもボクと同じ疑問を抱いているんでしょ?」
僕に同意を求めてくるロゼ。僕はかぶりを振る。
「いや、それももちろん気にはなるんだけど。僕が一番気になるのは、春人、どうしてお前が渡瀬と一緒なのかということなんだよ」
そう問われた春人は、諦めにも似た表情を浮かべた。
「たまたま、って一言じゃあ納得してもらえないよね」
「当たり前だ」
たまたまこの時間にこの公園の木の陰にいたなんていう言い訳が通用するわけがない。
僕が即答すると、春人は大きく肩をすくめた。
「やっぱりそうだよな。でも俺は言う気はない。言いたくないんだ」
そうきっぱりと言う春人。これじゃあ埒が明かない。するとロゼが口を開いた。
「じゃあしょうがない。二人とも話してくれる気がないのなら、実際に視るしかないかな」
「視る?」
首を傾げる僕に、ロゼは噛んで含めるような調子で言った。
「ワタル、キミの力は未来を視ることができるものだ。それに対してボクの力はキミの反対の力。すなわち、過去を視る、または視せることができるんだ」
「そんなことが可能なのか?」
「それを今からみせようというんだ。ところでワタル、先ほどキミはこの公園にはブランコが設置されていたと言ったね? そして子どもが使用中に事故を起こして撤去されてしまったと。それは嘘だ」
「え? いやだって現にここにはブランコはないじゃないか」
「ブランコは確かに撤去された。それは事実だ。僕が嘘だと言ったのは、撤去された理由だ。事故で撤去されたのではない。昨日、この辺をぶらついていたときに聞いたんだ。ここにあったブランコは、ある日ズタズタに切り刻まれて使い物にならなくなってしまったらしい。それが撤去された理由だ」
「そんな。それじゃあ何故僕は子供が事故を起こしたなどと……まさか」
ロゼは頷いた。
「おそらく、イブキの仕業だろうね。キミにブランコの存在を思い出させないために」
「どうして?」
どうしてそんなことをする必要がある。僕にとってそのブランコは余程重要な存在だったとでもいうのか。
ロゼは言葉を続けた。
「また、ボクは一昨日こう言った。『高校に入る直前の時期に記憶を失うような出来事があったはず』だと。さらに、聞いた話によると、ブランコが壊されていたのは去年の四月の初旬頃らしい。この二つから考えられることは、高校入学前の春休み、この場所でイブキがワタルの記憶を作り変えた、ということだ。どうかな、イブキ?」
水を向けられた渡瀬はしばらく固まっていたが、やがて小さな声でこう呟いた。
「三月三十一日」
「なるほど、三月最後の日か。では視てみるとしようか。一年前の三月三十一日、この場所で何があったのか」
そう言うと、ロゼは右手で僕の左手を握った。続いて左手で渡瀬の右手を握る。
「ほら、ワタルも波流春人の手を握って」
言われるがままに、空いた右手で春人の左手を掴む。春人も同様に右手で渡瀬の左手を掴む。
「じゃあ目を閉じて」
そう促され目を閉じた瞬間――頭の中に強烈なイメージが飛び込んできた。
目を開けると、そこは今までいた豊丘公園で、僕はベンチに座っていた。しかし、時間帯が違う。あたりは夕闇に包まれ、空は赤く燃えたぎっているようだ。先ほどまでいたはずの三人の姿も見えない。どこに行ってしまったのだろうか。ベンチから立ち上がり、周辺を見回す。その時、僕は信じられない光景を目にした。僕がいるベンチとは対角の位置、そこに、あるはずのないブランコがあったのだ。そして支柱から吊り下げられた二つの座板にそれぞれ腰かけていたのは――僕と渡瀬だった。
その光景に吃驚しながらも、僕はロゼの特殊能力を思い出す。
そうか、これは過去の光景なんだ。一年前の三月三十一日の光景。ということは、これは僕が記憶を失う直前ということなのだろうか。
状況を把握したことで落ち着きを取り戻した僕は、二人のいるブランコに近づいていく。ブランコは多少老朽化が進んでいるようで、ところどころペンキが剥がれている。
