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第7話 不可解な遺体

「まずはこちらの写真はどうかしら?」 


 茜は一枚の写真を一同が目を向けた。そこには見たことも無いような光景が映し出されていた。


 ミイラ化した死体。着ていた赤いセーターの袖などが焼け焦げて無残に見えた。カウラと誠はすぐにそれが何かを思い出した。典型的なパイロキネシストの能力暴走。しかもそれはどう見ても瞬時にミイラ化したところから考えて他からの刺激で能力を無理やり発動させられたとしか思えない生々しさを映し出していた。


「法術暴走した適正者の死体ですか。以前、整理を頼まれた資料のものですね。これは明らかに外的刺激を受けて自分の意志とは関係なしに法術を発動させられたような様子が見えました。これは明らかな他殺体です」 


 カウラのその言葉にかなめは思い出したように手を打ってそのまま茜を見つめた。


「ねえ、何のことよ。私の見ていない写真ね。カウラちゃんもあの仕事頼まれてたんだ……なんだか狡いような気がするけど、まあいいわ」 


 資料に目を通していないアメリアはかなめとカウラを見比べながらそう言った。サラや島田はただそのミイラ化した死体の写真から目が離せないでいた。


「この半年あまり……正確に言うと例の『近藤事件』で法術の存在を神前曹長が全宇宙に知らしめたころからですわ。すでにこのような死体が東都周辺で7体見つかってますの。共通点はまず全員が法術師であること。しかも未覚醒の法術師で、自分から法術を発動させたわけではないと言う点も共通していますわ」 


 そう言うと全員の顔を見渡してもう一枚の写真を取り出した。


 そちらの写真は誠も初めて見る写真だった。


「なんだこりゃ?」 


 かなめの言葉が全員の感想を代弁していた。そのミイラ。着ていたグレーのコートはどす黒い血にまみれている。右腕を肩の根元から切り落とされているように見えるのでそこから流れ出たのかもしれない。だがその肩からは中途半端な長さの子供の腕のようなものが生えていた。


「法術適正があると腕を切っても再生するんだ。便利ですねえ」 


 いつもと違う抑揚の無い調子で島田がつぶやいた。元気が取り柄の島田の抑揚のないつぶやきに一同は黙り込んだ。


「そんな、黙り込まないでくださいよ!それよりこの血はこのミイラさんのものだったんですか?」 


 サラに見上げられながら島田が写真を出してきた茜にそう言った。


「島田さん着眼点がよろしいですわね。肩の辺りの血は別として胸の辺りの血はまったく別人のものですわ。しかも発見されたときはこのコートについていた血以外は現場に同じ人物の血液は一滴も落ちていなかったそうですの。これも明らかに何者かによって外的刺激から不死の能力を発動したように見受けられますわね」 


 しばらく食堂は沈黙に包まれた。そのあまりに不可解な遺体に一同はただ言葉もなく注目することしかできなかった。



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