その60
もうなんか、色々とすいませんでしたアルセウス楽しいです
泣いても喚いても、早く連れて行かないとまずい。時間がただでさえないのだ。
「イノセンス、ナハトのこと見てな。あいつらの様子見てくる」
「……早く帰ってきてね」
「わかってる」
服を着替え顔を隠して、シュティレは外へと出る。さて、どう動くか。宿舎へ戻って捕まりでもしたら、全てが水の泡。
宿舎まで足を運ぶ。いるのはいつも通り、警備員が入り口に二人。相変わらず薄い警備だよね、と思いながらシュティレは死角に回り込むと、兵を飛び越え宿舎へと入り込んだ。
影に隠れ、中の様子を伺う。中はいつも通りだった。
なぜ、とシュティレは考え込む。あの三人は捕縛されているとばかり思っていた。中は大騒ぎになっているとばかり思っていた。
「……どうなってるの?」
宿舎の中に入り込むと、ベレッタたちの部屋へとまず向かった。しかし、部屋はもぬけの殻だった。あいつらどこ行ったんだ、と思ったが部屋の隅に丸まった何かが落ちている。
「……なるほどね」
入れ違いかよ、とシュティレはため息を吐く。
「ヴォルカニックへ この手紙は俺がここでてく時に置いてく。変に怪しまれたら嫌だから普段通りしてたから時間かかる。ちゃんと行くから大丈夫」
焦っていたのか字が乱雑で、拙い文章。
「……こんなの残していくか普通」
今だけはありがたいけど、と部屋から出て行こうとした。
「……ヴォルカニック」
少し怠そうにしているグレーゼが、入り口に立っていた。
まずい、直感で思う。
グレーゼはドアを閉めて、扉に寄りかかる。今ここで人を呼ばれでもしたら、考えたくない。ああ最悪しくった、と冷静でなかった自分を恨む。
「……逃げるなら」
金に興味を持たない人間をどうすればいいか、シュティレは必死に考える。殴られるか、そうすればなんとかなるか。いや、あれはナハトに対してだけ。過去で揺さぶりをかけるか、だが失敗した時のリスクが大きすぎる。
シュティレの考えていることに気づいているのかいないのか、グレーゼは泣き出しそうになりながら言った。
「アーデルも、逃してくれ」
「……は?」
間抜けな声だと、自分でも思った。
「ジェニングスも、あの下人も、医者も妹も連れていくんだろう? 頼む、アーデルも連れていって……金ならいくらでも払うから」