二人とも僕の存在には気づいていない。これは言わば、過去の映像を見ているのと同義なのだろう。よって気づかれるわけはないのだが、あまり近づくのも憚られるので、僕は二人の声がぎりぎり聞こえる位置まで歩を進めると、地面に片膝をついた。
一年前の『僕』の声が聞こえる。
「本当にいいのか?」
その言葉に、渡瀬は寂しげな面持ちで静かに頷く。
「私は後悔しないよ。だって二人で決めたことでしょ? もう覚悟はとっくにできてる。それにね、全てを忘れてしまったとしても楽しく生きていける気がするの――この世界は優しいから」
二人で決めたこと? 会話の流れがいまいち掴めない。それは過去の『僕』も同様なようで、
「優しい?」
と首を傾げた。それに対し渡瀬は、
「うん、私はそう感じる。考えてもみなよ。多くの人がこの世界は理不尽だとか不公平だとか欺瞞に満ちているとか嘆いているよね。でも、どうしてそういう風に世間を慨嘆することができると思う?」
腕を組んで少し考え込む仕草を見せた後、『僕』は言った。
「どうしてって……そりゃあ、実際に世界の不条理さや差別、虚偽に遭遇してきたからじゃないのか?」
『僕』のその答えに渡瀬は、「うーん」と唸る。
「六十点ってところかな」
「いつからクイズになったんだよ……。じゃあ、この問題が百点満点なら残りの四十点はなんなんだ?」
呆れたように言った『僕』を見て、渡瀬は指を左右に振った。
「大事なポイントを忘れてる。それはね、何故私たちがこの世の中のマイナス面を知っているかだよ。考えてみたことある?」
そこでまた『僕』は考え込んでしまう。二人の間に沈黙が下りる。
いったい、一年前の僕たちは何の話をしていたんだ? 世界が優しいだの、この世のマイナス面だの、さっぱり言っていることが理解できない。それに会話を交わす二人の顔はとても楽しげだ。特に渡瀬は、いまでは考えられない笑顔を見せている。これから、話し相手の記憶を消そうとしている人間には到底みえない。本当にこれからそんな出来事が起こるのだろうか。
しばらく思索に耽っていたために二人の会話が頭に入ってこなかった。僕を現実に引き戻したのは、
「お前の記憶力はミジンコ並か!」
という過去の『僕』の突っ込みだった。その突っ込みに対し、渡瀬が何やら小難しいことを述べていたが、よく聞き取れなかった。話し終えた渡瀬に向かって、『僕』は肩をすくめると言った。
「まったく……今はミジンコの立ち位置なんてどうでもいいんだよ。そんなの後でいくらでも考えられるだろ」
「……後で……か」
悲しげな声色で呟くと、渡瀬は俯いてしまう。
あっ、と『僕』は声を漏らす。その顔からは後悔の念が見て取れた。
渡瀬は顔を上げる。そして、遠くを見るようにして言った。
「気付いた? こうやって無駄話に興じることができるのもこれで最後かもしれない――さっきの問いの答えを教えるよ」
「僕たちが世の中の負の面を知っている理由?」
視線を『僕』に戻すと、渡瀬は少し声を落とした。
「そう。それはね、負サイドの逆ベクトルの事象を知っているからだよ。いや、教えてもらっているという言い方が正しいかな。世の中のプラス面を知っているからこそ、マイナス面を嘆くことができるんだ。だから優しいと言ったの。もし、この世界が慈愛に満ちていなかったとしたら、私たちは善悪の区別をつけることもできないからね。これがこの問題の解。どう? 納得した?」
『僕』はしばし唇に拳を当て考え込んでいたが、やがて大きく二度頷いた。
「なるほど。お前のその考えなら、僕たちもこれからうまくやっていけそうだな」
そう言って朗らかに笑う『僕』。それにつられるように渡瀬も笑った。
「そうだね。じゃあ、そろそろ始めよっか?」
「ああ」
二人は立ち上がると、少し前に出て向き合った。渡瀬はブランコに背を向けている。
始める? 何を? 状況を飲み込めない僕を尻目に、二人は互いの息が触れる距離まで近づく。『僕』はさらに距離を詰めようとする。すると、渡瀬がそれを手で制した。
「その前に。ちょっと後ろ向いてくれる?」
狐につままれたような様子の『僕』は、渡瀬に言われるままに身体を後ろに向ける。
「え? こうでいいか?」
「うん……」
