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説明

 会場の雰囲気がガラリと変わっていく。自然に中央に視線が集まり、ぼそぼそと話す人間もいなくなった。

 頃合いを見計らって、一人の女性がステージに姿を表した。前を留めていて無いジャケットを羽織っており、そこから見えるアンダーウェアは豊満である胸を強調している。ステージまで距離があるせいではっきりとは見えないが、相当の美人だ。日本人離れしたロングの金髪。軽くウェーブがかかっており、それは無風の空間だというのに、そこに流れが見えた気がした。

 クリスマスに予定がなく、何となく着た広告の先でこんな美人を見れるとは、と周りが驚いている様子が見て取れた。もちろん俺もその一人だ。

 女性は周りをひと通り見渡すと、小さく咳払いをしてからマイクを使い話しを始めた。

『お集まりした皆さん、こんにちは。今回皆様を集まり頂いたのは、広告に書いてあった通りです』

 見た目に反して、日本語は達者なようだ。というか、完全に日本人の発音である。声は落ち着いた声だった。この落ち着きは年齢によるものだろうか、見た目以上に年齢をとっているのかもしれない。

『広告を見ていない方はいますでしょうか?』

 いるわけ無いだろうに……、他にどうやってここにたどり着けるんだよ。

 と、俺は推測したが、手を挙げる人間はそこそこにいた。

 ……

 女性は、その答えを予測していたかのように、続ける。

『まあ、見なくても問題ないので、気になる方は連れの方に後ほど聞いてください。

 ところで、明日は何の日でしょうか?』

 はいっ、はいっ! クリスマスです! と言いたい衝動に駆られたが、さすがに空気を読んで黙っていた。周囲も特に言葉を発せず、沈黙を貫いていた。

『12月25日はクリスマスですね。キリスト教の降誕祭の前日であります。教えが浸透している国あれば、国民の休日であり、教会に行ったり家族で一日を過ごしたりしています。日本では、恋人と過ごすのが多い日であるなど独自の文化が発達してます』

 ほぉ、この場でそれを言うか。なかなか肝の座っている方である。

『集まっていただいたのは、そのクリスマスに関してのお仕事です。

 早速本題に入らせてもらいます――』

 そこまでいうと会場の空気が今一度引き締まった。

 《世界を救いませんか》

 この言葉の意味が明かされる瞬間。

 

『――サンタを倒す――』


 はっ? 会場の空気が固まった。しかし、女性は必要以上の対応をせず淡々と話を進めていく。

『我々は、サンタ狩り、と呼んでますが、言葉の意味をそのままとってもらって構いません、サンタを倒し、食い止める。それが私達のやらなければならないことです』

 女性の言っていることが本当に理解できなかった。もちろん、周りの人達もそうだろう。

 サンタを倒す? なに、プレゼントを渡す前の両親を襲撃すんの? もしくは悪の秘密結社SANTAを倒すの? あほなの?

 頭の中を様々な疑問が駆けまわった。しかし、俺が声を上げる前に周囲のざわめきが強くなった。

「はぁ?」「この組織はどうにかしてるぜ」「はぁ、帰りてぇ」「神の意志を背くなど私には……」「くっくっく、そういう趣向か」「どういうことなのよ?」「俺に聞かないでよ」

 俺の付近だけでもこんなに状況が混沌としてしまっている。ステージの上から見ている女性の目にはさらに大きい混乱が目にとって見えるだろう。

 だが、女性は焦る様子もなく、そこに佇んでいた。

 そして、数秒の後声を張り上げた。

『静かに! 皆様が混乱するのもわかります。順を追って説明しましょう』

 再び静かになった空間で女性は説明を始めた。


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