弐話「メリマリア町へ」
「では、行ってきます。__メリマリア町へ」
魔王城からメリマリア町までは、徒歩で二日はかかる。
今日はその一日目だった。
僕は角を隠すためフードを深く被り、門に向かって歩き出す。
苦手なキアンと一緒に。
「なんでキアンついてきたの?」
「カルメが心配だからだ」
キアンはキッチリカッチリしてるので親しい者でないと分からないが意外と心配性なのだ。
やはりメリマリア町、と聞くだけでまた頭がズキリと痛くなる。
「カルメ、体調は大丈夫か?最初に聞いた時に変だっただろう」
「う、うん。あ、もし僕が倒れても自分で帰れるから置いて行っていいからね」
「それは却下だ」
いつもは慎重なキアンが即答するほど、僕はあの時変だったのだろうか。
*ゴーン ゴーン*
また鐘の音だ。
.....また?またって、いつ聞いたんだ?
「もう夜だな」
「え、もう夜?」
空を見上げると確かに日が沈もうとしていた。
「今日は野宿するか」
「野宿?」
野宿って、僕は何も準備してない。
もしかしてキアンが何か準備をしてくれたのだろうか。
「寝袋だ。これで寝ろ」
「あ、ありがとう」
キアンが渡してくれた寝袋は僕のサイズにちょうどぴったりのカラメル色の寝袋だった。
寝袋を開け、寝る準備をする。今日はお風呂に入れないし歯磨きもできないのか、ちょっと不潔なような気がして気分が少し滅入る。
キアンは焚き火を最小限に抑え、周囲を何度も確認していた。
人界で夜を越すのは、油断できない。
「まだ全然寝るのには早いぞ」
「え、もう寝るんじゃないの?」
「そうだ」
寝袋を渡してきたからてっきりもう寝るのかと思っていた。
「空、見てみろ。綺麗だぞ」
「そ、空?」
見上げると満点の星の海が広がっていた。
「わぁー!綺麗!」
「どれが北極星か分かるか」
どれだろ.....う~ん?
やばい、分からない。こんな時は質問返しだ。
「なんで?」
「前、トレコがお前に見つけ方を教えていただろ。覚えているか抜き打ちテストだ」
あー、うっすら覚えてるようなおぼえてないような.....
「分からないのか?」
「トレコには申し訳ないけど覚えてない」
「.....そうか」
キアンはそれ以上何も言わず、星空を見上げた。
「キアンは分かるの?」
「一応な」
「すごい.....」
「誰でも分かるだろう」
地味に皮肉を言ってくるところがキアンらしい。
「ふぁ~あ、もう眠い」
「なら寝ればいい」
「じゃあ、おやすみ」
「うん」
寝袋に入り、チャックを閉める。
今日の疲れが今になってどっと押し寄せたのか、僕はゆっくりとまどろみの中に落ちて行った。




