72時間の魔法
「はいはい、まりょく~じょ~と☆」
俺たちのあさイチの日課、魔力譲渡だ
「んんん~デーリシャース!」
「クセになる高揚感ね。ありがと。」
「じゃあ、今日こそ冒険者の街にいくわよ!」
シンシアはやる気だ
「そうだな!」
俺もやる気だ
「あ、いやー、ちょっと飲み物のんでかない?」
ライラさん、空気読んで!でもなんか逆らえないから酒場へ。
「二人に相談があるんだ。」
『?』
「このまま……このジャミルルで仕事を見つけて、生活するんだ。」
「冒険者になるな……ってことですか?」
「そうさね。」
シンシアは立ち上がると
「私たちは一緒に楽しい冒険をしたいんです!」
そう反論した。それを受けてライラさんも立ち上がる。
「アタシの言う事が聞けないっていうのか!殺す!」
え、ライラさん発言がちょっと過激じゃない?
「そんなに死にたいなら今ここで殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」
「ちょっとライラさんどうしたんですか!?」
「……!」
シンシアの困惑でライラさんは椅子に座る
「ごめんよ……ごめん……」
「場所を変えましょう。」
朝の静かな空気が街中をただよう
「だからさ、シンシアちゃんはかわいいんだから……」
「パン屋にも花屋にもなる気はありません。」
「お菓子屋は?」
「……ちょっと興味あります。」
「だから、冒険者なんてロクな仕事じゃないんだよ。」
「……それでも楽しい冒険がしたいんです。」
「ああ、もう……」
次の瞬間、すれ違った人の肩がライラさんの肩とぶつかる
「おっとごめんよ。」
「てめえ!ぶっ殺されてえのか!」
ライラさんは激昂する
「アタシに喧嘩売るたあいい度胸だなあ!殺す殺す殺す殺す!」
『ライラさん!』
俺とシンシアは全力でライラさんを止めた。
「……ごめん……なさい……」
「そんなに引き止めたいなら、また稽古つけてくださいよ。」
「いや……もう無理だよ。」
ライラさんは剣を抜き、構える仕草をするが……
手の震えがひどく、剣先が定まらない。握るのもつらそうだ。
「ライラさん……」
剣を鞘に納めるライラさん。シンシアも心配そうだ。
「あの丘……そうさね、あの丘がいい。」
指さした先に、街を見下ろせそうな丘があった。
「シンシアちゃん……もう気づいているだろ?」
丘のてっぺんまでたどり着いたライラさんはシンシアに問う
「……わかってます。」
「アタシが、だんだん人間じゃなくなっていること。」
……!
「わかるんだ。理性がどんどん弱くなっていってる。」
「俺は大丈夫なんですよ!?」
「ノクタ、あんたは特別なのかもしれない。」
「ライラさん……」
「アタシは、人間のまま死にたい。」
言葉が出ない。
「だから、お前たちは今からアタシを攻撃しまくって殺すんだ。」
「そんなこと……できるわけ……!」
俺は提案を拒絶した。シンシアは……
「死者を正しく送る魔法、ちゃんとあります。」
「……なんだ、あるのかい。」
「はい、もらった教本の五つ目……さいごのまほう……です。」
教本の、最後の、魔法。
「でもライラさん……ひとつだけ、約束できないことがあります。」
「言ってごらん。」
「正しく送った先が、もしかしたら地獄かもしれません。」
「……なんだ、そんな心配をしてくれてたのかい。」
ライラさんは陽気に笑ってみせる。
「亡者だろうが獄卒だろうが!アタシが従わせる側なんだよ!」
ライラさん……強いな。
「それに……この三日間。アタシにとっては天国だったよ。」
……
「楽しかった、本当に。ありがとう。」
空気がしんみりしてきた。
「じゃあ……送るから……」
シンシアの声がふるえている。正直俺も泣きそうだ。
「"火葬昇華"」
同時、ライラさんの体が激しく燃え始める。
「熱くない火っていうのは、なんとも不思議な感覚さ。」
「なんかちっちゃい子どもがいっぱい来た!?」
「え、誰?うわー!すごいイケメンの天使きた!天使きた!」
「来ないかって?行く!行きます!ああでも!」
「まだ言い残したことが……え、ダメ?」
「ちょっと、これは想定してない!想定してないよ!」
「あ、あああああああああああ~~~~~~」
ライラさんは恍惚の表情を浮かべながら燃え尽きた。
死者を正しく送る魔法って……まさかこのレベルで……
なんていうか……涙が引っ込んだんだけど。
「ねえノクタ。」
「なに?シンシア。」
「私は魔法で、いろんな人を助けたい。黒魔法だけど。」
「いいんじゃない?」
「ノクタにも手伝ってもらうから!」
「ああ、手伝う!手伝うよ!」
「二人で、たくさんの人を助ける冒険にするわよ!」
「おう!」
俺とシンシアの誓いから、楽しいという文言が、消えた。
それが何を意味するかは、この時の俺にはわからなかったのだ……
序章長すぎてごめんね
魂削って書いてるから毎日更新は無理です
気長に書くから気長に読んでね




