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各世界の魔法




「だぁはぁぁぁぁぁ……」

「すんごい疲れてるねぇ、大丈夫かい?」

「い、一応」


 すでに定位置のようになっている2階のラウンジ、その柵側真ん中のテーブルのソファに、これでもかと背中を預ける。

 今は一旦イベント専用集会所に戻って本格的な休憩中だ。


「今日は随分頑張るじゃない、マシロくん」

「はぁい……ちょっと撃破ポイントが欲しくて」


 気力ポーションのおかげで、肉体的疲労が解消され長時間イベントエリアに籠る事が出来た。

 ポイントの獲得数も順調で、今日は既に150ポイントも稼げたが……精神的疲労はどうしようもなく、脳が悲鳴を上げ始めた為、こうして集会所に戻って休憩を取っている訳だ。


「あれかい?やっぱり欲しいのは巻物かい?」

「ですねぇ……まだまだ序盤を走ってる俺にとって、身体能力が上がるのは恩恵が大きいですから」

「そうだね。あれほど戦闘力に直結するアイテムは他にそう無いからね」


 ワイズさん程の強者がそう言うのなら、やはり巻物を求めるのはそう間違ってないんだろう。


「マシロくんの装備構成は……主力に槍を据えた近距離戦闘って感じだよね?」

「そうです。ここに来てすぐに宝箱から運良く槍が手に入ったので……成り行きでそんな感じになってます」


 実際、それが俺の性に合っていると思う。

 元々戦いに身を置いて無かった人間に取って、武器を持ちそれを当てさえすれば敵を傷付けられるというのが、分かりやすいというともあるにはあるが。


「出来れば魔法とかも使ってみたいんですけどね」


 現状で目指す究極は、何らかの武器と盾を持ち、鎧を着て防御を固め……魔法を使って遠距離にも対応するっていう形だ。

 いわゆる、オールラウンダーという状態だろう。


「おや、魔法を使ってみたいのかい?」

「はい!……近距離だけじゃ、空を飛ぶ敵とかに対する手段が少ないですから。弓を持つにしても荷物になるし、命中させる技術が俺には無いので」


 ……それに魔法への憧れも、使いたい理由の一つだ。

 どこからか感じる、理由の無い魔法への憧れ。多分地球がそういう魔法などが存在していない世界だったからと、恐らく記憶を失う前の名残のような物が俺にあるんだろう。


「それなら、オジサン少しは助けになれるかもよ?」

「え、本当ですか!?」

「前話したかな?オジサンが研究員だって話……あれは魔法の研究員、って意味だったんだよねぇ。だから『オジサンが居た世界の魔法』なら、教えられると思うよ〜……教員の真似事もした事があるし」

「お、教えてください!お願いします!」


 ソファから立ち上がり、ワイズさんに向かって頭を下げ懇願する。

 なるほど。確かに、目立った武装が見えない理由として、ワイズさんが魔法使いというのなら説明がつく。

 それにダンジョンから脱出に対しても積極的ではないというのも、ダンジョンでは周囲の被害を考えなくても良いから、好きなだけ魔法を試し打ち出来るという事だろう。


 ……逆に考えれば、魔法の研究さえなければ何時でもダンジョンを攻略出来る自信があるという事。


「もちろん、教えてあげようじゃないか。だから頭をお上げ、マシロくん」

「ありがとうございます!」


 ワイズさんは俺の頼みを快く受け入れてくれた。

 これで俺も魔法を使う事が出来る……!


「さて、じゃあ早速講義と行こうかぁ……マシロくんは魔法についてあまり知らない、って認識で合ってるかな?」

「はい、ほとんど知らないです。なんかこう……火の玉を飛ばしたり、傷を治したりとか出来る不思議な力ってぐらいしか」

「おー!それぐらいイメージがあるなら、魔法についての入りは大丈夫そうかな」


 そうしてワイズさんの講義が始まろうとした瞬間……ワイズさんの雰囲気が今までの緩いものから、ピンと張り詰めた緊張感のあるものに変わる。

 恐らくこれが、飄々としたワイズさんの本当の顔……魔法を究めんとする研究者としての顔なんだろう。


「まず最初の質問。魔法を使う、発動する為に必要なものは、なんだと思う?」

「……ま、魔力?」

「そう、『魔力』だ……あ、ちなみに僕調べだけど、他の世界では同じように魔力と呼称している所もあれば、『魔素』や『マナ』、『エーテル』、『オド』なんて言い方をする所もあるらしいよ」


