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初イベント終了




 「……あ゛あ゛あ゛」


 イベント最終日の朝。気力のポーションの副作用で、全く寝た気がしてない状態で目が覚める。

 気力のポーションは、飲んだその瞬間から肉体的疲労が回復していく破格の効果を持っているが、そんなうまい話だけな訳が無く……飲みすぎると逆に脳の疲れが取れなくなるという副作用がある。


「眠い……」


 出来ることならあと10時間くらい追加で寝たい気分だが、体を無理矢理動かしてベッドから這い出る。

 昨日は魔力強化を使えるようになってからもポイント稼ぎに勤しん結果、『素早さの巻物』を上限まで交換することが出来たが……あと『攻撃』と『器用』も交換しておきたい。


「あー……甘い物食べよう。脳に糖分、脳に糖分……」


 交換分のポイントを稼ぐにはとりあえず頑張るしかない。その為にも気力のポーションの副作用でぼーっとする頭をどうにかしないと。

 寝起きから甘い物を食べるのは少しキツイが、脳が疲れてるときには甘い物がいいみたいな話を聞いた事がある。

 売店でホイップとかチョコをふんだんに使われた菓子パンを買って食べる。


「あっまい、けど美味しい」


 いつぶりだっけな、こんな甘い物食べるの。ジュースとか飲み物で甘い物は今までも飲んできたけど、甘い食べ物を食べるのはもしかしたらダンジョンに来て初かもしれないな。


 「そうだ、今日の目玉商品見なきゃ」


 昨日はレア度レジェンダリーなんてすごいアイテムが並んだけど、果たして今日はどんなアイテムが並んでいるのだろうか。


 そうして祭壇の方を見ると……なんと使えそうなアイテムが2つも並んでるではないか。


「ええっと……?『騎士の剣』と『魔鉄の篭手【黒牙】』?」


 騎士の剣はレア度がレアだが、値段はアンコモンのアイテムとそう変わらないくらいの値段をしていて、どうやらどこかの国の騎士団の制式装備らしい。

 フレーバーテキストに[一線級の戦士の信頼に応える]と書いてある通りなら、それなりに作りはしっかりしているのだろう。


 そして【黒牙】なんて特殊な名称が付いている魔鉄の篭手の方はアンコモンで、こちらも手の出しやすい値段をしていた。

 魔鉄という魔力を通す事で硬化するという特殊な力を持った鉄で作られた篭手で、【黒牙】という名前の通り、手の甲から肘あたりまで小さな刃が並んでいる。


「結構良い素材使われてそうなのにアンコモンなんだな」


 2つ合わせて貯金ギリギリの金額だが……イベントのランキング報酬みたいなので、50位内に入っていればちょっとした賞金が貰えるらしいし、端数のポイントはシルバーコインに交換できるから、買ったって良いだろう。


「剣も使ってみたいと思ってたし、丁度良いだろ」


 気分転換にもなるだろう。そういう事もしていかないと今日一日の集中が持たない。というかそもそもちょっとした遊びが無いとやってらんない。


「朝シャンして、すっきりして~……今日は剣と斧でイベント行くか~!」


 