すると、渡瀬は踵を返し、背中を向けている『僕』から離れていく。彼女の向かう先には先ほどまで座っていたブランコ。そしてしゃがみこむと、自分が座っていた座板の辺りを弄り始めた。
何をする気なんだ? よく観察してみようと近づいてみたときには、彼女はもう既にその作業を終えていた。立ち上がった渡瀬を見た僕は、思わず目を疑った。何故なら渡瀬が、先ほどまで自分が身体を預けていた座板を抱えていたからだ。
それを腕に抱え込んだまま、再び『僕』のもとへ戻っていく渡瀬。さすがに不審に思った『僕』が振り返ろうとしたまさにその時、
「おい、どうし……が…ァ…ッ!?」
渡瀬は『僕』の首筋に向けて、ありったけの力で座板を振り翳した。そのまま前のめりに崩れ落ちる『僕』。
「…………」
渡瀬は何も言葉を発さず、ただ倒れている『僕』の背中を見つめている。
座板を手にした瞬間から嫌な予感はしていたのだが、まさかこんな行動に出るとは。
僕が唖然としていると、うつ伏せに倒れこんでいた『僕』が僅かに顔を上げ、渡瀬の方を向いて、言った。
「……な、なん…で?」
それだけ口にすると、『僕』は完全に気を失った。
「……………ごめんなさい」
渡瀬はそうぽつりと洩らすと、顔を覆ってその場にへたり込んだ。
僕は深呼吸をして落ち着きを取り戻そうと試みる。が、胸の動悸はなかなか収まってくれない。そして何故だか首筋が痛む。まるで僕に、いま見た出来事を憶えているか、と問いかけてくるように。
その後もしばらく、首筋を押さえ痛みと格闘していると、ブランコ奥の植え込みの陰から制服姿の男が出てくるのが見えた。男はその惨状を確認した後、渡瀬に近寄ると、彼女をそっと抱きしめた。まあ、この男の登場はある程度予想していた。
波流春人。やはりこいつは、僕らの件に深く関わっていたのだ。
抱きすくめられた渡瀬は、春人の胸に顔を預け嗚咽を漏らしている。そんな彼女に春人は優しく声を掛ける。
「こうするしかなかったんだ。お前は何も悪くない。これが航の願いでもあったんだから」
僕の願い? こうして首筋を打ちつけられて気絶することが?
「でも……こんなこと、私……取り返しのつかないことを……!」
半ば叫ぶようにそう言って、何度も何度も首を振る渡瀬。
「なにも死んでしまったわけじゃないんだ。そこまで思いつめることはない」
それでも渡瀬はかぶりを振る。涙が宙に飛び散り、地面に落ちる。
「そうかもしれない。……けれど、これからやろうとしていることは、航のこれまでの人生を殺してしまうようなものだわ……。私、そんなこと……」
泣きじゃくる渡瀬。春人は渡瀬の肩を持つと強く揺さぶった。
「それでも、たとえ航の過去を殺してしまうことになったとしても、伊吹、お前はやらなくてはいけないんだ。それがこいつの望みなんだよ!」
声を張り上げた春人の目には涙が溜まっていた。
そのまましばらく二人は声を発しなかったが、やがて渡瀬がおもむろに立ち上がった。
「私、やるわ」
自分で発した言葉に力強く頷くと、渡瀬は倒れている『僕』に近づいていく。
そうして、『僕』の顔の横に腰を下ろすと、そっとその頭を持ち上げた。
「ごめんなさい……そして、ありがとう……」
そう言って渡瀬が、『僕』の額に手を当てた瞬間――世界が真っ白な光に包まれた。
目を開けると、両手に温かさを感じた。左はロゼ、右には春人がいる。そして向かいには涙を流している渡瀬。
そうだ。僕らはロゼに過去を視せられていたんだ。ということは、今視た光景が一年前の三月三十一日、僕の身に起こったことなのか。渡瀬は僕を気絶させた後、あの場で僕の記憶を操作したのだろう。異世界の存在を消し、僕が生まれたときからこの世界の住人であるとの偽の記憶を植え付けた。
僕たちは手を繋いだまま、しばらくそれぞれ考えに耽っていたが、やがてロゼが手を離した。
「まさか、ワタルが自らの記憶を消したいと願っていたとはね……」
その呟きに僕は殊勝に頷く。
「そうだな。あの光景のなかでの春人と渡瀬の会話を聞く限り、そうとしか考えられない。ただ、一つ妙な点がある」
「妙な点?」