 おお、世界でも魔力というもの一つでも、世界によっては呼称が違う事もあるのか……文化の違いというやつだろうか。


「僕は魔力で統一して呼ぶけど……この魔力が、何らかの方法で作用した結果、魔法が発動する。人や文化、世界によっては魔法は詠唱文を唱えるだけで発動出来たり、魔法陣が必須だったり……そもそも道具が必要だったりするね」

「なるほど……じゃあワイズさんはどうやって魔法を発動させるんですか?」

「お!良い質問だねぇ!……僕は、というか僕の世界では頭の中で魔法の構成式を組み立てて、魔法を発動するって方式だね」


 ワイズさんは「例を見せよう」と言って人差し指を伸ばし、上に向けた。


「僕は今からこの指の先から火を灯すよ。そうだな……火力はタバコに火を着けられるくらいで、燃料は僕の魔力。範囲と大きさも指先程度で良いね。効果時間も数秒だけ。そうなると、魔力の消費量もそこまで必要は多くは無いかな」


 ワイズさんは魔法の構成式らしきものを次々と定めていき……そして指先に小さな火が灯った。


「これが、僕にとっての魔法」

「おおー!すごい!」


 魔法だ!指先から火が出た!すごい!


「あはは、そんなに喜ばれると気分が良いねぇ…さて、今構成式を全部口に出してみたけど、構成式がどういう感じのものか、掴めたかな?」

「はい……どういう魔法を発動するのか、レシピを考えるってことですよね」

「あはは!なるほど、料理のレシピに例えたのか!いいね、そんな感じだよ。ふふ、新鮮な見解だな……やっぱり、魔法に対する知識が無いから、柔軟な発想に至るのかな」


 聞いて抱いた感想を伝えてみると、ワイズさんが肩を震わせて笑い始めた。

 そんなに面白いかな……俺には、どの食材をどう切って、どう加熱して、どういう味付けにするか、みたいな感じに聞こえたんだけど。


「ふぅ、じゃあ真面目な話に戻るとして……魔法のレシピの構築が出来ていれば、実はどんな方法でも魔法は発動する。詠唱したりとかね?」


 あ、なるほど。構成式さえあれば魔法が発動出来るんだから、構成式の構築方法は何でも良いのか。

 魔法の設計を言語化して口に出せば、脳内のイメージを安定させる事にもなるし……構築式を陣や図解に起こしたとしても、自分さえ意味が理解してれば魔法は発動するのか。


「そして魔力の消費量は、構成の複雑さと出力と維持時間で決まる。だから、僕ら魔法の研究者はこの構成式……レシピをより完璧な物にする為に研究をしているんだ」

「おや?魔法の話をしてるのかな?」

「あ、ルキ!」


 ある程度ワイズさんの魔法の講義が進んだところで、ルキがやってきた。

 ルキからは、敵意や殺意などの……戦闘の余韻が微かに漂ってくる。ついさっきまでイベントエリアに居たんだろう。


「ルキくん、お疲れ様。今、マシロくんに魔法の講義をしていた所だったんだ」

「ほう?魔法の講義ですか……マシロは魔法を使いたいのかな?」


 ルキの言葉に俺は大きく頷く。是非とも使いたいね……便利だし、カッコイイし、憧れがあるし。


「あ、僕の講義は一旦区切りまで来たし……ルキくんの世界の魔法について話してあげたらどうかな?僕も気になるし」

「私の世界の魔法について、ですか」

「え、聞きたい聞きたい!」


 今の俺は魔法についてのモチベーションがめちゃくちゃに高い。 2つの世界にとっての魔法が何なのか聞けるチャンスでもあるし、思わずテーブルに身を乗り出してしまった。


「ふふ、じゃあ参考になるかどうかは分からないけど話してみようか……少し待っててくれ」


 ルキは一旦武装を解除して、楽な格好をしてから飲み物を買いにドリンクバーに向かっていった。

 そして持ってきたのは、スポーツドリンク……誰かから運動後に良いと聞いたんだろうか。


「さて、私の世界の魔法についてか……一般人にとって魔法というものは、あまり身近なものでは無かっただろうな」

「それは使う為には才能が必要、って事かい?」

「ええ、大雑把に言えばそうなります。普通の人間は魔法の源である魔力を持たない」

「……なるほど、やっぱり世界が違うとそういう小さな点が違うな」

「ということは、ワイズさんの所では魔力を持った人間が、一般的なのですか?」


 ワイズさんはルキの言葉に頷く。それを見るルキの表情がなんだか少し羨ましそうで……悲しそうでもあった。


「まあ、私の世界にとって魔力は、誰しも持ち得る事は出来ないものだったよ。そして魔法……こっちも、ほぼ生まれつきで使えるかどうかが決まっていてな。魔力を持っていても魔法が使えない、なんて事がある」

