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砕魔学園にかける青春  作者: 木々 杯
砕魔学園にかける青春2
31/127

31 ダイコクビョウ

 ぴしり。


 大勢の生徒が動き出したからだろうか。あるいは小規模な地震でもあったのか。ダンジョンが軋むような音が聞こえた。多分、意識していなければ聞き逃してしまうような、微かな音だった。

 剥がれかけた札が微かに揺れ、落ちた。

 その瞬間、大広間の空気が変わった。

 魔の気配が濃くなり、満ちる。

 俺は必死に記憶を探った。この隠しイベントで復活するのは、ダイコクビョウ。太陽やイリヤがここへ来るまでに戦ったという、コクビョウがさらに強くなった魔である。

 ダンジョンの最初に出てくる魔が多少強化されたところでたかが知れている――そう考えるのは大いに間違っている。

 コクビョウをはるかに上回る素早さに加え、力も大幅にアップしている。ゲームでのコクビョウは、素早さは高いが力はほとんどないので、攻撃されてもダメージはほとんどなかった。攻撃の瞬間を狙ってカウンターで攻撃を叩き込めば、簡単に倒せた。太陽やイリヤの様子から見ても、この世界でも弱い魔だという認識は変わらないだろう。

 しかし、ダイコクビョウの攻撃は痛いでは済まない。ある程度育った主人公でも、攻撃を受ければごっそりとHPを持っていかれた。まだ駆け出しの俺たちが攻撃を受ければ……命を落としかねない。

 何が起きたのか、気がついているものはまだいない。ただ、突然雰囲気が変わったことに戸惑っているものが多数である。

 このことを先生達に伝えなければ。しかし、なんと伝えればいいんだ? ダイコクビョウが出現します、などと言えば、なぜそんなことが分かるのかと不審に思われかねないし、すぐに信じてもらえるとも限らない。

 くそ、焦るな。ダイコクビョウの初期出現位置はどこだった? 確か、剥がした札からそう遠くない場所に現れ、気を抜いていると奇襲されたような気がする。

 振り向くと、黒いモヤが形を作っているのが見えた。あれがダイコクビョウになると見て良さそうだ。

「なっ……」

 マズイ! 顕現しつつあるダイコクビョウのすぐ前に、背を向けた女子生徒がいる。

「あぶない!」

「えっ? えっ?」

 状況は伝わらず、その女子生徒はオロオロしている。

 俺はそちらに向けて駆け出した。

「満月!?」

 背中に太陽の声が届いた。だが、今は反応している余裕がない。

 ダイコクビョウがその姿を現した。


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