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木漏れ日  作者: 双鶴


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3/6

3話

陶子は、裂地の本を探していた。

器を包む布、茶道具を飾る裂、祖母の箪笥にしまわれていた帯。

それらが、少しずつ重なって見えるようになった。


光書房へのメールは、短く書いた。


こんにちは。

裂地についての本はありますか?

名物裂の写真と由来が載っているものがあれば、ぜひ教えてください。


青井からの返信は、翌朝届いた。


ご連絡ありがとうございます。

『名物裂百選』という図録がございます。

利休好みの裂地や、茶道具に添えられた布の写真が豊富です。裂は、器の記憶を包むものかもしれませんね。

よろしければ、発送いたします。


陶子は、返信を読んでから、祖母の箪笥を開けた。

そこには、色褪せた帯が数本、丁寧に畳まれていた。

手に取ると、布の手触りが指先に残った。

模様は、どこかで見たような気がした。

けれど、思い出そうとはしなかった。


その週末、等々力渓谷は少し冷えていた。

木々の葉は赤くなり、風が裂地のように細やかに吹いていた。

陶子は、五島美術館の展示を見たあと、渓谷の木橋に立ち止まった。

川の音が、布を撫でるように静かだった。


光書房から届いた図録は、裂地の写真が美しかった。

布の模様は、器の縁に似ていた。

どちらも、語らない。

けれど、見ていると、少しだけ語りたくなる。


陶子は、青井に短いメールを送った。


図録、ありがとうございました。

“間道”という裂、祖母の帯に似ている気がしました。

なんだか、懐かしいです。


青井からの返信は、いつも通り、静かだった。


間道は、縞の間に余白がある裂です。

その余白が、語らない記憶を包むのかもしれません。ご感想、ありがとうございました。


陶子は、メールを閉じて、湯を沸かした。

器に茶を注ぎ、裂地の図録を開いた。

語らないものに、少しだけ寄り添う時間。

それが、週末の静けさだった。


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