ある貴族の幸せな一時
※この物語には残酷な描写、ご都合主義的な展開が含まれる場合があります。
これはただの都合のいい勇者の物語でも、空を舞う竜を殺す英雄の物語でもない。
ただ、何かに振り回され、それでも必死に何かのために生きた者たちの物語だ。
「アレス様、お食事の時間でございます」軽快なリズムでドアがたたかれる。
「ああ、わかった」僕はそう返事をすると持っていた本をたたみベッドから腰を浮かせる。
僕を呼んだこの黒髪赤目の少女がサーシャ、曾祖父の代から僕の家に仕えている使用人の娘で幼馴染だ。
「じゃあ、行こうか」
そういって、僕は部屋を出て食堂へ向かう。
食堂につくと、白髪黒目の少女が僕に話しかけてきた。
「お兄様、また本を手でページをめくりながら読んでいたの。本なんて魔法を使って読めば楽なのに」
彼女はクラリス、可愛い僕の妹だ。
「まぁ、確かにそういう考え方もあるけどね。僕にとっては、本を読むっていうのただ知識を手に入れるだけのものじゃないんだ。僕が本に求めているのは癒しだからね」
「そう、お兄様はやっぱり変わっているわね」
「さあ、2人とも席に座って」
今僕たちに、席に座るように促したのはクラウディア母さまだ。
「はい、クラウディア母様」
「はい、母様」
クラリスは返事をし、席に座ると母様に話しかける。
「ねぇ母様、お父様はまだ来ていないの?」
「もう少しで来ると思うわ」
父は、外では厳格な人間として知られているらしいけれど、僕らにはそんなところはあんまり見せない。
「あら、話をすれば」母さまがそうつぶやくと、父さまが部屋に入ってくる。
「ああ、待たせて済まない。少し仕事が長引いてね」
僕らは食事を始める、これから何が起こるのかも知らずに。
父さまが席に着く、瞬間明かりが消えその場を暗闇が覆った。
「父さま、母様、クラリス3人とも大丈夫?」
僕は、パニックになりながらも魔法で辺りを照らす。
「大丈夫か!」「アレス、クラリス、クラウディア!」
父さまの声が聞こえる
その声に安堵しより強く魔力を込め部屋全体を照らすと……
最初は脳が理解を拒んだ。お母様の姿だった。そこにあったモノは、もう息をしていなかった。
「アレスッ!!!」
呆然としている僕に父さまが叫ぶ
何かの紋章が刻まれたローブを着た男が僕に剣を振りおろす。
咄嗟に横っ飛びで避けようとするが、間に合わないと悟り目をつぶった瞬間……
目を開けると、僕の前で2つの剣が交わり火花を散らしていた。
僕は父さまが守ってくれたのかと安堵する。
「伯爵様!」
「サーシャ!!2人を連れてすぐに例の場所に」
サーシャが心配そうな顔で父様の目を見る。
父さまが黒尽くめの男の相手をしながら答える。
「私は大丈夫だ、すぐに追う」
「アレス様、クラリス様行きましょう」
「あぁ」
サーシャがクラリスの手をとり、走り出すと同時に僕もそれに追従し廊下に飛び出す。
「クソぉ」
屋敷が燃えていた、僕たちが今まで過ごしてきた日常の象徴であるこの屋敷が
「サーシャ、例の場所っていうのは?《《目》》を使って切り抜ける」
「談話室の暖炉から地下にいけます。そこまでいければ。」
僕はクラリスに話しかける。
「安心しろ、クラリスお前は絶対に僕が守る」
大きく息を吸い、姿勢を低くひして《《目》》で安全な場所をみながら走り抜ける
そして、談話室にたどり着くと、暖炉の火を消し中に隠れていた階段で地下に降りていく。
「この屋敷にこんな所があったなんて、何のために……」
僕の疑問に答えるようにサーシャが説明する
「ここには非常脱出用の転移魔法陣と非常用の装備、備蓄が置いてあります」
「はやく装備と持ち物を準備して避難しましょう」
装備を整えると、魔法陣の前に立つ
「アレス様っ」
サーシャが肩の剣を抜き飛んできたナイフのうち1本を弾くがもう1本が魔法陣に刺さる。
僕はそれを投げた男に向かって投げかける。
「お前たちは何者なんだ」
男は、「まぁ、もうその転移魔法陣は使い物になりませんし。いいでしょう」とつぶやくと「お初にお目にかかりました。私は騎士アルフレッドといいます」
「以後お見知りおきを」下卑た目で僕たちにそう告げる。
「騎士が何の理由があって、この家を襲えるっていうんだ」
「この件は内密にされ、ただの火災として処理されます」
「あなたたちは一晩の一つの火災ですべてを失った哀れな家族というわけです」
そう男が話し終わった瞬間に、手を前に出し言葉を放つ。
「残念だったな、僕たちはまだ死なない」
右手に構築した魔法を男の足に向かって放つ。男は横に跳んで回避しようとするが、魔法の球がそれを逃がさずに曲がる。
「残念、僕の球は特別製なんだ」
「サーシャ、今のあいつなら君でも対処できるはずだ。僕は魔法陣を修復する。時間を稼いでくれ」
サーシャと入れ替わりに後ろに跳ぶと、すれ違う瞬間サーシャがつぶやく。
「頼みます、アレス様」
時間がないので安全な場所に転移するための術式と使用後に破壊するための術式のみを構築する。
「ごめん、転移先がわからないからとりあえず僕の知る安全な場所に設定しておく」
先に魔法陣の上にクラリスを立たせ
「サーシャ、魔法陣を発動する、早くこっちに」
「はい、アレス様」
僕が男を妨害するための魔法を放つと同時にサーシャが離脱する。
サーシャが戻ると僕は魔法陣を発動させ、念のためにサーシャに色々なことを伝える。
「サーシャ、クラリス」「生きてまた戻ろう」
そう言うと魔法陣が発動し――
小説家になろう初投稿です。ていうか、ちゃんとした物語すら書くのが初なので、勉強しながら邁進していきます。コメントをしてくださると、作者は狂喜乱舞します。