こちらを向いたロゼに、僕は大きく頷いてみせる。
「もし僕が自分の記憶を消してほしいと願っていたとするならば、どうして渡瀬は僕を気絶させた? 僕に反抗する意思などないはずだろ」
あ、とロゼは声を漏らした。僕は少し声を押し殺す。
「それに、だ。僕の首筋に叩き込まれたあの座板。渡瀬はブランコを少しいじっただけですぐにそれは鎖から外れた。いくら老朽化が進んだ代物であったとしても、あんな短時間で取り外せるわけがない。と、いうことはだ」
「予め、取り外しやすいように細工を施していた」
ロゼが僕の言葉を引き取った。僕は一つ頷くと、押し黙ったままの残りの二人に水を向ける。
「なあ、渡瀬、春人。教えてくれ。どうして僕を殴ったりしたんだ。記憶を失わせるだけならそんなことする必要はないじゃないか」
二人はしばらくの間、下を向いたまま何も言葉を発しなかった。夜の帳が下り、冷たい風が吹きつける。沈黙に耐えかねて、僕が問い質そうとしたとき、
「あの日」
渡瀬がおもむろに切り出した。
「私は航に呼ばれて、この公園に赴いた。呼ばれた理由には見当がついていた」
渡瀬は昔を思い出すように宙を見上げると言葉を続けた。
「以前から、私たちはあることについて話し合ってきた。そのあることとは、お互いのこれまでの記憶を消去して一からこの世界で生きていくということ。私たちはこの世界にやってきてから、本当に楽しい日々を送ってきたわ。もちろん、もといた世界が楽しくなかったわけではなかったけれど、この世界での暮らしは別格だった。何しろ、この世界での私は自由気ままに生活を送ることができた。もといた世界では、並行者というだけで学校中の注目を集めて、私は一挙手一投足に気を配らなければならなかったの。でも、この世界に来てからは違った。誰も私の言動に気を留めることもない。私は世間一般のごく普通の学生として生活を送ることができていた。それがどんなに幸せなことか。航も私と同じ思いを抱いていた。その思いが大きくなっていくうちに、私たちは次第にこう考えるようになってきたの」
一拍置いて、渡瀬は言った。
「初めからこの世界の住人だったらよかったのに、と。並行者というレッテルに縛られることなくただの学生として生活を送りたいという思いが強くなってきた。そんな折に航が提案してきたの。
『伊吹の力で僕たち二人の記憶を書き換えて、どこか遠いところで一から暮らさないか』って。中学を卒業した後、春休みにお互いの記憶を消す。そして、四月から高校生として新たな地で新たな生活を開始する。その航の提案は非常に魅力的なものではあったわ。
でも、結局私は自らの記憶を消すことはできなかった。なぜなら」
そこで言葉を切ると、渡瀬はその灰緑色の瞳を春人へ向けた。
「春人くんのことを忘れたくなかったから」
見つめあう二人。僕は水を差すようで申し訳なかったが、一応確認のために訊いてみる。
「二人は付き合っているのか?」
渡瀬と春人は同時にゆっくりと頷く。
「いつから?」
「中学三年の九月頃だったと思う。俺が告白したんだ」
春人が答えた。
「僕は二人が付き合っていたことを知っていたのか?」
「いいえ。というより、誰も知らなかったと思う」
今度は渡瀬が答えた。
「どうして隠す必要があった? 別に言っても問題はないだろうに」
渡瀬は返答に詰まっている。それを見兼ねたのかロゼが口を開いた。
「イブキは隠さなければならなかったんだよ。異世界の異性と恋愛関係になることは固く禁じられているからね」
付き合うことが禁じられている? 深い関係になることで何かまずいことでも起こるというのだろうか。僕が首を傾げていると、ロゼは渡瀬を一瞥して言った。
「そういう深い関係になると、自分が異世界からの来訪者だという秘密をその相手に漏らしてしまう恐れがあるからだよ。事実、イブキは波流春人にそのことを漏らしてしまったようだけどね」
なるほど。確かに付き合った相手に対して秘密を抱えているということは苦しいことかもしれない。それに耐えかねて、渡瀬は春人に自分の秘密を教えてしまったのだろう。
僕はロゼに訊ねる。