 風呂から上がり、服を着て装備を整えていく。

 胸当てやブーツは依然をして革装備だが、今日から『魔鉄の篭手【黒牙】』という金属装備が腕にはまっている。


「黒くてカッコイー!」


 黒鉄色に鈍く光る篭手。装飾というよりも、殴打時の打撃力強化を狙った構造である並んだ小さな刃……いや、牙もカッコイイし、買って大満足だ。

 指先まで魔鉄に覆われているし、防御力も十分。グリップも効くし、すっぽ抜ける心配も無い……良い買い物をした。


 腰のベルトにも鞘に収まった『騎士の剣』が固定してある。

 試しに鞘から引き抜いてみても、シャララと音を立てて、どこかに突っかかることも無い。


「重さも……うん。重量はあるけど、鉄の戦槍よりは軽いし使いやすい」


 長剣とでもいえばいいか。刀身は1m程で幅も広く、篭手を嵌めてても両手でも持てる余裕のある長さの柄。


「ふっ!はっ!」


 切り下し、切り上げ、袈裟逆袈裟など……片手でも両手でも素振りを試してみる。


「うん……良いね!」


 剣も持つのは、初期装備の木剣ぶりだが、あれからいろいろと俺の身体能力も上がっているから問題なく振ることが出来た。


「ポーション類も補充したし……行くか!」


 石レンガの拠点から、イベント専用集会所に移動する。最終日だからか、いつも以上にイベントエリアへの入口の列が長い。

 ランキングの掲示板をちらりと見ると……1位のマキアさんのポイントはもう2000ポイントまで行っていた。


「2000って……どんだけ稼ぐんだ?あの人。そんなにあっても交換じゃ使い切れないだろうに……」


 まあ、1位の賞品は目玉商品に並ぶアイテムのカテゴリを、『剣オンリー』とか『防具オンリー』とか、ひとつの種類に絞り込められるアイテムらしいし……2位も3位も、1位よりは豪華さはないがどれも使い道があるアイテムが賞品として用意されている。欲しいものがあるなら狙う価値はあるだろう。


「50位は……今、500ポイント越えか。狙えるかな?」


 俺がランキングに載るためには、今日で200ポイント……いや、それ以上に稼がないといけない。相手も同じようにポイント稼いでるわけだし。

 

 ルキやワイズさんは今ランキングのどの位置に居るんだろうか、と思って掲示板を見ようとしたら、俺がイベントエリアに入る番が来てしまった。

 

 まあ、あの2人は俺なんかよりもずっと強いし心配はいらないだろう。

 それよりもまだ2つしかエリアをクリアしてないのに、無謀にも上位50人の中に入ろうとする自分の心配をするべきだ。


「さぁて……始めるか」


 周囲を見回して、真っ先に目に付いたフェアリーに向かって走り出す。

 騎士の剣を鞘から引き抜き……とりあえず鋼鉄の手斧は抜かないで、左手はフリーにしておく。


「……ふぅ~」


 心臓から全身に向かって魔力を広げていく。まだまだ魔力の操作に慣れていないから、魔力強化を発動するまで時間が掛かってしまう……だから少しでも回数を重ねて、戦闘に通用するまで練度を上げなきゃいけない。


 全身に魔力が行き渡り、グンッと走るスピードが上がる。


「1秒……2秒……3秒……」


 今の俺の魔力量は巻物で25まで上昇している。つまり魔力強化の効果時間は25秒まで。

 狙っていたフェアリーを騎士の剣で一刀両断し、直感と魔力で強化された感覚で次のフェアリーの場所を探す。


 フェアリーを剣で切り捨て、篭手を嵌めた左手で握り潰し、足で蹴り飛ばし……引き抜いた鋼鉄の手斧で叩き切って、丁度25秒。


「ふぅー……」


 魔力を使い切り、胸焼けのような倦怠感を感じて一旦立ち止まる。

 胸の奥から少し気持ち悪さを感じる。魔力の流れが止まったのを、体が拒絶しているみたいで息を吐くたびに、空気が重く感じた。

 

 魔力が全快するまで25分……それまで素の身体能力で戦わなければいけない。

 それに魔力の回復時間が1分っていうのも少し長い気もする。アイテムで魔力の回復速度を上げられるらしいし、そんなアイテムが手に入るまでに魔力について慣れておかなきゃな。


 


 

 

「おや、マシロくん。今日もまた随分疲れたような顔をしているじゃないか」

「ああ……ワイズさん。お疲れ様です……」


 イベント専用集会所の2階のいつもの場所に、ワイズさんが優雅にコーヒーを飲みながら、本を読んでいた。

 

