純和風ポルターガイスト
ドンドン!
壁を叩くような音で目を覚ました。
時計を見ると深夜2時。
ピシピシピシッ、天井が鳴る。
(始まったか…)
カカカッ 窓ガラスを叩く音がする。
ぺたんぺたん、部屋の中を人がゆっくり歩いているような音もする。
(まあ、1時間くらいの我慢だから…)
俺はもう慣れてたので、布団を頭からかぶって寝直した。
ここは事故物件のアパート。1階と2階に3部屋ずつ、全6室だが、俺のいる201号室以外は空き室だ。そして、ここは2階で、窓の外には足場もない。つまり、ガラスを叩く音も、隣の壁ドンの音も、ポルターガイストだと思われる。
深夜、特に夏の間に、このように音が鳴ったり、人が歩き回る気配がするので、心理的瑕疵物件という扱いになり、通常の家賃の半値以下なのだ。おいしい。
不動産屋に詳しく聞いてみると、このアパートに住んでいた住民は皆、確かに亡くなっているが、別に事件や孤独死で亡くなったわけではなかった。単に年寄りだったから、このアパートでの一人暮らしをやめて施設に移り、そっちで亡くなっているそうだ。
ということは、幽霊はいるのかもしれないが、恨みや祟りがあるわけでなく、単にうるさく騒ぐだけだ。
だったら何の気兼ねもなく、家賃半額以下の恩恵をたまわるべき、と考えて、俺はここに住んでいる。
しかし、ここ数日、気になることがある。
ドン、ドン、カカカッ、ドンカカカッ
という鳴り方をすることが、妙に多いのだ。
なんかこれ、太鼓のバチさばきっぽくない?
(夏に増えるってことからして…、もしかして、ここに住んでた老人って…)
俺は、今思いついたことを試してみたくて、布団から出た。そして
♪「月がぁ~~~出た出ぇた~~~」と、炭坑節を歌ってみた。
ドン、カッ、ドン、カカ、ドン、カッ、ドン、カカ!
思った通りだ! 俺の歌に合わせて壁と窓が規則正しく鳴り出した!
ピシッピシッ
「ヨイヨイ」の合いの手に合わせて天井もきしんだ。うまい。
ぺたぺたする足音も聞こえてきた。そうか、この足音は、踊ってたんだな。
♪「すちゃらかちゃんちゃん、すちゃらかちゃん」と最後まで歌うと、
ドンドンドンドンドン
カカカカカカ
ピシピシピシピシ
ぺたたたたたた
っと、たぶん割れんばかりの拍手(足踏み)と思える音が鳴った。
たぶん、ここに住んでた爺ちゃん婆ちゃんは、お祭りが大好きだったんだろうなあ。
だから夏になるとお祭りが恋しくて、祭囃子みたいな音を演奏しようとがんばってたんだなあ。
そう思うとなんだかいじらしい。
夏の間は、盆踊りの曲を動画で流してあげようかな。おもちゃの太鼓とか買ってこようかな。そしたら喜ぶかな? いろいろ考えたら楽しくなってきた。今年の夏はお祭り騒ぎだ!
でも家賃が上がったら嫌なので、不動産屋には何も言わないつもりである。
夏のホラー企画に参加してみたくて、がんばって書いてみたけど、書いてから「音がテーマ」ってことを知って(書く前に調べとけ私)、参加できなかったので、くやしいからもう1本(これ)書きました。




