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発見した謎




「うお!?……っとと」


 ミイラの攻撃をすんでのところで避ける。あまりにもギリギリ過ぎたせいか、頬に掠れて少し切れてしまったが……事前に飲んでいた高濃度の低級回復ポーションが傷口をすぐに塞いでくれるだろう。


 集会所を出て、もう小一時間は経つだろうか。あの後ルキは眠気が限界に達し拠点に帰ってしまったし、ワイズさんはそもそもダンジョンに潜って居ないのか来る気配がなく会えずじまいだった。


 休憩としても十分な時間休んだので、『海淵の墓都』の探索を続行し……現在、第2階層でミイラのモンスターとの戦闘をしている。


「確か……図鑑じゃマミーって名前のモンスターだったっけ、なっ!」


 干からびた人型の死体がひとりでに動き出したアンデットのモンスター『マミー』……薄汚れた包帯を体全体に巻いていて、それを伸ばし操ったりして攻撃してくる物理攻撃系のモンスターだ。

 ついさっきも伸びてきた包帯で頬を切り裂かれてしまった。


 そしてまだ伸びてきた包帯を騎士の剣と……魔鉄の盾ではなく鋼鉄の手斧で切り落としていく。


「……うん。盾が無くても十分捌けるな」


 集会所でルキと話した自分の芯となる戦い方。それを調べていく一環として、盾を使わずに戦っていた所だ。

 今までは盾を使って敵の攻撃を防ぎ、その隙をカウンターする戦い方をしていたが……ふと、それじゃ守りに入り過ぎているんじゃないかと思ってこうして試している訳だ。


「そぉ、れっ!」


 マミーから伸びてきた包帯を全て切り落とした所で、左手に持った鋼鉄の手斧を振りかぶる。

 マミーの頭部に向けて投げた手斧はクルクルと回転しながら飛び……見事マミーの顔の中心に刃が突き刺さる。


 利き手以外での投擲も十分使い物になる。どんどん、自分が出来る事が判明し、戦い方のバリエーションが増えたりするのがとても楽しい。


「成長、って感じするわ」


 マミーが死亡して爆散した事で地面に転がった鋼鉄の手斧とドロップアイテムを回収する。

 今までも槍と手斧で変則的な二刀流で戦ってきたおかげで、2つ武器を持って戦うやり方にはある程度は慣れている。


「……うーん、でもちょっと違うかもなぁ」


 もちろん通常より攻撃手段が豊富なこの攻撃特化の型は強力である事は間違いない。だが選択肢としてあっていて欲しいだけで、この型をベースにして常に戦っていたいかと言われれば、首を捻ってしまう。

 あくまで、攻撃特化の手段としての二刀流として扱いたい気持ちが強い。


「選択肢が欲しいのかなぁ……」


 戦いの中で選べる手札の数……それを求めているような気がする。

 盾での防御主体の戦い方。二刀流での攻撃主体での戦い方……あとは遠距離から魔法を使う戦い方があるか。

 現状俺にあるのはこの3つの手札だが、その内魔法は約30分に1度しか使えないという欠点付きではあるんだが……


「あとは引き出しの少なさ、かな?」


 引き出しといっても戦法の手段の少なさでは無い。

 小手先の技術と言えばいいか……騎士の剣を使った攻撃方法が今の俺には『斬る』『突く』くらいしか出来ない。

 剣で戦うならその2つがあれば十分だろうけど、もう少し……何か変化が欲しい。


「自分で言うのもなんだけど……変な悩み」


 攻撃手段が欲しいと言いながら、二刀流は違うと言う。剣で『斬る』『突く』以外に使い方が思いつかないのに、別の方法が欲しい……なんて、変と言わないでなんだと言うんだ。


「あは……でも楽しいなぁ」


 ただ現状に満足し思考停止したまま戦って成長するより、試行錯誤しながら時には苦戦し、時には後退してまで強さを求める事が楽しい。

 その方が強くなろうと足掻いている感じがして、充実感がある。


「あと1歩足らないピースはなんだろう」


 直感がずっと満足していない自分がいると主張してくる。無意識に何かを感じているんだろう。

 まあ、これは今すぐに分かりそうでも無いのでおいおい考えるとして、だ。


「……第2階層から雰囲気がガラッと変わったなぁ」


 『海淵の墓都:第1階層』は長細い通路が幾つも枝分かれした迷路の様だったのに、第2階層に変わってからは広い空間が広がっていた。

 