「その決まりを破ってしまったら、なにか罰則でもあるのか?」
その問いにロゼはすぐには答えなかった。春人も気になるのか、ロゼをじっと見つめている。幾ばくかの逡巡の後、ロゼはおもむろに口を開いた。
「この世界の人間に秘密を漏らしてしまった者は、もといた世界に帰らなければならない」
ロゼの答えは僕が予想していた罰よりもずっと軽いものだった。最悪の場合、命を取られるのではないかとまで考えていた。ほっと息を吐いた僕とは対照的に、春人は目を見開いたまま固まっている。
ロゼはそんな僕たちの様子を見比べた後、こう言った。
「もしかしたら、先生たちもワタルの身に起きたこと、そしてその犯人がイブキだということに勘付いていたのかもしれない。それ故に、ボクは世界を渡る許可を与えられんだと思う。普通ならどんな理由があろうともそんな提案は却下されるんだけどね。
だから、イブキ。ボクはキミを連れ戻さなければならない。もといた世界へ」
渡瀬を見ると、彼女は悲しげな表情を浮かべている。そして、目頭を拭うと言った。
「いつかはこうなるだろうとは思っていたわ。だけれど、それはもう少し後になると思ってた。まさか、こんな早くばれてしまうなんてね」
悲しげに微笑む渡瀬。ロゼは彼女に近寄ると、手をそっと握った。
「では、そろそろ行こうか」
渡瀬はこくりと頷くと、ロゼとともに僕のわきを通り過ぎようとした。
このまま何も言わずに行ってしまうのか。残された僕と春人はどうすればいいんだ。
僕がそう思った次の瞬間、、
「待ってくれ!」
春人が声を上げた。その声に反応して、渡瀬とロゼは歩みを止める。
「ど、どうしたんだい、波流春人?」
ロゼが驚いた様子で声を掛ける。
春人は大きく息を吸うと、至極真面目な顔つきで言った。
「俺も連れてってくれ」
その言葉に渡瀬とロゼは大きく目を見開いた。
「俺をお前たちがもといた世界へ連れてってくれ」
春人は繰り返し言った。渡瀬が戸惑いの含む声で言う。
「な、なに言ってるの春人くん! 冗談はよして。そんなの無理に決まってるじゃない」
「無理だなんて誰が決めた? この世界の人間が異なる世界に行けないなんて、誰か試したことでもあるのか?」
「そ、それは……」
春人の反駁に渡瀬は口ごもってしまう。
すると、黙って話を聞いていたロゼがにやりと笑った。
「波流春人。確かにキミの言うとおりだ。この世界で並行者になれる人間がいないと決まったわけじゃない」
「ちょっとロゼまで突然何を言い出すのよ!」
言い募る渡瀬をロゼは片手で制した。
「波流春人の意見は聊か暴論が過ぎるかもしれない。だがよく考えてみなよ、イブキ。ボクたちにできて、並行世界の住人である彼にできないと言い切ることがはたしてできるだろうか? ボクには到底できないね。だったらやってみる価値はある。結果はどうなるかわからないけどね」
そう言って、妖艶な笑みをこぼすロゼ。それでも渡瀬は納得できないようで、何度も何度も首を横に振っている。
「なあ、伊吹。聞いてくれ」
春人が渡瀬の肩に手を置く。
「俺はお前のことが好きだ。どうしようもなく好きなんだ。もしお前がいなくなってしまったなら、俺は生きている意味を失ってしまう。俺の生き甲斐を失わないためにも、伊吹と一緒にいられる方法があるなら、たとえそれがどんなに低い確率でも試してみたい」
「春人くん……」
そっと自分の頭を春人に預ける渡瀬。春人は彼女を優しく抱きしめる。
「だから伊吹、一緒に行かせてくれ」
しかるべく後、渡瀬は春人の胸の中で小さく頷いた。
「私も春人くんと一緒にいたい……」
「伊吹……」
うっとりと見つめあう二人。すると、ロゼが一つ咳をした。慌てて離れる渡瀬と春人。
「どうやら覚悟はできたようだね。だが波流春人、本当にいいのか? 下手をしたら、時空の狭間に迷い込んで帰ってこられなくなるかもしれない」
ロゼの心配を春人は軽く笑い飛ばした。
「その時はその時さ」
「そうか。ならそろそろ行くとするか。ボクとイブキで道を作る。キミは遅れずについてきてくれればいい」
「わかった。エスコートよろしく頼むよ」
