序章 ー異世界転生ー
カタカタカタカタ…
カタカタカタカタカタ…
「ふう、もう少しで一段落着きそうだな…」
俺の名前は田沢慎吾、今年で30の大台を突破したブラック会社のプログラマーだ。
昔はミュージシャンを夢見てバンド活動をしていたが、時代の波には逆らえず就職しブラック企業でこき使われている。
「3日で20ページあるWebサイトを作ってくれとか、正気か…?しかも人員は俺一人…」
既に2徹目に突入し、机の片隅にはエナジードリンクの山が積み上がっている。
「もう何でも良いから…早く完成させて…寝たい……」
就業時間や終電はとっくに過ぎ去っており、部屋には自分以外いない。
今はただただ独り言を呟きながら、眠気と戦いつつ作業を進めている。
「しかも入社してからずっとこんな感じだ…これで俺が死んだらどうするんだ?いやいっそ死んだ方がブラック会社が潰れて世界が平和になるかもしれないな、ハハハッ…」
徹夜続きの作業を何度も何度も命令され、もうほとんど自暴自棄状態である。
「っと、そんな冗談を言っている暇があったらさっさと完成させないとな…」
「…ってあれ?おかしいな…何だ?手が動かない……」
(やべぇ、変なフラグ…建てなきゃ…よかっ……た……)