バーコードとデフ交換
この話の中に出てくる四方という教官は、「傷つき狐 迷いウサギと出会う」等の他作品の中で、唯花や沙織が教習を受けた事のある教官です。
当該の話を読んだことのある方はニヤニヤできる設定です。
週が明けた。
来週からは、部はテスト休みになるからね。だから、今週中に終わらせる作業は終わらせようね。
まずは確認なんだけど、GTEの床の件の進捗は?
タンクを降ろしてみたら、やっぱり、タンクの上の床も、結構サビが回ってたから、グラインダーで削って、サビ止めを床全体に塗布したところだって?
じゃぁ、今週中に、アーム類の取り付けと、足回り取り付け、出来ればブレーキ関係のオーバーホールと、いきたいところだね。
そして、テスト明けすぐに、ジムカーナ大会があるから、出場は私と柚月だけど、みんなも、応援と見学に行って貰うことになってるからね。
その日は、課外授業という扱いでの出席になるって、水野から、各担任には話がいってるから、安心して出席してね。
それじゃ、各自、活動開始だよ!
それじゃ、3年生は、優子がサビ取り班の監督で、他は全員、悠梨のR33のデフ交換だよ。
今回は、LSD付きのデフを、デフケースごと交換するんだね。規模としては、結構大がかりだけど、ミッションに比べれば難易度は低いって?
いや、普通の車に乗ってる人は、ミッションやデフを交換する機会なんて、ないって、だから、その尺度の話し方をされても、私の心には響かないなぁ……。
まず、ジャッキアップ作業からだね。
地下整備スペースは、今、GTEが入っちゃってるから、こっちでしか、整備できないんだよね。
え? そんなこと言ったら、世の大半のプライベーターは、もっと劣悪な場所で整備してるんだって?
そういう、一般語じゃない横文字使われても、意味が分からないし、そもそも、文句あるなら、駐車場で作業して貰っても良いし。
なに? 横暴だって? 何、言ってるのよ。部長の慈悲で、作業させてあげてるのに、それに胡坐をかいて、私を批判しようっての?
そうそう、そうやって素直に謝って、反省すればいいのよ。
さて、作業再開で、今回は、デフだから、後ろだけ上げればいいんだよね。
でもって、サイドブレーキがかかる後ろだけ上げると、サイドブレーキが効かなくなっちゃうから、前輪に輪留め……と。
今回は、ミッションジャッキが無いから、普通のフロアジャッキで支えるしかないね。
最初に、デフの後部のナットを2ヶ所外すのか。結衣ー、柚月ー、頑張れー!
なんで、私も行かないのかって? 今回は、ジャッキアップだからさ、寝転がると2人が限界なんだよ。よって、私は雑用兼、ジャッキ係。
同時に、柚月が、後輪に動力を伝達するプロペラシャフトと、デフを分離にかかったね。
「マイ~、サイドブレーキ解除して~」
ホイ!
「よし! またサイド引いて~」
ホイ!
これって何の意味があるの?
あぁ、プロペラシャフトは、4本のボルトナットで留まってるんだけど、2本ずつ床の上の方に隠れちゃってるから、シャフトを回転させるために、サイドブレーキを解除するんだって。
ちなみに、もう1度サイドを引いたのは、ボルトを緩める時に、シャフトが回転すると、力が抜けて、やり辛くなるからなんだって。
あ、ハイハイ、もう1回サイドを解除ね。
さて、次は左右にあるドライブシャフトと、デフケースを切り離すよ。
作業自体は、ボルトナット外すだけで簡単なんだけど、問題は、左側の接合部が、マフラーの陰に隠れてるから、ちょっと作業がやり辛いところだね。
マフラー外すとさ、作業はやりやすくなるけど、面倒臭いじゃん、しかも、ネジがサビ付いてて、絶対一筋縄じゃいかないじゃん! だから、今回は外さずに、ソケットレンチの延長を使うことにしたんだよ。
よし、外れたね。
やっぱり、左側は大変だったけど、でも、難易度的には、そんなに最凶って訳でもないからね。
そして最後は、下からジャッキで支えながら、デフキャリアをネジ2ヶ所で外す……と、よし! 外れたね。
よーし、ゆっくりジャッキを引いていって、これが純正のデフか、って、機械式LSD付きのデフと、外観は変わらないんだね。
要は、このデフケースはそのままに、中身を入れ替えてるって事なんだね。うん、面白いね。
うーん……見た目の小ささに騙されたけど、デフって結構重いんだね、1人で持ち上げて移動させるのは、さすがに骨だよ……って、優子、ありがと。
え? 雑談なんだけど、教習所の教官で、四方って人を知ってるかって?
あぁ、知ってるよ、あのバーコードでしょ。あいつ、マジでウザかったよね。
『確認動作が、中途半端なんだよ! やる気あるのかね』
とか、言っちゃってさ、みんな嫌いだったよ。
で、どうしたの優子、あいつにセクハラでもされたの? だったらさ、訴えて、やめさせちゃおうぜ、あんな奴。
えーー! あいつ、異動になったから、優子は、1回しか当たらなかったの? マジー?
なに? あいつは、元々、山向こうにある、隣の県の教習所の教官だったんだけど、2年前に、そこが閉鎖になって、こっちに来てたのか。
なんでも、その閉鎖されてた教習所が、リニューアルオープンするから、呼び戻されたんだって?
優子が、1回だけ当たった時も、ガチでニコニコしながら、坂道発進をミスって、ブレーキ3回踏まれたのに、何も言わずにハンコくれたんだって?
マジかよー、差別だよー、あの、クソバーコードめー! ちょっと、どう思うよ、みんなー。
「マジ~、優子だけ、ズルいんですけど~!」
「いや、優子というより、バーコードの方が問題だろ。あいつさ、私らには、ビシバシ文句言ってたくせにさ、最後だけ大盤振る舞いとか、あり得なくね?」
柚月と結衣が、次々に罵る中で、優子が、言い辛そうに
「でね~、そのリニューアルした教習所が、超お洒落な施設になったんだって。有名なカフェとか、凄いゆったりしたラウンジとかあってさ、楽しめるらしいんだけどさ、行かない? 四方教官から、人数分、招待券貰ったんだよ」
と言った。
う~ん、でもって、教習所でしょ?
そんな、山奥の教習所なんて行って、どうするんだよー。ねぇ、みんな?
「そうだよ~、それに、もし、バーコードに会ったらどうするんだよ~」
「そうだね、私も、会いたくないかな?」
柚月と結衣も同調して言って、優子の表情が暗くなった。
その時、背後から、悠梨が言った。
「いや、じゃぁ、私だけ優子と行こうかな?」
「えっ!?」
私たち3人が同時に言った。
「ホラ、見てみ、カフェも、渋谷とかにある、行列できてる店だし、アミューズメントも併設されてるしさ、それに、ファストファッションの店まであるしさ」
私は、悠梨から案内を見せられて、よく読むと、ホントだ。
カフェって、雑誌とかで紹介されてる、都内のイケてる所にしかないお店だし、ファストファッションのお店も、確か、まだ都内にしか出店してないお店だし、ちょっと興味をそそられてしまった。
どうしよう?
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