その59
ナハトに書類を燃やすのを手伝ってもらい、シュティレは早々に金銭を金に変えて。フィデーリタースたちは何をしてるんだ、とシュティレは煙草を吸いながら窓の外を見ていた。苛つきを煙として吐き出す。早く来い、と心の中で呟く。
「なあ、シュティレ……何を……?」
「亡命、するんだよ。今から、俺たち」
ナハトは、え、と声をあげる。
「修道院の人たちは手を回した。下手なことはされないようにしておいた。だから安心しなよ」
ウィンチェスターたちはきっと気づいている。だが確証はない。どう伝えるか、電話を使ってもいいが盗聴されている可能性は否めない、手紙はだめだ。どうすればいい、シュティレは頭を使う。
「……なん、で?」
「俺らの亡命を受け入れてくれる、連合国の一つがね。安心してよ、下手なことはされないし、ちゃんとした生活送れるから」
そうだというのに、あいつらは何をしているんだ。ひとまずこいつらをあそこへ送ってから、ウィンチェスターたちも助け出さないと。
「……俺、行かない」
ナハトは小さく呟く。
「連れて行くならあいつらだけ……俺は行かない」
「……何言ってるの? お前」
シュティレは灰皿に煙草を押し付け、シュティレはナハトと向き合う。
「お前らは今日亡命する。それと、これ変更ね。俺はここに残って後始末、これは決定事項」
「……俺はここにいないと、そうじゃないと……」
「あの人たちは俺がなんとかするって言ってるでしょ? 何? 心配事でもあるわけ?」
ナハトは首を横に振った。
「ここじゃないと、ここじゃないと俺……俺」
死ねないよ、とナハトは膝から崩れ落ちて、泣き出した。
「俺……ちゃんと死ななきゃ、そうじゃなきゃ、俺……」
熊のぬいぐるみで遊んでいたイノセンスは、こちらを見て首を傾げる。何してるの、と普段なら聞いてくる。だが、今はそれをしない。シュティレの苛つきを感じ取っているからだろう。
「人のこと散々傷つけて、父さんも救えなくて、だから……」
「……お前のお父さんを救えなかったのは俺のせいでしょ。お前のせいじゃない」




