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うどんと共に訪れたエピローグ

「この世界を脅かしていた、諸悪の根源を無事に倒しましたね」


 意識を遠ざけていたら、異世界に到達した時と同じ景色の空間へと運ばれていた。

 目の前にはやる気のなさそうな女神がいる。


「うどんに対する風評被害が見逃せなかっただけだ」


「まぁ……撃破してくれたならば、理由はなんでもいいですよ。お疲れさまでした」


 随分いい加減な受け応えだ。

 転移してもらった時もそうだったが、それで女神だっていうのだから驚きだ。


「で、どうします? 帰ります?」


「今はまだ帰らないという選択がとれるなら、そうしたい」


「へえ、気でも変わったんです?」


 なんだか上から目線なのがじわじわくる。

 だが、考えないことにする。


「あの世界にいる『七味』と一緒に食事がとりたくなったからな」


「ふむ、美味しいご飯が食べたいと」


「ご飯ではない、うどんだ」


「はいはい」


 やれやれという感覚で納得された。

 まぁいい。うどんはわたしのポリシーなのだから。


「まぁ、世界を救ってくれたのは事実ですので、あっち側の方も話を付けときますよ。帰りたければいつでも帰れるようにしときます。まぁ気軽に行ったり来たり出来るかんじでいいですよね」


「ありがたい」


 そうなるなら後は気にすることはない。


「では、いい夕食を」


 そう言って女神は遠くへと帰っていった。








 奇有利混沌との闘いに終止符が付いた夜。

 女神との夢らしい世界での会話を終えた私は再びベットから上体を起こした。

 やはり身体の節々が痛い。

 だが、それとなく回復はしてくれたみたいで、問題なく身体は動かせる。


「お疲れさまっ」


 ドットが真っ先に声をかけてくれた。


「うどんの準備は」


 お腹が空いてきたからか、真っ先に思い浮かんだ言葉はそれだった。


「いま準備中。今日の夕飯は『七味』の皆と食べる形になるけど、いいよね」


「勿論構わない」


 身体を動かして、食卓に赴く。


「リベンジしたい奴が何人もいてね、ちょっとテンション高いかも」


「しばらくは戻るつもりはないから、挑戦するのは構わない」


「そっか。みんな喜ぶと思うよ」


 拳を交えて、仲良くなって、一緒に食事を味わう。

 そんな日常の光景を夢見ている。


「おせーぞ! もう少しで麺が伸びるところだったかもしれねえぞ!」

「ぶっかけうどんちゃん、しっかり作り立てをみんなに渡してるから大丈夫だって……」


 うどんを通じて繋がる思い。

 くだらないかもしれないけれど、大切で。


「一味くん、そういえば君は、きゅうりうどんが食べたいと言ってましたね。あれはどうなったのか聞いてみたかったのです」

「あぁあれは、あの変な怪物に持ってかれた。新鮮なきゅうりと一緒にな。多分、もう勇者が食っちまったと思う」

「なんと」

「あれは一味焼きうどんの買ったきゅうりだったのか……」


 些細な会話から笑顔があふれる。

 一緒に味わうことによって会話が産まれる。


「長期戦闘していたとはいえ、妾はちと不甲斐なかったのぉ」

「まだヒーローらしく精進するしかないなッ!」

「妾はヒーローになどなりとうない。おしとやかなレディーでありたいのじゃ」


 このひとときを守る為に、私は拳を鍛えていた。


「……さぁ、食べようか。今日のうどんは特別製だぞ」

「ユーちゃん、座ろっか!」

「あぁ」


 大切な日常を守る力はうどんと共にある。

 爆発から始まった妙な戦いだったけれども、こんな結末も悪くないと思った。


「いただきますっ!」


 これからは笑顔で食事ができる時間を堪能してゆけるのならば。

 きっと、充実した日々が続いていくはずだ。

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