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砕魔学園にかける青春  作者: 木々 杯
砕魔学園にかける青春
4/127

4 ヒロイン集結 (ゲームの)

 体育館には最終決戦に関わる者達が揃っていた。入ってきた俺を、サイガク1のメインヒロイン達が迎えてくれる。


 砕魔学園高等部第三学年、斎賀 陽(さいが よう)

 砕魔学園の理事長の娘であり、正統派の美少女だ。長い髪をきっちり結い、凛としていながら時折見せる天然なところも魅力的だ。砕魔力、身体能力共に高水準の万能キャラである。

 困った時はパーティーに入れておけば、十二分に活躍してくれる。装備するレイピアに砕魔力を乗せた突きに、貫けぬものはない。


 砕魔学園高等部第三学年、小野田 美雨(おのだ みう)

 とある離島出身の、マイペースガールである。

 健康的な日焼けとショートカットがよく似合っている彼女は、砕魔力こそ低めだが、抜群の身体能力を誇り、クセはあるが上手く使えば最強クラスのアタッカーになる。一撃の威力を高めるSTR型にするか、AGIを上げて連撃の鬼にするかは好みが分かれるところだが、どちらにしても強い。

 今回の攻略では、AGIを高めているので、怒涛の連撃を魔に叩き込んでいるのを見ているだけで爽快感がある。


 斎賀学園教師の花城 火禅(はなしろ かぜん)

 大学を卒業したばかりの新任教師のはずだが、すでに威厳と色気がある。緩くハーフアップに編まれた茶色い髪と威厳を感じさせる切れ長の瞳は、アンバランスなようでいて独特の魅力を放っている。

 彼女は身体能力こそやや低めだが、抜群の砕魔力を有している。遠距離攻撃のエキスパートとしてパーティーを支える存在である。

 特に、彼女の使う火の砕魔技は派手さも威力も高く、いるといないでは攻略の難易度が変わるとまで言われている。


 砕魔学園高等部第二学年、風巻 紅葉(かざまき くれは)

 一学年後輩の才女だ。空いた時間は常に図書室にいるほどの本好きであり、委員長と呼びたくなる雰囲気を持っている。

 普段は三つ編みにしてメガネをかけているため、一見地味な雰囲気だが紛れもなく美少女だ。髪を解きメガネを外した時のギャップも良い。

 身体能力、砕魔力は低めだが、珍しい治癒能力と、仲間の砕魔力を高める力を持っている。貴重な回復役であり、バッファーでもある。本人が狙われると脆いので、彼女の力を発揮させるには、立ち回りが重要になる。


 そして、砕魔学園中等部第三学年、九重 空。

 ぼーっと空を眺めていることの多い、ミステリアスな後輩である。

 無造作なボブヘアーは彼女の雰囲気にマッチしている。まだ中学生ではあるが、砕魔師としての能力は高い。

 彼女は防御や支援を得意としているが、今回の周回でイベントをこなしたおかげで、最強クラスのアタッカーとしての運用も可能になっている。氷の砕魔力を操り、攻守両面で活躍するので、もっと早く攻略すればよかったと少し後悔している。


 以上の五人が、砕魔学園にかける青春のメインヒロインである。皆、魅力的な女性であり、戦闘能力も高い。

 他にも、メインパーティーには男性キャラクターの獅子倉 界(ししくら かい)小松 亜尊(こまつ あそん)長村 凌牙(ながむら りょうが)がいる。

 彼らもそれぞれ実力者ではあるが、説明は省こう。今回はパーティーに入れるつもりは無いし。

 ごめんな、界、亜尊、凌牙。ちゃんと育てれば、メインヒロイン達をしのぐ活躍もできるんだけど、今回は出番なしだ。

 他にも、サブキャラクターと親交を深めていればパーティーに入れることができるが、今回はそこまで仲良くなったキャラがいないので最終決戦には連れて行けない。


 サブとはいえ、隠れた強者から、ネタのようなスキルしか持たない者まで、個性的なキャラが数多く存在している。そういうキャラを探したり、気に入ったキャラをとことん強くしてみたりという楽しみ方もできるのがサイガクのいいところだ。


 パーティーのメンバー以外に、体育館には陽の父親である理事長や、砕魔学園に出資する日本の対魔防衛を担う組織の人間などが一堂に会していた。広い体育館も人でいっぱいになっている。


