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臆病者と室内作業

 月曜日の放課後、車庫証明は滞りなくあがっていたので、警察署に柚月と行って受領してきたよ。

 やっぱり、警察署の交通課に、私らがいると目立つよね。まるで交通違反した女子高生みたいで、ちょっと嫌なんだけどさ。違うしね。

 そして、受付のおじさんは、今日も感心したような表情だったよ。


 「部活動ご苦労さま」


 って、言われたから、ちょっとホッとしたし、嬉しかったかな。

 このままだと、私らさ、傍から見たら違反者にしか見えないからね。


 その足で出張所に行って、仮ナンバーだよ。どうやら、正式名称は、臨時運行許可って言うんだね。

 自賠責の証明書を見て、内容を書き写して、運行期間と、経路、運行の目的を記載して、運転する人間の名前と免許か、柚月、早く書いて免許と一緒に出すの!


 「うぅ~、マイの悪徳部長~、サディスト」


 何言ってんのよ、このままだと、柚月さ、部に何も貢献してない、名前だけ副部長っていう、役立たずの代表格みたいになるんだよ。そんな扱いでいいわけ?

 そうなったらさ、柚月は、ウチの部では不要な豚だから、マゾヒスト部に移籍して貰うからね。


 「分かったよぉ~」


 そうそう、さっさと書く。

 しばらく待った後で、呼ばれて申請書類と、プレートを受け取ってきたよ。このプレートを前後に取り付けて、申請書の裏は期間が書かれた証明書になっているから、運行する時は、必ず見やすいところに掲示しておく事……と。

 それと、750円を払って、領収書を貰ってくると。


 よし、これで、事前の手続き関係は終わりだね。

 私は、柚月を自分のR32の助手席に乗せると、学校に向けて走り出した。


 「マイ~、ユーザー車検って、どんなことするんだろうね~?」


 柚月は、不安そうな表情で、私に訊いてきた。

 分かってるよ、柚月はなんのかんの言って、肝心なところは、私にやって貰おうとするんだよ。それは子供の頃からじゃん。


 幼稚園生の頃、小学生と揉めた時も、柚月は、散々、相手を挑発するだけしておいて、いざとなったら、私の背中に隠れたんだよ。お陰で、私が小学生2人を相手にするハメになってさ、大変だったんだから。

 中学生の頃、塾に入った時も、柚月は事前に散々、ここがおススメだ、とか言って、みんなを誘っておきながら、初回の授業の日に、お腹が痛いとか仮病を使って休もうとして、私と優子に引きずられて行ってたしね。


 「そんなの、やってみなきゃ分からないでしょ。ググって、調べてみればいいじゃん」


 私が2速に落とすと同時に言うと、柚月は唇を噛みながら言った。


 「うぅ~、調べたって、陸事によって裁量が変わってくるから、同じじゃないんだよ~、マイの意地悪、サディスト!」


 そんなこと言われたって、最初にやる時は、誰もが初めてなの! 初めてを恐れていては、飛行機も飛ばなければ、船も海を渡らないんだよ。


 「だって~」


 だっても、ヘチマもないでしょ、柚月が、そんなこと言ってる姿を見て、優子が頑張ろう、って気になるとでも思ってるの? 少し柚月は、みんなの事も考えようよ。


 「分かったよ~」


 もう、ホントに柚月は、幼稚園の頃から変わってないんだから。

 まぁ、これ以上言っても、落ち込むだけだから、取り敢えず、こんなもんにしておいて、学校に戻ってきた。


 ガレージに戻ると、GTEは完全にショックを外されて、一部アームも外されている状態だったよ。結構作業捗ってるね。

 シルビアは、優子と悠梨が、ライトの光軸を合わせてるみたいだね。


 「あ、マイ、柚月、ちょうど良いところに戻ってきた」


 優子が、私たちの姿を見ると、顔を上げて嬉しそうに言った。

 あぁ、優子、悪いんだけどさ、私らも手伝おうにも、書類の整理とかがあって、優子の作業のアシストに回れないよ……って、そんな悲しそうな顔されても、無理なものは無理だからね……ねぇ、柚月?

 え? ここは無理でも、室内作業はやって欲しいって? 取り敢えず、書類作業優先で、いいでしょ。


 まずは、無くすと困るから、仮ナンバーを先もって、しっかりつけておこう。

 あのさ、なんでこのプレート、穴の数が4つもあるの? これで、軽から大型までの、全部のサイズの車が使うから、穴の数をマルチにしてるんだって?

