決断
「さて……勢いでとってきてしまった」
ささっと家まで駆け抜け諸々のことを終えた。そして、ベッドの上であぐらをかきながら、広告を眺めることにした。
背景は白で、一部重要な文字は赤、他は黒の文字だけの広告だ。文字は一般的なフォントを使っているのだろう、地味だが割りとどこでも見られる広告だろう。しかし、その赤で書かれている場所のせいで何度見ても、どうにも言えない胡散臭さがある。
こんなのを取ってきてしまうなんて勢いって怖い!
怪しすぎる広告はいつかの話の種になるかもしれないな、と心の何処かで思った。
しかし、怖いもの見たさというか、興味本位がその広告を無碍にすることを許さなかった。
「冒険するには、1にも2にも仲間だよな!」
というわけで、例年のごとくクリスマスを共にする同志に電話をかける。
ワンプッシュでその人物へのコールが始まった。
プルルルル、プルルルル――
かちゃという音とともに聞き慣れた声が飛んできた。
『もっすぃもしもすぃ!』
余りのテンションの高さに間違えたかと思ったが、
『志木か! この時期の要件といえばあれだよなぁ!』
しっかり、松山につながったらしい、一安心。しかし、いつもであれば松山は家にいる時だが、今日は出かけているらしく雑音やノイズがひどい。
「ふっふっふ、さすが我が友よ、わかっておるな?」
『わからないわけがないじゃないですか、御代官様ぐへへ』
「昨年は食い過ぎて、一日意識がとんでたなぁ!」
『その前の年は、オンラインゲームで嫉妬パワーでランキング上位に勝っちまったねぇ』
「今年は――」
俺がそこまで言うと、松山が俺の言葉を遮った。
『おっと! 志木! それ以上は同意できねぇなぁ! なんたってクックック――』
そう言って含み笑いを電話越しでこぼす松山。そしていきなり高笑いを始めた。
『クッハハハハ! 俺は今年用事があるんだぜ! 悪いなぁ! ハッハハハ!』
「――そうかお前もついにバイトをするんだな……社会デビューがんばれよ」
『いや、違ぇよ! あれだよあれ!』
「やめろ! まだお前にはソレは早すぎる! 世界が変わってしまうぞ!」
『世界が……変わるか……遂に来てしまった……ッ! てなわけで、俺はマイガールフレンドとの約束があるから、暇じゃないんだぜ』
「むむ……」
こいつは、やべぇ。遂に松山まで予定ができてしまった。俺は思わず黙りこんでしまった。
『まあ、お前に用事がないことは知っているさ、気にすんなすぐに俺みたいに慣れるさ』
イラピキッ! 俺のこめかみからよろしくない音がなったのが感じ取れた。思わず、ベッドの上においてあった広告を握って叫んでいた。
「はっ! 俺にだって用事があるからな! 今回はお前がぼっちにならないか心配してかけただけだかんな! せいぜいクリスマス楽しみやがれよ」
そう捨て台詞を残し俺は電話を切った。携帯をベッドの上に放り投げ、広告に目を通す。
《――クリスマスに予定がない君――世界を救いませんか――興味を持ちましたら、12月24日の午前9時頃に市武矢の○○○ビルにお越しください》
まだ設定が固まっていない場所があったり、推敲もまだ行き届いていないので見苦しい部分が多いかもしれません。