「魔法が使えない?火の玉とか出せないって事?」

「ふふ、マシロにとって代表的な魔法は火の玉なのか?……まあ、魔法が使えなくても魔力強化という技術があったが、マシロの言うような魔法は使えない人も居たな。私もその内の1人だ」


 魔力を持ってても、魔法が使えない……ワイズさんの世界の話を聞いた後だと、少しシビアな世界なんだなという印象をルキの世界に対して抱いてしまう。


「だから、私が話せるのはこの『魔力強化』についてになる。それでも良いか?」

「うん!聞きたい!」

「僕も聞いてみたいねぇ!それは一体どういうものなんだい!?」


 ワイズさんも、ルキの世界の未知の技術に興味津々といった表情で俺と同じようにテーブルに身を乗り出し始めた。


「魔力強化は……簡単に説明すると、魔力で自分の身体能力や武器の性能なんかを強化する技術、だな」

「物の性能も強化出来るのかい!?そ、その発動方法は!?」

「発動方法はただ魔力を広げるだけ、です。体内に魔力を巡らせたり、武器に魔力を込めたりするだけ」

「たったのそれだけで……!?しょ、消耗は、魔力の消費に対して効果時間は!?……あ、あと強化率はどのくらいかも教えて貰っていいかな!?」


 うわぁ……ワイズさん大興奮だ。研究者の血が騒いでるんだろう。その熱量にルキも若干引き気味になっている。


「お、落ち着いてください、ワイズさん。今はマシロに話すのが優先ですから、それは後……後で詳しく話をします!」

「あ、ああ……そうだったね。ちょっとはしゃぎすぎたよ」


 ワイズさんが「ごめんね」と俺とルキに謝る。

 俺としては、大はしゃぎするワイズさんも見てて面白かったから、そんなに気にしてないが……申し訳なさそうにしているので「大丈夫ですよ」と返しておく。


「……じゃあ俺も魔力強化って使えるかな?」

「マシロは……どうなんだろうな。出身の世界が違うから、なんとも言えないな。そもそもマシロは魔力も持ってないし」

「うっ!」


 ルキの鋭い指摘に思わず胸を押さえる。

 や、やっぱり俺って魔力持ってないのか……


「ああ、やっぱりルキくんもそう感じるかい?」

「ええ、マシロからは魔力を微塵も感じないですね。すっからかんです」

「僕もだよ。もしかしたら出身が違うから魔力というものがそもそも違くて、感知できてないだけかと思ったけど」

「うぅ……」


 痛い。胸が痛い。そうだよ、いくら魔法が使いたいなんて言っても、それに必要な魔力がないんだから、意味ないじゃないか……


「ま、魔力すら持ってない分際で魔法を使いたいなんて戯れ言いってごめんなさい……」

「あ……す、すまない!傷付けるつもりはなかったんだ!」

「そ、そうそう!……ほら、巻物!魔力を増やす巻物があるじゃないか!多分だけど、それを使えばマシロくんも僕の世界の魔法か、ルキくんの世界の魔力強化も使えるようになるんじゃないかな!?」


 確かにワイズさんの言う通り、俺に魔力が無くても巻物を使えば、後天的に魔力を得ることは出来る。

 出来るけど……


「魔法、使えるかな……」

「使える使える!きっと多分恐らく、可能性はあるさ!マシロくん、飲み込み良かったし!」

「ああ、マシロなら出来る!この私が見込んだだけあるんだから」


 そうかな……そうだと良いな。きっとそうだよね。

 何事もやってみないと分からないよね。


「……まず『魔力の巻物』ひとつ交換してみる事にするよ!」


 やる気が出てきた。休憩もそろそろいいだろうし、イベントエリアに行く途中でまた巻物を交換するから、実験的に1個交換してみよう。


「「ふぅ……」」



 

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