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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四十四章 『特殊な部隊』のお節介な面々

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202/206

第202話 盗み見る者

「押すなって!」 


 島田が叫んだ。胴着を着たままの姿の誠、アメリア、菰田に押し出されて、そのまま島田はカウラが操作している端末の画面の視界からこぼれた。


「正人、そっちは一杯みたいだからこっちで見ればいいよ」 


 サラがそう言うと二つ隣のモニターをいじり始めた。さすがにブリッジクルーとしてオペレーション業務には慣れているサラの手にかかればすぐにモニターの電源が入り同じ画像が映し出された。


「いいわねえ……サラったらすっかりラブラブでさすがにここでいつもの『青春ごっこ』とはいかないでしょ。青春に覗きは関係ないもの」 


 上司であるアメリアは島田と仲良く画面を見るサラを冷やかした。


「アメリア!そんなんじゃ無いってば!そっちが邪魔になったら悪いと思って……ねえ、正人」 


「じゃあ俺が……そっちに移った方がこっちが広く見えますよ。ベルガー大尉。こう見えても俺は気の使える男なんで」


 菰田はそう言って隣のカウラが菰田を嫌がっているのを察して島田達のモニターの方に移動しようとした。 


「菰田っちは駄目!菰田っちは臭いんだもん。ちゃんとシャワー浴びてるの?」 


 島田とサラの二人をアメリアと菰田がからかったつもりがサラから思わぬ逆襲を受けて菰田が俯いた。それをちらりと見た後、誠の視線はカウラの手元に移った。


「まだ拡大画像は映らないのか?」 


「焦るな、ちょっと角度を変えて……ほら映った」 


 カウラは自信満々に選択キーを押した。そこにはかなめと先ほどの老人の姿が現れた。二人とも他人行儀に向き合って応接セットに座っていた。


「おう、ちゃんと映ったじゃねーか。しかし、これで隊の馬鹿共が不純異性交遊をしていないか監視をすることが出来る。特に明後日からは第二小隊の馬鹿共が出てくる。アイツ等は存在自体が18禁だから監視を強化する必要があるな」 


 ランが端末の椅子をずらして座っていた。そしてその発言内容はまるで監視国家設立を宣言するようなものだったので誠は思わず冷や汗をかいた。


「それにしても腰が低い人ねえ。カウラちゃんがお店に行った時もあんな感じだったの?」


 アメリアはあの大将の店での態度の大きさを知らないので、自然と顔は店でうどんを食べた事が有るカウラに向いた。


「いいや、普通のうどん屋の亭主と言う感じだった。態度はもっと大きかった。きっと西園寺が甲武の貴族だと知って委縮しているのだろう。甲武国が貴族の国だと言うことは遼南共和国の人間も知っているはずだ。委縮しない方がどうかしている」 


 ランの反対側にパイプ椅子を運んできていたアメリアが画面の中で何度もかなめに頭を下げる小柄な老人に感心していた。


「アイツも一応は甲武貴族のお姫様だからな。私達みたいな下々からしたら雲の上の存在ってことなんじゃないのか?普段はああだが、海に行った時の態度を思い出せ。アイツにも一応は甲武国一の姫君としての自覚は有るんだ」 


 カウラの言葉に誠は海でのあの上品なかなめを思い出して懐かしく感じていた。隣で紺色のアメリアの髪が揺れていた。


「うんうんかなめ姫には誠ちゃんは不釣合いよねえ。それにかえでちゃんは『許婚』と言っても親の決めた話だし、かえでちゃんほどの変態になると誠ちゃんには扱いづらいだろうし、私にもチャンスがあるかも」 


 そう言うとアメリアがそのまま誠に顔を寄せて来た。


「アメリアさん……顔が近いんですけど」 


 ひどくうれしそうなアメリアの顔にまた遊ばれると思った誠の声が響いた。


 画面の中ではいつものガサツな姿はどこへ行ったのか、よそ行きの姫君としてのかなめの態度が映し出されていた。


「いつもこう上品でいてくれると上司としてはうれしいんだが。西園寺の勤務態度はあまりにひどすぎる。まあ、日野少佐のそれよりはマシとはいえるが。ああも堂々とセクハラをされると隊の風紀が乱れていけない」 


 カウラの一言がその状況から誠を救った。二人は思い出したように画面に視線を移していた。画面の中で頭を下げ続けていた老人はようやく気が済んだというようにかなめに向かいのテーブルに座った。



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