そう言って春人はロゼの背中を軽く叩く。
ロゼは苦笑すると、何故か僕の方に顔を向けた。
「ワタル、キミはどうする?」
「どうするって?」
「キミももとの世界に帰る気はないかと訊いてるんだ。キミなら波流春人みたいに生命の危険を冒すことなく戻ることができるんだが」
三人の視線が僕に集まる。僕はあらかじめ決めていた答えを言うことにした。
「いや、僕は行かないよ。記憶を失った僕が行ったところで戸惑うだけだろうし。それに、記憶を失う前の僕はこの世界で生きていくことを選んだ。この優しい世界で生活を送ることがかつての『僕』の願いであり、そしてそれは、いまの僕の願いでもあるんだ。だから、僕は行かない」
僕の答えを聞いたロゼは、ふふっ、と笑った。
「そうか。キミ自身が決めたことなら、ボクに口を挟む権利はない。それじゃ元気で。また会えることを願っているよ」
「ああ、元気でな」
僕が別れの言葉を述べると、ロゼは艶美な笑みを浮かべながら僕のわきを通り過ぎていった。僕の前には渡瀬と春人が残る。
「お前たちも元気でな。仲良くやれよ」
「言われずともそうするさ。な、伊吹?」
水を向けられた伊吹はこくりと頷く。そして、上目遣いで僕を見上げた。
「航、本当にごめんね。私、取り返しのつかないことを……」
僕は大きくかぶりを振った。
「渡瀬は何も悪くないよ。あの日の春人も言っていたけれど、お前は、記憶を失う前の僕が望んでいたことをやったまでだ。気に病む必要はないさ」
「航……」
「そんなしおらしい顔するなよ。旅立つときは笑っていなくちゃ」
「……わかった」
そう言うと、渡瀬は初めて明るい笑顔を見せた。僕もつられて笑顔になる。
「じゃあ二人とも達者でな」
「ああ、それじゃあな、航」
「元気でね、航」
二人は手を繋いで僕のわきを通り過ぎていった。
二人の足音が徐々に遠ざかっていく。
僕は決して振り返ることはしなかった。振り返ったら、彼らを引き止めてしまいそうだったから。
僕は二人の足音が聞こえなくなるまで、溢れ出る涙が零れ落ちないように、星が瞬く夜空を見上げていた。
エピローグ
あれから一週間と二日が過ぎた。今日は週の始まり、月曜日である。
いつものようにニュースキャスターの快活さ溢れる声で目を覚ました僕は、日課であるモーニングコールを怜に行うと、洗面所に向かい、コンタクトレンズを装着した。そして点眼薬を一滴、目に落とす。あの日、家に帰った後、洗面所の下の戸棚を調べてみると、大量のコンタクトレンズが見つかった。どうやら予備として置かれていたものらしい。それ以降は、寝る際にレンズを外すようにしている。僕がこの世界の人間ではないということを忘れないために。
制服に着替え、鞄を手に家を出る。いつものように豊丘公園をショートカットとして利用し、学校へと向かう。
あの公園での一件以降、僕の身には特に変わったことは起こらなかった。渡瀬に関しても、両親の都合で転校した、ということになったので、さして騒ぎにはならなかった。
しかし、忽然と姿を消した春人に関しては、一悶着があった。何しろ、春人には家族がいるのだ。両親は警察に被害届を出し、周辺住民と協力して徹底的にこの辺りを探したそうだ。その結果は言うまでもない。もちろん、僕も彼の居所に心当たりがないか訊かれたが、白を切り通すしかなかった。第一、本当のことを言ったところで信じてもらえるわけでなし。春人の両親には気の毒なことだが、いくら探したところで見つかることはないだろう。文字通り、もうこの世にはいないのだ。
クラスの方も初めの何日かは混乱があったが、不思議なことに一週間も経つと、その騒ぎも次第に沈静化していった。まあ実際そんなものなのかもしれない。
のんびり歩いていたせいか、下駄箱で外靴を閉まっていると朝のホームルームを告げるチャイムが校内に鳴り響いた。慌てて上履きをつっかけ教室に向かう。廊下を走り、突き当りを左に曲がった瞬間、目の前にいた制服姿の少女とぶつかった。
「ごめん。急いでて前を見てなかったから」
