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6話



京都天之川高校。


まあ、何処にでもある高校だ。


そして2-2が俺とお嬢のクラスである。


しかし、俺とお嬢は学内で話す事もない。俺は窓側の一番後ろの席で座ったまま、窓ガラスから見えるお嬢を確認する。流石はお嬢、クラスメイトだけではなく他のクラスからも人気者だ。俺は特に本を読むくらいしかない。


……と、いうか友達、居ないんですけどねぇ。中学の時は居たんだけど。



「なぁなぁっ!『Moster Onlie』やったか!?」


「おぉ!あれめっちゃ完成度たけぇよな!」


「敵に当たったらやべえけど……戦慄感すげぇよな!」


「『Hunter Onlie』だけどすげえよこれも。中々レベル上がらないけどな」


「けど、NPCや建物とかめちゃくちゃ凝ってるし!探索してるだけでもリアル過ぎて徹夜しちまったよ」



ほう……意外にもこのクラスにもプレイヤーが。話を聞いているが、レベルは5とか15位だとか。何故低いかは、最初に生れたて場所がバカ強いモンスターが徘徊しているらしい。それを一々逃げながら他の雑魚モンスターを倒してレベルは大変だとか。が、一度倒せばそこそこレベルが上がるらしい。加えてバカ強いモンスターから障害物とか使って逃げられるので、それはそれでホラーゲーム見たく面白いらしいね。加えて持続的に逃げたり隠れたりすると経験値も少量だが得られるとか。初めて知ったわ、それ。



「(おっと)」



さてさて、担任が来ました。


実は今日って……入学式なんですよねぇ。しかも外は桜で舞っています。今さらですけどごめんね?説明不足で。


と、いうことで入学式でございます。


無論、在校生代表は我が校のマドンナであるお嬢───夜桜麗華様ではない。生徒会長であるお嬢の次に男子から人気のある人物だ。まあ、これは安定だ安定。そして新入生達がざわつくよ。殆どが野郎共であり、お目目がハートだ……うん。


そして新入生代表挨拶が───ぉ?女……じゃ、ないな。制服が男のだから男だな。紛らわしい。次は二・三年の女子達がざわざわしているよ……。


いいなぁ……美形とか、ちょーウラヤマー。


あ、でもその新入生の中には我が天使の弟がいるからな。正直、可愛さで言えばその新入生代表よりも上だぜ!自慢の弟だからなっ!


名前は……椎名(しいな)陸翔(りくと)か。何やら同じクラスメイトが「椎名さんの弟さんだっ!」とか言ってるな。どうやら二年にあの子の姉がいるらしい。知らないけど。


そうこう考えていると11:00になっていた。


入学式は終了し、午前中に授業は終わる。授業と言っても提出物を出したり、今年度の授業の説明とかそういうので直ぐ終わった。母さんと弟は一緒に帰ってるからな。


さあ、これで終わり!───と、いう訳にはいかない。


何を隠そう、俺は生徒会の雑用係りである。


雑用係りである!


まあ、理由はあってね。お嬢は生徒会書記である。しかし、それだけなら外から見守る位でいいのだが……お嬢に頼ませて雑用を任されたのだ。何故俺なのか……要は力仕事をしてほしいだけなんだよ。別にお嬢の護衛が出来るなら構わないので了承している。



「太田」


「あぁ」



お嬢に呼ばれて大人しく従者として着いていく。そのせいで賑わっていたクラスが、シーンっとしてしまう。


……なんだろうね。別に俺立ち上がっただけじゃん。


───ハッ!?これが……い、じ、め?


ふんっ!そんなの、俺の精神には効かぬ!!!


気にしナーイ気にしナーイ♪


でも、お嬢にまで被害が出ると考えると……困るなぁ。けれども対処するのも面倒だし、ダルいし……。状況が悪化してから考えるか。あ、この考えが一番だめなのかー。


まっ、とりあお嬢に着いていくのが先決である。


さぁっ、行こう!!!


我が主の元へ!!!



