2話
景色が変わったと思うと、そこは深い森の奥であった。
草木に囲まれており視線は草むらで前が見ない。余りにも大き過ぎる木々に、漸く気づいたのだ。俺の身体が小さいことに。
「……ぇ?」
間抜けな声しか出ない俺。辺りを見渡すが、直ぐ見下ろせば地面である。しかも虫がいるが、サイズが一際多きのだ。キモいったらありゃしない。なので無言で虫から離れると状況を整理することにした。
「えっと……確か、ゲームの説明で、モンスターとして冒険するんだよな。ってことは……俺はモンスターだけど、一体何のモンスター?」
画面にはステータスというウィンドウが載せられている。ウィンドウのマークは(L)と記されていた為、左のコントローラーの一番下にあるLボタンを押すと大きな画面が現れた。
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【ヘヴィ:♂】
【種族:オリジン[ランク:E]】
Lv.1
HP:5/5
MP:0/0
攻撃:5
防御:5
俊敏:6
【スキル】
・なし
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オリジンって、なんぞ?
いや、意味わからん。しかもこれ、俺がどんな姿かわからないぞ?うーん、えぇー?
すると、画面から電子案内板の様なお知らせのメッセージが送られてきた。
《"Monster Online"リリースキャンペーン!!!今から一時間、経験値が3倍ッ!!!※途中ログアウトされた場合は、残った時間は次のログインに引き継がれます》
ほほーぅ。
経験値、3倍か。
よしっ!とりあえず戦おうっ!
さてさて、戦いつつこの"AC"に慣れないと……おっと、近くに兎さんがっ!!!
……何て言うモンスター何だろうか。
よし、今背中向けてもしゃもしゃと草を食べるのに夢中になってる。そろぉり、そろぉり────今だっ!手足無いっぽいから、身体全体でアターックッ!!!
「ギュピッ!?」
後ろから体当たりした為に兎の顔は地面にぶつけてしまう。だが、これはゲームだ。首や腹に向けて全身での体当たりで五回程繰り返すと、兎は突き飛ばされ近くにあった石を頭にぶつけてしまう。ふらふらと身体を起こしたかと思うと、一歩二歩と進んでそのまま倒れてしまった。
……兎の頭から血が出ている。
何だろう。やっちゃいけないことをした感じだ。ゲームなのに……何だ、この罪悪感。かなりリアルだから、凄いヤな感じだ。けど、この兎を殺したのは俺。でも、これは強くなるため……何て考えたら、これが弱肉強食って事なんだろう。
確かにこのグロさと残酷さは【R15】に認定されるか。
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≪Level up!!!≫
【ヘヴィ:♂】
【種族:オリジン[ランク:E]】
Lv.3
HP:13/14
MP:6/6
攻撃:13
防御:12
俊敏:16
【スキル】
・なし
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まあ……こんなものか。
キャンペーン時間は後56分。
とりあえず、ここら辺でレベル上げだな。
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≪Level up!!!≫
【ヘヴィ:♂】
【種族:オリジン[ランク:E]】→〔進化可能:(A)〕
Lv.20
HP:57/78
MP:27/27
攻撃:30
防御:28
俊敏:35
【スキル】
・なし
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何とか、兎だけ狩ってここまでレベルは上がった。
経験値3倍なのに、こんだけとか……本来めっちゃ大変じゃないか?いや、それともモンスターが兎だけだからかな。うーん、兎以外に他のモンスターを倒せば良かったか……。
にしても、ゲームとは言え兎を殺すのは少しキツい。少しだけグロいゲームだが、血とかそういうのが嫌な人はダメだなこれは。こうしていると、何時自分がこんな目に会うかわからないよなー、オー恐い。
で、だ。
〔進化可能(A)〕
確か説明書にはモンスターは進化出来るんだよな。しかも上限は五回。だが、このゲームは進化して終わり、というゲームではないのだ。進化もあるが、退化もある。この退化は更に強くなる為にあるもの。その次の進化はステータス的にも強力になっているらしい。
……まあ、進化しない事には出来ないよな。
さて、ボタンを押して進化先は……?
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〔進化先〕
▼◆ワーグ(R:説明)
◆イーグル
◆シャドースネーク
◆野狐
◆ポイズンスパイダー
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……名前だけでわからないものがあるぞ?
説明見てみようか。
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◆ワーグ[ランク:D]
・狼種モンスター。
・森や渓谷に住まうモンスター。俊敏力が高い。
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◆イグール[ランク:D]
・鳥種モンスター。
・鋭利な嘴と爪を持つ鷲。攻撃が高い。
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◆シャドースネーク[ランク:D]
・竜種モンスター。
・影に紛れて潜む蛇。潜伏スキルを得られる。
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◆野狐[ランク:D]
・妖種モンスター。
・まだ妖術が使えない妖狐。MPが高い。
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◆ポイズンスパイダー[ランク:D]
・虫種モンスター。
・毒を使う暗殺蛇。毒牙スキルを得られる。
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……確か、進化先って環境や倒したモンスターによって変わるんだよな。そうか、兎を狩りまくってたから肉食系が多いんだ。しっかし……どれに進化する?
何れもいいとは思うけど……ワーグって狼か。
この中でヘヴィのイメージ的に……ワーグかなぁ。
ぶっちゃけ、何でもいいんだよ。最終的に、退化すれば何時でも選べるからなんだけど。
とりま、ワーグに決定っ!
《進化を開始します。ご注意ください。進化を開始します。ご注意ください。進化を開始します。ご注意ください》
何だよこのアナウンス。
電車が参ります、みたいなアナウンス。嫌いじゃねーぞ。むしろ女性の声だから好きぃ♪
《進化が完了しました。ステータスも更新されてます》
よし、見てみよう。
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【ヘヴィ:♂】
【種族:ワーグ[ランク:D]】
Lv.1
HP:30/60
MP:19/19
攻撃:20
防御:21
俊敏:30
【スキル】
・遠吠えLv.1(広範囲に自身の攻撃の10分の1のダメージを与える)使用回数:残り3回(1日3回)
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前と比べれば強いな。
しかし、進化したらレベルが初期に戻るのか。まあ、前より強いからいいか。
さて、スキルが一つ得られたな。ラッキーだ。
遠吠えLv.1が広範囲に自身の10分の1のダメージってことは、今の攻撃が20。つまり2ダメージか。ま……強くなれば使えるか。いや待て、これ固定ダメージ?強くなればめちゃ強くなるんじゃないか。だが、それも考慮しているのか回数制限がある。仕方がない。
「おおっ、高くなってる」
さっきまで草むらが邪魔だったけど、今は見下ろしてるぜ。まあリアルよりはまだまだ低いか。だが、このサイズは大型犬よりかは大きいぞ。こんなのがリアルにいたら……うん、恐怖だ。
……進化したし、もう少しレベルを上がるついでにこの辺りも探索してみるか。
どんなモンスターがいるか楽しみだ!
それに……多分、俺以外にもプレイヤーもいる筈だし。でも見掛けないな。まさか……このエリア、俺だけだったり……?