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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第十九章 捜査権限の限界

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第103話 待っていた違う結末

「遅かったじゃないか」 


 部屋の隅から響いた突然の人の声に銃口を向けた誠の先には嵯峨が着流し姿で立っていた。明らかに不機嫌そうな顔でタバコをくわえていた。


「隊長……?なんで?」 


 カウラはすぐに嵯峨の足下に人が縛られて転がっているのを見つけた。


「隊長、この人は?」 


「ああ、この基地の総責任者の三上中佐だ。ちゃんと挨拶した方がいいぞ。これでもこの基地の隊長様だ。しっかり賄賂を貰って本国には別荘を買うそうだ。本当にお金の集める方がお上手なようで。小遣い三万円の身からしたら羨ましい限りだ」 


 そう言う嵯峨の手には日本刀が握られていた。それを見ると警戒していたかなめは狐につままれたように呆然と立ち尽くした。


「なんだよ、叔父貴は知ってたのか」 


「知ってたというか……ラン」 


「は!」 


 嵯峨のにごった視線がランを捕らえると彼女の小さな体が硬直したように直立不動の姿勢をとる。


「お前がついているから安心していたんだけどなあ……こりゃあちょっとまずいぞ。連中俺達が動いていることを知ってて活動している。だからこうしてここの商品を別の場所に移したうえで証拠を消して立ち去った。これから先の捜査はやりにくくなるぞ」 


 そう言うと嵯峨は抜き身の愛刀『粟田口国綱』を転がっている指揮官の首に突きつけた。


「しかし、三上さん。アンタも大変だね。利用するだけ利用されて、危ないとなったら即この様だ。人間欲に縛られると良くないって言う典型例だな」


 嵯峨はタバコを再び口にくわえて、足元の三上と言う指揮官を軽く蹴飛ばす。


「コイツに話を聞こうと思ったんだけどさ。まあ薬と催眠で記憶が消されてるみたいでまるで話のつじつまが合わなくてさ。お前さんら完全にマークされてるな、法術を使える追跡者とは別の本命の方。研究の指揮を執っている奴に。やられたよ」 


 嵯峨の言葉にかなめの顔が硬直する。


「じゃあこっから先の情報は……事件の糸は切れたわけですか」 


 そう言いながらランは銃口を下げる。


「ぷっつんだな。それにこんだけ派手に動いたんだ。相手もかなり警戒することになるだろう。一声、俺に話しとけば何とかできたかもしれねえが……まあ、もう終わったことだ……それに最低限の目的である新規の法術師研究はあちらさんも見送るだろう……それだけが救いだね」 


 いつの間にか外の銃声が止んでいた。そしてフル装備の茜達の陽動部隊が入ってきた。


「ああ、お父様」 


 明らかに茜の声は沈んでいた。察しのいい茜である。この場所に来るまでの景色でこれまでのすべての誠達の行動が無駄に終わったことを理解しているように見えた。


「茜。なんなら安城さんに頭下げるか?公安機動隊の情報網ならなにか引っかかるかもしれないぞ。なんなら俺が頭を下げてやってもいい」 


 嵯峨の言葉に茜は首を横に振った。いつも物腰が柔らかい茜にしては珍しい意固地な表情に誠は驚いていた。


「機動隊に頼めば確かに発見できる可能性は上がりますが、あちらの任務は非法術系の捜査活動に限定されているはずですわ。法術にからむ犯罪は私達の……」 


 あくまでも頑固な娘に呆れ果てたように嵯峨は大きくため息をついた。


「そうか。そんな原則論に拘らなくても秀美さんなら動いてくれるだろうに。まああちらは俺達と違って俺達の捜査に付き合ってくれるような暇も無いだろうしな。なら俺も手伝ってやるか」 


 そう言うと嵯峨は立ち上がる。頭を掻いてそのまま誠に近づくと嵯峨は手を伸ばした。


「なんでしょう?」 


「端末」 


 嵯峨の言葉に誠は銃のマガジンが刺さっているベストから端末を取り出して嵯峨に手渡した。


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