 なるほどね、取り敢えずしっかりとネジで留めて……と、どうしたの柚月? 前側って、そんなにネジが固かった? 昔、仮ナンを走行中に落として、市役所と警察に届けを出した人がいて、その人が、次はそれを踏まえて、落ちないようにきつく締めたら、今度は外れなくなって、ディーラーに駆け込んだらしいから、ちょうどな塩梅を探ってるんだって?

 大丈夫だよ、普通に締めてれば。……きっとね。


 よし、あとは書類をまとめて、グローブボックスに入れておけばOKだね……って、もう終わっちゃったね。

 じゃぁ、室内作業に、って言っても、エアコンのところのパネル交換くらいしか、やる事なくね? って、なにこの箱? そして、ハンドルまである。

 すると、その様子を見た優子が言った。


 「水野から、訊いてないの? 2人が出て行った直後、解体屋さんが、シルビア用のステアリングと、GTE用のアームとか、ショックまで持ってきたんだよ。そして、水野が、その箱の中の物もつけておいてくれって」


 私は、箱の中身を見て、少し驚いた。

 そこには、長い配線類と共に、大きなオーディオのようなものが入っていたんだよ。いや、よく見ると、前面のパネルに、ほとんどボタンが無くて、大きなモニターのようになっているこれって、ナビだよね。


 凄いよ柚月、これナビだよ。なんでこの車に? そうか、校外に乗っていく車だから、道に迷ったりしないようにか。

 よし、じゃぁ、早速カード入れと一緒につけちゃおう。


 えーと、まずはシフトノブを外して、シフト周りの内装は、爪で止まっているので外す……と、今度はエアコンの吹出口付近は、解体屋さんでもやったように、留まってるだけなので、外すと、取付金具をネジ4本で外して、ナビ本体を金具に固定する……と、でも、思うんだけどさ、オーディオ系の脇のネジ穴って、なんであんなに沢山空いてるんだろうね?

 メーカーや車種によって、違うから、それらに幅広く適合させるためだって? だから、それのせいで、ややこしくて取り付け辛いんだって、4ヶ所合わせようとすると、物凄く大変だし、合った、と思って、取り付けようとすると、思い切り出っ張ってたりとかしててさ、マジで大変なんだからって。

 配線は、基本はオーディオと同じだね。ただ、妙に長い配線が2本あって、それの先には、スピードとバックって書いてある。


 「スピードは~、コンピューター配線の中にあるし~、バックは~、トランクの中のバックランプ配線から取るのが一般的かな~」


 よし、じゃぁ、それらは助手席の足元の方へと、出しておいて、取り付ける前に、GPSセンサーを接続しておく……と。この余ったコネクターは? え? テレビのアンテナ線? でもって、アンテナなんて、箱の中に入ってないし、そもそも、車の中でテレビなんて見ないでしょ。よって、接続しませんっと。


 そして、バッテリーのマイナス端子が外れてる間に、ハンドルも交換しちゃおう。柚月、チョロッとやっちゃってよ。

 まずは、キーが抜けてることを確認して、ハンドルを左右に回してロックさせる。そして、ハンドルの裏側2ヶ所にある、蓋を内装外しで外して、そこに隠れてるボルトを緩める……んだけど、このボルト、トルクスって言って、特殊な形したネジ山だから、専用のレンチで緩めて取り外す。

 すると、ハンドルの前側のカバーが外れるから、ハーネスを取り外して、今度は現れるナットを、タイヤレンチで緩めておく。

 ここで注意点は、全部外しちゃうと、急にハンドルが抜けて来た時に、顔にハンドルがぶち当たって、鼻の骨が折れたりするから、緩めておいて、最後の2~3山、ナットが噛んだ状態にしておくこと。


 そして、ハンドルは、スプラインに噛んでいるので、上下左右に振りながら、少しずつ、そして力一杯前に抜いていく……と

 “ガコッ”

 ハンドルが抜けてきたよぉ……。よし、今度は後期型用を、逆の要領で取り付けていこう。


◇◆◇◆◇


 よし、ハンドルの取り付けも終わったので、バッテリーのマイナス端子を繋いでみよう。……どうだ。


 よし、ナビの方は画面がロードしてきてるので、大丈夫そうだね。柚月のハンドルの方は? センターも出て真っ直ぐだし、クラクションや、ウインカーの戻りも大丈夫そうなので、OKだって?

 じゃぁ、あとはナビ本体を取り付けて、最後の配線は明日に回しますか。

 お読み頂きありがとうございます。


 【評価、ブックマーク】数が、毎日伸びていっております。大変感謝です。

 皆様の応援が、モチベーションアップに繋がります。反応を見るたび、やる気がみなぎってきます。

 今後も、よろしくお願いします。


 次回は

 遂に、本丸の検査登録事務所に乗り込みます。

 お楽しみに。

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