 最終決戦に挑むのは主人公達だが、体育館に集まった他の人物達にも重要な役割がある。それは、日本中を覆っている邪心を一つの場所にまとめるという役割だ。


 多くの砕魔師が力を合わせ、この体育館を中心に巨大な結界を張る。

 一介の学生である湖太郎達が邪心に挑むのはいかにも無謀に思えるが、それもゲーム内で理由が説明されていた。


 とあるイベントで明らかになるのだが、現在対魔防衛組織は上層部の腐敗により、その力を大きく落としている。

 そのため、各組織に大きなダメージがある。それらの組織の実力者は、全く異なる砕魔技を繰り出す別組織の人間と連携が難しいこと。邪心を集めるには、強力な力以上に繊細な技術が必要であり、学生達にはそれが難しいこと。


 そう言った理由で、一流の砕魔師達は邪心を集めることに全力を尽くし、主人公達がそこに突入するという流れになっている。


「きたか、新月君。ああ、九重君も一緒だったか。ちょうど良い」


 陽の父親、砕魔学園の理事長が口を開いた。


「よし、これから邪心を集める術式を展開するぞ」



 多くの砕魔師が集中し始める。突入班である湖太郎達は下がって見ているが、砕魔師達から放たれる砕魔力に気圧されそうになる。美海が唾を飲み込む音が聞こえた。


 1時間ほどで、術式は完成した。体育館の床のちょうど中央部に大きく暗い穴が開いており、その周りに無数の札が貼られている。穴は禍々しい雰囲気で、時折うめき声のようなものが漏れ出てくる。


「この術式はそう長くは持たん。情けない話だがな」


 今まで邪心を集める術式に参加していた砕魔師が話しかけてきた。

 スーツを着こなす彼は、対魔防衛協会に所属する砕魔師組織の一つである『裏ミナヅキ流』の若き当主であり、名を水無月 豪炎(みなづき ごうえん)という。ストーリー上でも重要な役割を果たす実力者であるが、なんとサブキャラクターの一人で、仲間にすればかなり強いらしい。しかし、流石に今は大規模な術式展開の影響で、疲労が隠せていない。


「だが、無理はするなよ。邪心の集合体を倒すのが君たちの役目だが、何より大切なのは君たちの命だ」


 真っ直ぐと見つめてくる。


「はい、分かりました」

「情報を持ち帰ってくれるだけでも、十分すぎる成果だ。その頃には、我々も回復しているはずだ。命あっての物種ということを忘れるなよ」


 いい人だよなーと毎回思う。かなり偉い人だが、学生相手でも、対等に話してくれる。パーティーに入れるための難易度は高いらしいが、次のプレイでは彼の攻略を目指してみようか。ふとそんな思いが芽生えてくる。サイガク2のプレイが先にはなるが、絶対にまた1もプレイしよう。


 しかし、まずは今回の攻略に集中しよう。


 大穴の前に突入班の六人が集まった。六人で一つのパーティーとなり、これから大穴の中へ入る。


 「陽、美雨、花城先生、風巻、空。絶対に邪心の集合体を倒して、絶対に生き残る。俺たちならできる。やってやろう!」


 俺の檄に、みんな力強く頷いた。


「湖太郎。頼りにしているよ」と、陽。


「気楽に行こうよ。なんとかなるからさー」と、美雨。


「無茶するからな、お前らは。特に新月、私という大人がいることを忘れるなよ。困る前に頼れ」と、花城先生。


「新月先輩、回復は任せてください。でも、無茶はダメですよ」と、風巻。


「せんぱい、邪心の集合体を絶対に砕きましょう」と、空。


 マイペースな空が、珍しく燃えている。


「頑張れよ!」「疲れた時は俺たちに任せろ!」「とっとと倒しちまおうぜ」と、男三人。


「さぁ、時間は有限だ。これくらいにしておこう。新月君、陽と――、いや、皆を頼むぞ」


 何かを言い淀む理事長に、頷きを返す。このシーンはいつもこんな感じなんだけど、理事長がいまいち何を言おうとしているかわからない。


「俺たちが絶対に邪心の集合体を砕きます。砕魔学園は、俺たちの青春がつまった場所です。ここで学んだこと、経験したこと、全て

をかけて邪心に挑みます。終わったら、打ち上げでもしましょう」


 少し恥ずかしいが、こういったセリフを発すると他のキャラが違和感なく応じてくれる。まるで生身の人間と話しているかのようだ。


「頼んだぞ!」

「無理するなよ、後ろにもこれだけの人間が揃ってるんだ」

「必ず帰ってこい」

「打ち上げの準備は任せろ!」


 皆からの声援に背中を押され、陽、美海、花城先生、風巻、空と共に大穴へと踏み込む。

 大穴は、生者を拒絶するかのように瘴気を撒き散らしている。特に影響はないが、常に悪寒を感じるというか、背筋がゾクゾクしてしまう。ゲームで味わうには不快な感覚だよなぁ……と思いながら、先へと進む。

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