起き上がり頭を下げると、その小柄な少女は僕を見向きもせずにトイレの方に走り去ってしまった。ボブカットの黒髪を揺らしながら廊下を駆けるその少女の後姿にはどこか見覚えがあった。でも、それが誰であるかは思い出せない。
首を傾げながら、教室の後ろのドアを引き、教室内に入ると、幸運なことにアキ先生はまだ姿を見せていなかった。席に着くなり、後ろの席の怜が僕の肩を叩く。
「よかったわね、まだアキちゃん来てなくて」
僕は体を捻る。
「ああ、助かったよ。でも珍しいこともあるもんだな。アキ先生が遅れるなんて。朝だけは必ず時間通りに来てただろ」
「今日はしょうがないんじゃないかな」
なにか事情を知っている様子の怜。僕は気になって訊いてみる。
「なにか心当たりがあるのか?」
すると怜は平らな胸を反らして言った。
「実はね、転校生がやってくるらしいの」
「転校生? こんな時期におかしくないか」
僕が問うと、怜は口を尖らせた。
「そんなことあたしに言われても困るわよ。とにかく、今日からうちのクラスに加わることになるらしいのよ。しかも、噂によるとハーフらしいよ」
「ハーフ? どうしてそこまで知ってるんだ」
「あたしも人づてに聞いたから詳しくはわからないけど、なんでも瞳の色が変わってるんだって」
「ほお」
今どき、ハーフなんて珍しくもなんともないだろうに。
そんなやり取りを怜と交わしていると教室の前方のドアが開き、アキ先生が入ってきた。
「お、おくれてごめんなさい」
申し訳なさそうに言いながら、教壇まで進むと、日誌を置き僕らの方を向く。
「と、突然ですが、今日から皆さんとともに学ぶことになる、て、転校生を紹介します。さあ、世並さん、入って」
アキ先生がドアに向かって手招きをすると、開かれたドアから黒髪の小柄な生徒が入ってきた。背丈は小さく、もし制服を着ていなかったら小学生に間違われかねない。そんな世並さん、と呼ばれた生徒は、アキ先生の隣まで歩を進めると、その体を興味津々といった様子のクラスメイト達に向けた。顔はまだ下を向いている。
「じゃ、じゃあ自己紹介をしてもらえるかな、世並さん」
アキ先生にそう促されると、彼女はこくりと頷いて面を上げた。
「みなさん初めまして。今日からこのクラスで一緒に学ぶことになった、世並ロゼです。よろしくお願いします」
――妖艶に微笑む彼女の瞳は、奇麗な灰緑色であった。
放課後。
僕は、ロゼに連れられて渡瀬が住んでいたマンションに来ていた。
もといた世界に帰っていった渡瀬に変わって、ロゼはこの世界にやってくることになったらしい。なんでも、調査員と言うのはツーマンセルが基本だそうで、不慮の事態が起こり欠員が出てしまった場合には、補充要員として待機している人間が派遣されることになっているのだそうだ。それが、ロゼだったというわけだ。
まあ一言でいえば、『補欠』ということなのだろう。
そんなバックアップメンバーであるロゼは、これから渡瀬が住んでいた部屋をそのまま使うことになるそうで、僕はその部屋の整理に駆り出されたわけである。
流し台の上に配置されている、食器などが仕舞われている戸棚を整理しながら、僕はロゼに一番気になっていたことを訊いてみる。
「で、結局春人は無事にあちらの世界に行くことはできたのか?」
このことはすぐに訊こうと思ったのだが、ロゼは世の転校生すべてが転校初日に受けるであろう待遇をクラスメイトから受けていたので、なかなか話すきっかけが掴めなかった。
洗濯機の使い方を確認していたロゼはこちらを向くと言った。
「うん。どうして来ることができたのかはまだ不明だけどね。愛の力ってやつかな」
いたずらっぽく笑うロゼ。僕は続けて訊ねた。
「それで、渡瀬は決まりを破ってしまったわけだけど、なにか罰を受けたりはしなかったのか?」
ロゼは即答した。
「ああ、それはね大丈夫。本当なら重い罰を受けなければならなかったんだけど、波流春人を連れてきたことで、不問に付されたんだよ」
「どういうことだ?」
僕が首を捻ると、ロゼは笑って言った。
