③ウサギは裏切らない
リアとアルノーが庭園まで戻ってくるとラグドが走ってきた。
構える間もない。
思考よりも先に腕に衝撃が来た。
ラグドの固い手がリアの腕に食い込んだ。
「痛っ!」
「今日、長を含む大事な話し合いがある。俺たちの婚約をそこで話そう。
(というかこの鎧、誰?)」と大事な部分が声にならないラグド。
「離して⋯⋯誰がそんなもの……」
リアは腕に力を入れるがラグドの手は振りほどけない。
ゆっくりとラグドの腕を掴むアルノーに、顔を歪めてラグドは手を引っ込めた。
「⋯⋯(えっこの鎧、誰?)」とやっぱり声にならないラグド。
アルノーを見つめながら、考える前に言葉が出る。
「私はそこにいるアルノーと婚約しますの。あなたとは婚約しないわ」
(私ったらなんてことを!)
リアは両手で固く口を覆った。そして息を飲み込む。
だが、出ていった言葉は戻らない。
(私は自分の欲望のままに彼を巻き込んでしまうなんて⋯⋯でもラグドと婚約するくらいなら一生顔の変わらない鎧でも⋯⋯鉄壁の前髪でも⋯⋯ウサギを好きな人に悪い人はいないわ!)
前髪で隠れた彼の顔からは表情が読み取れない。
「婚約いいですね。リアさんは素敵だと思います」
アルノーの口からは淀みなく言葉が流れ出た。
リアはアルノーの背中を見つめながら、お世辞かもしれない“素敵”という言葉を反芻していた。
(やっぱり! ウサギは裏切らないわ!)
ラグドを前にしても調子の変わらないアルノーにラグドは面白くなさそうな顔をする。そのまま、ラグドはアルノーに近づき胸を張って牽制する。
「それはそれは貧弱な人間様、どうぞヒグマ族の中心地・牙冠の大広間までお越しください。
(そして俺にやられろ、泣きながら帰れ)」
仰々しくお辞儀をすると、ラグドはそのまま歩いて行ってしまった。
(どうすることもできないわ。このまま付いて行くしか……)
リアは不安な表情をアルノーに向けた。
「可愛い顔が台無しですよ。ご心配なく」
(かわ、可愛いですって!?)
アルノーの可愛い発言に胸が躍るリアだった。
このお話の真面目な?異世界恋愛短編は『氷のシロクマ令嬢は微笑む』(https://ncode.syosetu.com/n2363ln/)になります(ㆁωㆁ)