 さっきのマミーで、見える範囲でのモンスターは全て倒した。そのおかげでじっくりと周りを見回す事が出来る。


 多分ピラミッドの区間の中の1つ。

 周りには土器や陶器が並んだ棚。壁に掛けられた模様入りの布……などなど、今までのエリアでは見なかった『文明』というものを感じる部屋。

 ……宝物庫、にしては宝が見えない。一体何のための空間なのだろうか。


「……なんだ?」


 直感で何かを感じた方向を見てみると、壁には微かに模様のような物が見えた。目を凝らして見てみればそれは壁に描かれた絵の一部分。


「いや、この部屋全体が壁画が描かれてるのか!」


 土器などが置かれた空間として、壁に模様付けしているのかと思っていたが、1歩視点を引いて見るとこの空間の全ての壁に絵が描かれていた。


「文明……いや、そうか!そもそもありえないんだよ!」


 このダンジョンは、人為的に創られた場所だ……創った存在が『人』かは置いておくとして。

 そんな場所で、文明が発展していた訳が無い。これもダンジョンの主とも言うべき存在がわざわざ用意した演出の1つという事だろう。


「ただダンジョンのエリアとして、デザイン性を持たせただけの可能性だってある」


 だが、何かしらの意味がある可能性だってある。読み解いて行けば、もしかしたら何故この場所……『選定の狭間のダンジョン』が存在しているのか。なぜ、そこに人を持ってきて、鍛えているのか。

 その謎が分かるかもしれない。


「……人がいる」


 まず最初に目に付いたのは、人間を簡略化させた……棒人間のようなものが集まった壁画。

 その人達は……恐らく集落を作り生活をしていたんだろう。人の他にも三角の建物らしき絵と、牛みたいな動物を放牧しているような絵が一緒に描かれている。


「そして、街になったのか」


 多分続きと思われる絵では、集落が大きくなり人が増え……文明が発達した結果街が、いや国が興されたように描かれていた。

 そこから国の頂点、つまり王を決まり……1人の人間が王冠を被る絵に続いている。


「争いが起きた……?」


 さらに続く絵には、黒く塗りつぶされた化け物が街を襲いかかろうとしていた。

 王冠を被った人間と、それに付き従う人が武器を持って化け物と対峙し……


「ああ。そして王は死んだのか」


 壁画には、化け物と相打ちになったように王が描かれている。そしてそれを囲い涙を流し悲しむ民衆の姿も。

 残った人々は、化け物から国を守った王を英雄として讃え、その王が偉大であったことを後世にも伝える為に大きな墓を建てたらしい。


「それがこのピラミッドか」


 壁にはピラミッドを表すような大きな三角形の建造物が描かれている。

 ……厳密に言えば、三角形というより四角錐と言ったほうが形的には正しいんだろうが。


「続きは……チッ」

 

 これ以上は掠れが酷くて読み取ることが出来ない。

 辛うじて見えるのは……いや、どれも重要な部分が消えていて意味を成していなかった。


「ただこの墓、ピラミッドが作られた理由をそれっぽい物語を作って表しただけか……?」


 いや……俺の直感がそれを否定している。

 なぜここは海に沈んでいるのか、その説明だってついていない。なのにわざわざ壁画を用意する必要はないだろう。


「絶対なんか意味があるはず」


 集落から街、そして国……王が選ばれて、現れた化け物と戦う。


「……『選ばれて』?」


 キーワードが頭に引っかかる。ここは『選定の狭間のダンジョン』……はたして何を選定するのか。

 俺が考えた通りなら。


「次代の王を、このダンジョンで選んでいる?」


 ……いや、違うか。そもそも壁画に描かれているこの場所は海に飲まれ既に滅んでいることになっている。そんな国の王を決めて何になるというのだ。

 

 それにこんな低階層のエリアでそんな重要な事が明かされるとも考えずらい。


「この考えがありえないとも言い切れないけど……まあ、間違ってるって思った方が妥当だよね」


 頭を振って思考を振り払う。

 限られた情報を元に考察してはみたが……とうとうただエリアの雰囲気作りとして壁画がデザインされた、と考えた方が良い気がしてきた。


「……まあ、初めて設置された演出でもあるし」


 覚えていて損はないだろう。



 

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