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モコときらきらのたね

作者: 木蓮

あるところに、

モコという仔羊がいました。


モコの毛は、ふわふわで、まっしろ。

さわると、少しだけあたたかい毛です。


でも、モコには、ひとつ悩みがありました。


まわりのお友だちは、

走るのがとても速かったり、

大きな声で鳴けたり、

むずかしい絵を、すらすら描けたり。


みんな、なにかが得意で、

とても楽しそうで、

きらきらして見えました。


「ぼくには……なにも、ないのかな」


モコは、自分の毛を見つめました。

どこを見ても、光っているところはありません。


その夜のことです。


モコが草の上で眠っていると、

毛の上に、ちいさな光が

ふわり、と降りてきました。


「だれ……?」


すると、その光が、やさしく言いました。


「わたしは、妖精のルゥ」

「いっしょに、きらきらを探してみよう!」


次の日から、

モコはルゥと、いろんなことをしてみました。


本を読んでみたり、

木のみを集めてみたり、

影のかたちを、じっと見つめたり、

だれにも聞こえない声で、歌ってみたり。


すると――

あるとき、ほんの一瞬だけ、

胸のあたりが、ぽっと、あたたかくなりました。


「あ……いま、光った?」


でも、その光は、すぐに消えてしまいました。


「できなかったからかな……」

「へたっぴだから?」


モコが言うと、

ルゥは、にこりと笑いました。


「だいじょうぶ」

「きらきらは、すぐ消えることもあるの」

「でもね、消えたんじゃないよ」


モコは、少しだけ、ほっとしました。


けれど、ある日。


どこからか、声が聞こえてきました。


「モコのきらきらって、へんだよ」

「つまらなそう」

「そんなの、きらきらじゃないよ」


モコの胸は、きゅっと、ちいさくなりました。

モコは、自分の毛に、顔をうずめました。


「やっぱり……だめなんだ」

「ぼくのは、まちがってるんだ」


ルゥは、静かに言いました。


「きらきらは、ひとりひとり、ちがっていい」

「笑っていい人なんて、だれもいないんだよ」


でも、その声は、

モコの心には、届きませんでした。


その夜。

ルゥは、来ませんでした。


次の日も、

その次の日も。


モコは、考えました。


「きらきらがないなら……」

「みんなと同じになればいいんだ」


走るのが好きなふりをして。

歌が得意なふりをして。

まわりと同じ道を、歩きました。


でも、夜になると、

胸の奥が、ひんやりしました。


「楽しくない……」

「これ、ぼくじゃない……」


そのとき、

モコは、はじめて気づきました。


ほかの声じゃなく、

自分の声が、聞こえたのです。


モコは、ぽろぽろ、泣きました。


「なくなっちゃった……」

「ぼくのきらきら……」


すると、

ルゥが、そっと現れました。


「なくなってないよ」

「きらきらはね、育つ途中で、かたちを変えるの」


「え?」


「やめたり、まちがえたり、遠回りしたり」

「それも、ぜんぶ、育っているしるし」


モコは、また歩き出しました。


やってみて。

やめて。

また、やってみて。


光ったり、光らなかったり。

大きかったり、

とても、小さかったり。


そして、ある日。

モコは、気づきました。


だれにも気づかれないくらい、

小さくて、静かな光。


でも、自分の毛の奥で、

いちばん、あたたかく光るもの。


「これが……ぼくのきらきらなんだ」


ルゥは、もう何も言いませんでした。

でも、消えたわけではありません。


ルゥは、

モコの中に、ちゃんと残っていました。


きらきらは、

大きくなくていい。

ずっと同じじゃなくていい。


まわりと同じじゃなくてもいい。


自分の中で、

「これだ」と思えたら、

それが、宝もの。


モコは、

これから先、

またちがうきらきらを見つけるかもしれません。


でも、きっと思い出します。


「だいじょうぶ」

「なくなったんじゃない」

「まだ、育っているだけ」

このお話は、

もし、いつか子どもが生まれたら、

読み聞かせをしたいと思い書きました。


「きらきら=将来の夢・好きなこと」は、はじめから見えるものじゃないかもしれません。

まわりと比べて、「まだない」「遅れている」

そう感じる日も、きっとあります。


でも、きらきらは、

探そうとしたその瞬間から、もう育ちはじめています。


たくさん触れて、

やってみて、

ちがうと思ったら、やめていい。


途中で変わってもいいし、

前とちがう「きらきら」を好きになってもいい。


だれかに笑われたり、

「へんだよ」「ちがうよ」と言われることもあるかもしれません。

でも、きらきらをバカにする資格なんて、

この世界のどこにもありません。


大きくなくていい。

役に立たなくてもいい。

期待される形じゃなくてもいい。


あなたの中で、

いちばんあたたかく光るもの。

それが、あなたのきらきらです。


もし、見えなくなった日がきても、

思い出してほしい。


なくなったんじゃない。

まだ、育っているだけ。


このお話が、

あなたが自分のきらきらを信じる

小さな灯りになりますように。

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