表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

不審な奴。それこそ、うどんモンスターッ!

 出てきた場所は草原だった。

 知らない場所なのもあって、転移されたというのは間違いないとは感じたが、見ず知らずの大地に強制連行されたというだけだととても困る。

 アフターケアみたいなものは一切ない。

 食材だけ渡されてあとはセルフサービスにすらならないくらい雑な移動を強いられてしまった。

 ……あぁ、面倒だ。

 適当に街道を歩いていこう、そう思った矢先だった。


「うどうどうど、ここから先にゃ通さねえでござんすよ!」


 やたら特徴的な声の怪物が現れた。

 腕は麺、身体はきゅうり。顔には目があるが謎すぎる。


「誰だお前は」

「うどんモンスター、一味のきゅうりうどんなりや!」


 とりあえずよくわからない魔物なのはわかった。


「邪魔なんだが」

「うどうどうど……まさかそう簡単に通すと思いきやかね? ここを通すなと魔王様に言われたでござんすよっ」

「……は?」


 唐突に妨害されるのは幸先が悪い。


「お前は勇者ドン・ユーだろう?」

「ユーという名前なのは間違いないが」


 一応現実世界ではユーという名前で言われていることは多かった。

 その名前で呼ばれるならば仕方がない。素直に受け止めることにする。


「人違いでなければ、お前が勇者。いざ覚悟なり!」


 受け答えをしていたら唐突に襲われた。

 うどんの手をしなる鞭のように扱ってくる。

 避けるのは簡単だが、麺が汚れていく。


「避けるなぁ!」

「痛そうなら避ける、それだけにすぎんよ」


 繰り返し避ける。

 あぁ、麺が汚れていく。

 ぐちゃぐちゃに、美味しそうだった麺が台無しになっていく。


「うどどッ! 煩わしい勇者めっ!」


 イライラしてか手を振り回す。

 そのたびに麺が汚れる。何度も汚れる。

 泥にまみれた麺を見るのはいたたまれない。

 麺が苦しそうだ。

 そして、これはうどんに対する冒涜だ。

 許せない。

 許すわけにはいかない。


「なぁ、ひとつ言っていいか?」

「あぁ!? 言ってみぃ!?」

「……では言うぞ」


 全力で近づいて、きゅうりのどてっぱらに一発を加える。

 そろそろ、堪忍袋の緒が切れた。


「麺を汚すとかいうむかつく行為をするんじゃねえよマヌケがッ! 貴様は美味な食感が失われていく不幸を感じたことがないのか?」


 表面がざらざらしているからきゅうりは素手で触るとそれなりに痛い。

 が、そんなものはどうでもいい。

 いまぐつぐつと湧き上がる怒りが私の掌にあるからだ。

 よくも私の目の前で、うどんを台無しにしてくれた。

 たかがうどん、などと言われようが私は断じて許すつもりはないッ!


「ひ、ひぃッ」


 うどんモンスターは怯えている。

 追撃も容易そうだ。

 だが。


「まずは川で手を洗え。それくらいはできるだろう?」

「は、はひ」


 ちょうど視野が広まったタイミングで川を見かけた。

 そこでどうにかあの手の麺を洗わせよう。そう思った。

 せめて、綺麗な麺にしてやりたかったのだ。

 ……だが。


「生意気な勇者め、ちょっと気を緩めたからと言って一味、きゅうりうどんを舐めるなァ!」


 先ほどのまでの媚びた態度は演技だったらしい。

 反転して、とびかかって襲い掛かってきた。


「うどんは舐めるもんじゃねぇだろうがァ!」


 こうなれば強硬手段。

 そのままもう一度どてっぱらに一撃を加えて、川へと突き飛ばした。


「めしてろッ!」


 すると、吹き飛んだ一味きゅうりうどんが光と共に消滅し、なんときゅうりとうどんを落としてきた。うどんはきっちり包装されている。


「はぁ、きゅうりうどんはシャキシャキした食感のきゅうりと一緒に味わううどんのおいしさが素晴らしいというのにあの青二才は何もわかってない。なにがうどうどうどだ、あれじゃあうどん怪人どころか独活の大木だろうが……」


 ふつふつと怒りは沸いてくるけれども、落とした具材はそれなりに使えそうだ。ひとつひとつ拾っていく。


「あ、あの! 勇者様ですよねっ?」


 川で具材を拾う作業をしていたら、またいきなり話しかけられた。

 黒髪の大人しそうな少女。彼女は怪しい存在ではなさそうだ。


「勇者ドン・ユーなら私だと思うが」

「やはり……! 貴女はこの世界のうどんモンスターを退治しにやってきてくれたのですね!」

「……必然的にそうなる」


 強引に連れられただけではあるけれども。


「よかった! あの、家まで案内しますのでしばらく同行をお願いしても」

「あぁ、構わない」


 宿がとれるならありがたい。そう思い彼女の言葉に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