⑧アルノーとリアの噛み合わない会話
リア:ヒグマ族の長の一人娘。純白のアルビノ。
アルノー:リアの婚約者。全身鎧。ふんわりとした雰囲気だが、真意を突いてくる発言も多い。鎧の中はすごいらしい。超強い。ヒグマたちも認める男。
師匠:??
リアの『生き別れた兄』の言葉に何か考えている様子の鎧のアルノー。
すると何か思いついたようにアルノーがこちらを見てくる。
心が焦れるリア。
「あっ、師匠のところに行ってみましょう!」
「師匠!?」
アルノーの師匠とは、初耳なリアはどんな人なのか気になって仕方がなかった。
(もしかして長い艷やかな髪に大人の色香の魅惑たっぷりな師匠だったらどうしましょう⋯⋯)
「はい、凄い師匠ですよ」
「あの、お歳はどれくらいの⋯⋯」
にこやかなアルノーの声にかぶせ気味のリア。
「もう経験豊富って感じですよ」
(美魔女かしら⋯⋯)
リアの反応に口に手をやり、言葉を探している素振りのアルノーは短く声を上げた。
「あっ、見たら射抜かれそうな視線というか」
(一目で落としにかかる雌豹みたいな方ということ?)
「歳は結構いっているって意味です」
(熟女!? 私、勝てるかしら⋯⋯)
リアはアルノーの目が合った。ただし鎧の。
「会いに行きますか?」
(直接対決ね)
リアは精一杯腕を組んだ。
「望むところだわ」
「リアさん、上昇志向ですね」
すべてが噛み合わない二人だった。
* * *
アルノーが伝書鳩を飛ばすと、程なくして帰ってきた。
「アルノー、鳩さん早すぎないかしら?」
「うちの鳩、隼より早いんですよ」
隼っていったら一時間に三百キロメートル以上飛ぶ鳥だ。
「まぁ、伝書鳩というとこで仕事をさせていますが」
アルノーも自信がなくなったらしい。
リアは鳩の持って帰って来た手紙を盗み見る。
(達筆! 字がすごく綺麗だわ⋯⋯まるで芸術のよう。人の性格が字に表れるようですの)
「すごく綺麗な字ですね。丁寧な人なんでしょうね」
「えぇ、隙が全くありません」
(ガードは固いのね⋯⋯ますます強敵だわ)
リアは一人で燃えていた。
アルノーの声はどことなく明るい。
「明日、会いに行ってみます? 師匠も喜びますよ」
「まぁ、相手は格上だわ!」
(あっ心の声が漏れちゃった⋯⋯なんて余裕のある人なの? 自分のライバルのはずの私を受け入れようだなんて⋯⋯器が大きすぎる)
汗のかいたリアの手をアルノーは優しく握った。といっても鎧で固い。
「大丈夫ですよ。手加減してくれるはずです。」
「そうじゃないのー!」
両手で構えを作り、ヒグマ族をアピールしたリア。
「ヒグマ族たるもの、手加減は禁止
ヒグマ族たるもの、手加減は禁止
ヒグマ族たるもの⋯⋯」
「リアさん、ヒグマポーズ可愛いですね」
「はわぁ!」
慣れない褒め言葉がリアの頭に直撃する。
「じゃなくて、禁止ー!」
リアの声が空に響くと、鳥が何羽か慌てて飛び立っていった。