 なんで大人はこうもみんなコーヒーなんて飲み物を飲んでいるだろう。それに本ってどこから手に入れたやつだ?売店に本なんて売ってたっけな。


「マシロくんは、もうイベントは終わりかい?」

「はい……交換したい巻物は全部交換出来たんで、もういいかなと。本当はシルバーコイン欲しさにもっと潜りたかったんですけどね」


 脳が疲れてしょうがない。これ以上はフェアリーとの戦いに支障が出ると、ポイント稼ぎを切り上げて集会所に帰ってきた。

 実を言えば今すぐにでも帰って寝たいが……初めてのイベントだから、どうせなら最後まで居たいと気合いでこうして集会所に残っている。


「ルキくんは最後の追い上げだと言ってエリアに行ってるよ。多分もうそろそろ帰ってくると思う」

「了解です……俺はここで巻物使ったり休んだりしてるんで。ワイズさんは気にせずどうぞ……」


 俺はとりあえず武装を解除して楽な格好になり、交換してきた巻物をひとつひとつ帯を開いて使用していく。

 その後は、栄養補給として売店で『シェフの秒替わり定食』で、炒飯と餃子の中華定食を食べたりしていく。

 

 そして……満腹になったせいでとうとう眠気が我慢出来ずに俺は気絶するように眠ってしまった。


「……ロ」

「……シロ」

「起きろ、マシロ」


 ふと、誰かに体を揺すられて目が覚める。


「起きたか?」

「……ぅん。おはよう……起こしてくれてありがとう、ルキ」


 その誰かというのは、俺が眠っている間に帰ってきていたらしいルキだった。


「ああ、おはよう。たった今、集計が終わってランキングが確定されたぞ」

「おお……あ、ワイズさんもおはようございます」

「うん、おはよう。少しは疲れが取れたかい?」

「少しは、ですね」


 グッと体を伸ばして、背もたれにもたれかかっていた体を起こす。

 そうしてランキングの掲示板の方に顔を向ければ、すごい人集りが掲示板の前には出来ていた。

 普段人が居ない2階のラウンジも沢山の人で賑わっている。


「とりあえず、イベントお疲れ様だね。どうだった?2人にとって初めてのイベントは」

「そうですね……自分の現在の強さが、ランキングとして見やすく、自分を客観視出来てまだ上には上が居る事を知れて……より一層鍛錬に励もうと思えました」

「おー、ルキくんはストイックだねぇ」


 確かにすごいストイックだ。余裕でランキング入り出来てるのに、まだまだ上を目指すなんて……俺なんて50位に入れてたらいいなって思ってるのに。


「マシロくんは?」

「俺は、楽しかったですね。単純に。報酬として用意されてるものも良かったですし……得るものの多いイベントでした」


 魔法や魔力の事を知れたし……巻物も沢山手に入った。若干のコインも得たし、まだまだ駆け出しながら結構充実した結果になったんじゃなかろうか。


「そうかそうか!マシロくんはすごい頑張ってたもんね〜……いやはや、若者のやる気を感じれてオジサンも元気貰えたよ」


 そんな事言って……この3人の中じゃ1番ポイント稼いでる人が何を言ってるんだか。


「ランキングの報酬の受け取りは、交換所で出来るみたいだぞ……マシロ、受け取りに行くか?」

「ああ……そうしようかな」

「お、じゃあ3人で行くとしますかぁ」


 人の波をかき分け、3人で1階の交換所に向かう。

 ランキング報酬を受け取れるタッチパネルは別らしく、タッチパネルを使おうとする人は沢山居て長蛇の列になっている横を通り抜けて、ランクインしている人のみが並ぶ列にの最後尾に並ぶ。


 俺の初めてのイベントはこれで終了だ。

 今回は駆け出し過ぎて、気力のポーションをがぶ飲みして無理をしたが……次があればもっと強くなった状態で挑戦したいな。



 

 【1位:マキア 2376ポイント】

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 【12位:ワイズ 1581ポイント】

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 【24位:ルキ 986ポイント】

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 ︙

 【49位:マシロ 667ポイント】


 ランキング報酬

 『41~50位:50 シルバーコイン/低級素材各種』



 

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