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ムードメーカー
案内された出口のドアを通ると、そこには先程も見た巨大なエスカレータがあった。エスカレータの周りもまた、無機質なものだった。
エスカレータに乗り、俺は手すりに寄りかかりぼーっとしていた。
サンタ狩りねぇ……
「相変わらず胡散臭ぇ」
「ん? なんすか?」
口から漏れた言葉に、達也が反応する。
「いや、なんでもないさ」
そうっすか、と言って次に起こることが楽しみで仕方ないように、エスカレータを数段登っては数段下りるをせわしなく繰り返していた。
そんな様子を見ていると自分も楽しみになってくるから困る。こんな胡散臭い話、普段なら一蹴してしまうかもしれない話し。
思わず拳をぐっと握った。
「おっ! 志木さん出口っすよ!」
そう言って、達也はエスカレータを駆け登っていく。
「走るなよ、転んで死ぬぞ」
そう言いながら、俺もエスカレータを駆け登る。