────あ、ごんなさいごんなさい。一度言ってみたい台詞だったんです……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




太田太が夜桜麗華と共に生徒会室に向かった後、静まり返っていた2-2の教室は漸くして静寂が消えていく。一人の男子生徒がはぁ、と気が抜けたかの様にポツリ呟いた。



「……めちゃ、こえぇよ太田」



誰もが同意する事であった。


身長194㎝であり、加えてガッチリとした身体を持つ武闘家の様な大男。その肉体は制服の上からでもわかる程のしなやかな筋肉は、アスリートよりも凄まじいもの。だが、ボディービルダーには遠くに及ばない。けれどもしっかりと絞られた無駄のない筋肉は男女問わず、高校生離れした彼に最初は誰でも引いてしまうのは仕方がないものなのだ。



「けど……全然怖がらないよな、夜桜さん」


「いい人なのはわかるんだけど……その」


「厳ついのよね、太田くん」



太田は別にいじめられていた、とかではなく単に恐れられていたのだ。だからと言って太田は悪い奴、とかのイメージは意外な事に思われていなかった。



「頼れる存在だけどさ……」


「重いもの、直ぐ持ってくれるよね……」


「一度でいいから……あの腕、触ってみたい」



「「「わかるーーー」」」



筋肉フェチからすれば太田の身体は中々いいらしい。しかし、声をかけて振り向けば女子は怖がってしまい結局は「何でもありません」で終わってしまうのだ。


少しの間だったが、2-2の教室では太田の話題で盛り上がるのであった。けれども、太田がカッコいいとか、好きとかそういう恋愛に関しては全くないのは必然であった……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




……何だ、凄く悲しい事を言われた気が?



「太田、どうしたの?」


「何でもありません」



現在、私太田太は生徒会の雑用を終えてお嬢と共に帰宅し屋敷の前に到着したばかりだ。玄関前にはバトラーさんをはじめ、使用人達がお迎えをしている。うん、流石は御令嬢様だ。



「本日もお疲れ様です」


「いえ」



俺も急いで屋敷内の制服へと着替える。帰宅してやるべきことは色々あるのだ。例えば屋敷内とか車の掃除だ。今日は16時までそういうことをやっていく。そしてそれを14時までに終わらせてからの屋敷内の掃除だ。


大体勤務日は学校がある日と希に休日のヘルプだ。時間も今日みたいな時間から18時までに。もしお嬢が買い物に行きたいというのであれば変装して(ポディーガード)護衛する。まあ、執事みたいな仕事だから時間は最低21時までとは決まっているのだ。基本は18時とかには帰れるし。


さてさて、そんな事よりも仕事だ仕事♪



「太田さん、これ手伝ってくれませんか?」


「ああ」



任せろっ♪


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「太田君、これ運んでくれるかね?」


「了解した」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「太田ー。すまん、これ運ぶの手伝ってくれ」


「わかった」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「す、すみません。こ、ここは何処ですか。迷ってしまって……」


「案内する。あと、ここは私有地だ」


「ご、ごめんなさいっ!?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ぐへへ……中々金持ちそうな家じゃねぇか」


「行きましょうぜ、アニキッ」



「何のようだ?」


「「!?!?」」


「侵入者、排除する」


「「ふんぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



……うむ。今日も1日頑張ったぞぉぃっ!



「ありがとうございます太田様。最近騒がせていた泥棒を捕まえてくれて。お怪我は?」


「問題ない」



まさかの最近ニュースとかであった連続盗難事件の犯人だったとは……。とりあえず、手刀で気絶させて警察に突き出したけどな。何とかなるもんだ。そして、今日の仕事、しゅーりょー!!!



「明日も、麗華様の事宜しくお願い致します」


「はい」



任された仕事は責任もってやるさ。


時間は18時前。さっさとケーキ屋よって、母さんにプレゼントしよう。そしてゲームがしたいっ!!!それに弟達も待っているだろうからなっ!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「用意出来ているかしら?」


「はい。麗華様。肘掛(Armrest) コントローラー(Controller)とVRヘルメット、VR専用チェア。そして『Moster Onlie』も取り寄せました」


「説明書は?」


「こちらです」


「ありがとう。もう下がっていいわ。あなたも休んで」


「感謝致します」



夜桜麗華の寝室には甘くファンタジーな女の子の部屋に突然機械が設置された事によって異様な風景となっていた。麗華は使用人から渡された説明書を読み終えるとVR専用の椅子に座ってリラックスするように身体を後ろに凭れていた。



「……これを被るのね」



麗華にとっては、実はこれが人生初のゲームなのだ。何故ゲーム初心者がこのVRゲームを取り寄せて今やろうとしているのか。それは太田太が、朝珍しく楽しそうな表情をしていたからだ。太田が楽しそうにしているのは見たことがない。


だからこそ、彼女は興味を抱いたのだ。


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