「まあ一種の取引ってやつだよ。今まで、僕らのいた世界っていうのは、自分たちが異世界に行くことはあっても、異世界からこちらの世界に誰かがやってくることはなかったんだよ。だから、波流春人は初めての異世界からの来訪者ということで、手厚い待遇を受けているってわけ。だから、イブキはむしろ褒められているくらいなんだよ」
「ほお、そりゃあよかった」
なにはともあれ、二人があちらの世界で仲良く暮らせているならそれでいい。
部屋の整理を一通り終えた僕たちは、テーブルに向かい合って座り、番茶を啜っていた。
「そういえば、渡瀬に一つ訊き忘れたことがあった」
僕の呟きに、ロゼは飲んでいた湯呑を置いた。
「訊き忘れたことって?」
「いや、どうして、渡瀬は春人のことを好きになったのかなって。あいつ見ての通り、凡庸だろ? あんなどこにでもいる高校生のどこに惹かれたのかなって思ってさ」
ロゼはくすっと笑った。
「イブキが波流春人に惹かれたのは、まさにそこなんだよ。イブキは波流春人の凡庸さに惚れたんだ」
「どういうことだ?」
僕が得心できないでいると、ロゼは番茶を一口啜って言った。
「あのとき、イブキ自身が言っていたように、彼女はあちらの世界の学校では人気者だったんだ。学園のアイドルと言ってもいい。イブキは並行者として学校中の注目を浴びていた。そんな状況に対して、彼女は辟易していたらしいんだ。
調査員としてこちらの世界にやってきたイブキが望んでいたことは、普通の高校生として生活を送るということ。そんな願望を抱いていたイブキが出逢ったのが、平々凡々とした如何にも高校生らしい生活を送っていた波流春人だった。彼と親しくなっていくうちに、イブキは波流春人のその凡庸さに憧れを抱くようになった。そして、その憧れが次第に恋愛感情へと変わっていったらしい」
「ほお」
人は誰かを好きになるとき、その相手の特別な部分に惹かれるというのが一般的だと思うが、渡瀬の場合は春人の普通さに惹かれたというわけか。
いや、渡瀬にとってはその「凡庸さ」こそが、特別な部分だったのかもしれない。
「そんなことより、さ」
ロゼが自分の髪の毛を触りながら言った。
「ワタル。どうかな。黒髪にしてみたんだけど」
僕は番茶を一口啜ってから答える。
「まあ悪くはないんじゃないか。でもどうして黒に染めたりしたんだ?」
答えが気に入らなかったのか、頬を膨らませるロゼ。
「もお! そこは褒めてくれてもいいじゃん。黒に染めたのは、あの髪色のまま学校に行くとさすがに怪しまれるからだよ」
そう言うと、ロゼはそっぽを向いてしまった。確かに、赤褐色の髪に灰緑色の瞳だったら目立ちすぎるもんな。
「なるほどな。その髪はすごくお前に似合っているぞ」
「本当に?」
途端に機嫌がよくなり、目を輝かせるロゼ。
「ああ。ゴキブリと同じくらい奇麗に黒く光っているよ」
「どんな褒め方だよ!」
激昂し、テーブルに足を乗せてこちらに飛びかかってこようとすると、その足が僕が飲んでいた湯呑に当たってしまい、中身が盛大にぶちまけられる。
「もう何やってんだよ、ロゼ。布巾持って来いよ」
「ご、ごめん」
途端にしおらしくなったロゼは、立ち上がり流し台へと向かう。
僕は大きなため息を吐くと、横倒しになった湯呑を持ち上げた。何の気なしに湯呑を持ち上げて底を見てみると、そこには二つのアルファベットが刻まれていた。
それを見た瞬間、僕はこのアルファベットの意味をようやく理解することができた。初めて見た時には、この湯呑を作った人物のイニシャルかと思ったけれど。
思わず顔に笑みを浮かべてしまう。どうやら春人は自らの夢をこの湯呑に刻んだらしい。その夢は異なる世界で叶ったのだろうか。
「まったく、粋なことをしやがって」
その湯呑に書かれたイニシャルは、こう解釈することができる。
Haruto Watarase.
最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
ひとまず、『スリーデイズメモリー』は一旦ここで終わりとなりますが、もしかしたら続編を書くこともあるやもしれません。
その時は、また皆さんに読んでいただけることを切に願っております。




