前触れもなく訪れるプロローグ
うどんは美味しい。
その事実は私の中で、どうやっても覆されない事実である。
まず、もちもち食感がたまらない。こしが入ったうどんは、それだけで芸術的だ。
さらにうどん汁のおいしさ。これも欠かせない。人間が水を飲まなければ死んでしまうように、うどんの味のを殺さないようにする為に、間違いなく必要なものだ。
かまぼこなどもトッピングも忘れてはいけない。素うどんも問題なく美味しいが、ひとつトッピングを加えるだけで、大きく味は変化するのだ。
体調が悪い時にもうどんは美味しいし、いい時だってうどんは美味しい。
うどんは究極。
うどんは至高。
そう、うどんは素晴らしい食べ物だ。
「……ついに来た、自家製うどん完成の時ッ!」
丼に用意されたうどんそのものが光輝いて見える。
あぁ、素晴らしい。今日のうどんは特別製だ。
そう、うどん好きな私は作成したのだ。究極のうどんを。
一から百まで麺を叩いてコシを入れた。
汁も完璧な仕上がりになるまで調整を加えた。
ネギだって畑で育て上げた。
油揚げも抜かりなし。
当然、かまぼこだって用意した。
完璧にして究極、そして無敵のうどん。
私の為のだけのうどん。
素晴らしいうどんが私の前にあるのだ。
涎が垂れる。
待ち望んでいたうどん。
自身の力量を持って作ったそれを、じっくりと味わおうと決心する。
「では、いただきますっ」
プロの舌を持って食事をしようとしたその時だった。
「なにっ……!?」
一本の麺を食べた瞬間だった。
うどんが光を放った。
誇張表現などではない。
輝きを放っている。
「これはどういうことだ……!?」
だが、それでへこたれていては食感を楽しめない。
食す。
ただ、うどんを食す。
「うまいッ!」
最高の味。
しっかりとした噛み応え。料理人の味。
噛み応え抜群のうどんの麺に、しっかりと味が加わる汁の味。
ネギは新鮮な味を届けては幸せを運ぶ。
かまぼこは、その柔らかい感触で、麺とは違う食感のアクセントを覚えさせる。
……良好。
だが、うどんの輝きは収まることを知らない。
「この輝きに意味があるかなどわからないが、輝きを持っているというのは美味しさの証明。ならばッ」
より一層気合を入れて姿勢を整える。
「味わい尽くしてくれるッ!」
箸を進める速度を上げて、しっかりよく味わいながらペースを上げる。
やけ食いではない。
ひとつひとつ丁寧に味わい、飲み込み、食を堪能する。
どんな妨害があったとしても、それがうどんを途中で諦める理由にはならないのだ。
食べる。
飲み込む。
美味だと感じる。
「なんだとっ……!」
うどんから放たれる光が私を包み込む。
食に集中して、気が付いていなかったが、光が広がっているようだ。
家全体に広がって覆いかぶさる。
このままではうどんが見えない。
……だが。
それでも。
「味わい尽くすと言っただろうッ!」
喰うか喰われるか。
私は、喰う。
何がなんでも喰う。
私の日常はうどんと共にあるのだ。
うどんを全て平らげ、トンと丼を置く。
決着だ。
「ごちそうさまでしたッ!」
満たされた幸福を感じ、光の中、食べ物への敬意をこめて両手を合わせた。
……その瞬間だった。
うどんから広がった光が、爆発したのは。




