その58
更新ペース戻せませんでしたすんませんでした
ねえシューレ、とイノセンスが声をあげる。
まだ夜も明けていない。そんな時間からシュティレは自室で札束の枚数を数えていた。ナハトのことはフィデーリタースが見ている。眠っていたし少しだけなら目を離してもいいか、と思っていた。
早く金に変えなければ。ずいぶん枚数も減ったな、もうここ最近減るばかりだ、そんなことを考えていた。
「ウィンチェスターさんって、おじさんたちとなんのおしゃべりしてるの?」
「……おじさんたちとゃべりって、どれのこと?」
イノセンスはクッキーを食べながら(腹が減ったとせがむから与えた)、自身の思いつく限りの言葉を紡ぐ。
「あのね、この前グレーゼさんがお友達とおしゃべりしてるの聞いたの。なんかね、『ウィンチェスター殿やあの人たちが裏切っていたなんて』って言ってたの」
「いつ言ってたか覚えてる?」
「えっと……この前」
札束を数えていた手を止めてる。まずい、シュティレはイノセンスの腕を掴んで部屋を出た。
「イノセンス、ちょっと急ぐよ」
「うん!」
早く姿を眩ませないと。いったいどこからあのことが漏れたんだ。内通者がいたとでも言うのか。
「ナートたちも一緒?」
「うん。イノセンス、結構急ぐからちょっと待ってな」
ナハトの部屋に入る。ナハトは起きていた。目の下に隈を作り、少し痩せている。フィデーリタースも起きている。同じように隈を作り、ただそこに立っている。おそらく見張りのためだろう。
「シュティレ……?」
「そうだよ、おはよう。ちょっと出るから、ナハト、これ着て。フィデーリタース、ベレッタと妹のところに行ってこれ渡してきて、それであいつと一緒に俺のところ来て」
ナハトにはここに来る前に作業員の服を投げつけて、フィデーリタースには小さな紙切れを渡す。
「……了解しました」
フィデーリタースは一礼すると部屋から出ていく。その様子を、ナハトは困惑したように見つめていた。
「シュティレ? どうしたんだ?」
「いいから、さっさと着な。着たら教えるから。着たら俺の部屋来て」
シュティレはナハトの部屋から出て自分の部屋へと向かい、札束と書類など、必要なものを乱雑に鞄にまとめた。そうしていると、服を着替えたナハトがやってきた。
「あ、あの、シュティレ。着替えたけど……」
「そう、イノセンス、おいで」
ナハトの後ろから顔を出すイノセンス。帽子を被らせて、腕を引っ張る。
「ナハト、ほら、いくよ」
「ま、待って。行くってどこへ……?」
「俺の家。ここで説明したら誰が聞いてるかわかんないから、俺の家で全部言う」
だから早く来い。
シュティレはイノセンスの腕を引っ張り、足早に宿舎をさろうとする。ナハトはそんな二人の後ろをついて歩く。




