【最終回】思い出したぞ、俺は鮭だ!そして旅立ち!
リア:ヒグマ族の長の一人娘。純白のアルビノ。
アルノー:リアの婚約者。全身鎧。ヒグマたちも認める男。
アンデッド公爵:死にたがりで、毒にめちゃくちゃ精通している。妻のケネシーに出会ってから元気100倍。
妻のケネシー:公爵いわくとってもうっかりやさん
ダイハード:敏腕執事の爺や
リアの兄のセーゴ:ヒグマ族の長の嫡子。リアと同じくアルビノでめちゃくちゃイケメン。
でもここでネタバレしちゃう。
残念なイケメン!!
下を向いて頭を抱えていたセーゴが勢いよく顔を上げた。
「お、思い出したぞ!
鮭だ! 俺は鮭だ!」
「この人やばいですの!」と焦るケネシー。
「ロールケーキは効きませんでしたか」と残念がるダイハードこと爺や。
「鮭にしては白いな」と変なところを気にする公爵。
公爵とケネシーと爺やはお互い見合う。
「蘇る⋯⋯鮭の記憶⋯⋯」
「ケネシー、何を入れたんだ?」と怪しむ公爵。
「私はたぶん何も──」と口を開いたケネシー。
「濁流の中、あそこが別れ道だったんだ!」
「⋯⋯ってこの人、全然、聞いてない!」と嘆くケネシー。
鮭にとって川上りは死と隣り合わせ。
あの日は運悪く大雨の次の日だった。
茶色く濁った川は視界が悪い。
「早く登れ〜! 俺は後ろで待機しているから先に渡るんだ」
セーゴの意識は、もはやここにはなかった。
「あぁ、同胞の名前も覚えていないなんて⋯⋯トラックを運転する鮭!」
「この時代にトラックはないですぞ」とメタツッコミの爺や。
「黒い⋯⋯鮭、一体何を食べたんだ?」
「こちらが聞きたい。な? ケネシー」と呑気な公爵。
「こっちに話を振らないでください」と冷ややかなケネシー。
「あっちは燃えている鮭! 神!」
「情報量過多ですぞ」と和やかな爺や。
セーゴは宙に手を伸ばす。
「やめろ! 落とした眼鏡は追うな!」
「鮭の話ですよね?」と混乱するケネシー。
「あっちは⋯⋯マジカル鮭か?」
「せめてカタカナで言って! というか、魔法使えるなら鮭でいる意味ある?」とツッコミが忙しいケネシー。
セーゴは驚嘆の顔に変わった。
「そこの鮭、ヒレを怪我しているじゃないか!」
「野生の鮭で怪我しているのは致命傷ですな」と冷静な爺や。
「あっ⋯⋯たぶん、偉い鮭」
「情報ゥウゥゥーーッ──!!」
妻の新たな一面を見て嬉しそうな公爵と叫ぶケネシー。背景で微笑む爺や。
セーゴに詳しく聞いたところ、十二単を着ている鮭だと判明。
これを繰り返すこと二十回──。
ようやく鮭から離れられて安堵の息を付きまくるケネシー。
「『にいちゃ〜ん!』」
リアの声と前世の鮭が重なる。
「轟音のする川の分岐点でバラバラになっていく兄妹」とセーゴ。
「セーゴ殿、地の文も声に出し始めましたぞ」と実況する爺や。
「ヒレを伸ばすも届かない。
『妹〜! 俺のことは置いていけ〜! 必ず、かならず生きろ!』
俺は⋯⋯あの時、水面から姿を消したんだ」
リアは涙を溜めてセーゴの目の前にやってくる。
「憎い⋯⋯憎い⋯来世は狩られる存在ではなく、絶対に狩る側にまわるから!!」
「リアァ!!」
セーゴの意識はついに戻った。
「そしてなんにゃかかんにゃかあって、俺たちはヒグマになったんだ!」
「「「一番大事な部分が曖昧!!」」」
リアはようやくセーゴと視線を交わした。
「鮭は前世の記憶よ。良かった⋯⋯お兄ちゃん」
リアはセーゴと抱き合った。
近くのアルノーは両手で顔を押さえる。
「ズビッ⋯⋯良かった⋯⋯お兄さん⋯⋯」
顔を上げたセーゴはリアをちらりと見る。
「知らない間に弟が出来ていたなんて。どこの川出身だい?」
「まだ前世引きずってる」と遠くでケネシーが呟く。
「セーゴ兄さん、婚約者のアルノーです」
セーゴはリアをそっと離すと、アルノーに正面を向く。
それに呼応するようにアルノーもセーゴと対峙する。
皮膚にぴりぴりと衝撃が来る。
「お兄ちゃん! アルノー!」
危険を感じたリアは叫ぶ。
ガシッ!
セーゴとアルノーは固い、固い握手をした。
「リアをよろしくな」
「僕、お兄さんとなら仲良くできそうです」
* * *
それからしばらくして──。
アルノーがグラドを倒したことを聞き、決意するセーゴ。
どこかへ行く支度を整える。
「お兄ちゃん、本当に行っちゃうの?」
「アルノー、リアとヒグマ族を頼む」
「任されました。しっかりと務めますよ」
アルノーはリアを引き寄せしっかりと頷いた。
セーゴは前世の同胞を思い、空を見上げる。
「お兄ちゃん、どこへ向かうの?」
「西の最果てにナロウという地があるみたいなんだ。そこに向かってみようと思う」
前世に見た鮭たちがリアや自分のようにヒグマになっているかもしれない。
まだ見ぬ同胞に期待を膨らませてセーゴは一歩踏み出した。
彼の旅はまだ始まったばかり──。
最後にエンドロールつけさせてください。
(ご協力いただいたクマさま)
右側から
①写真屋かぐつち・くまナぱ(かぐつち・マナぱ様)
②しょこうらくまちゃん(書庫裏真朱麻呂様)
③シロクマちゃん(シロクマシロウ子様)
④くろくまくん(くろくまくん様)
⑤グリズリーアニキさん(清坂正吾様)
⑥メガネグマちゃん(那内様)
⑦二角クマ(二角ゆう)
右側前列から、
①ボカロ好きクマちゃん(本羽香那様)
②赤いランドセルクマちゃん(小倉あんな様)
③黒い翼クマくん(魔神様)
④緑のぶった切りクマちゃん(楠木翡翠様)
⑤ピンク色の垂れ眉クマちゃん(秋桜星華様)
続きは、後列の右側から、
①モコモコ毛玉クマちゃん(元毛玉様)
②星の魔法使いクマくん(星野満様)
③ロボットクマくん(kumako様)
④熊狩り鉄砲クマくん(笹門優様)
①運転手ピンククマちゃん(しいなここみ様)
①-2 相棒チビクマくん(ナッくん)
②熊出のクマさん(熊出様)
右側から
①手を猫に噛まれたくまくん(榊様)
②後方の空飛ぶ水色くまちゃん(半々月光様)
③シロクマちゃん(みんなの間を取り持つ、我らのアイドル─シロクマシロウ子様)
④十二単くまちゃん(さんかくひかる様)
クマになられた皆さまは前世で鮭だった、という設定で書いております。
お話の尺の都合上、すべてのクマさまは入れることができませんでした。(鮭エピソードは修正が必要な場合はご連絡くださいください)
それでも鮭だった同胞の皆さまを探しにセーゴは旅立ちました。
まだお祭りの存在も知らずに⋯⋯(笑)
というわけで、クマ祭り後夜祭参加作品でした。
最後までお読みいただき、本当に本当にありがとうございました!m(_ _)m




