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心緒  作者: 宮田カヨ
58/62

その58

更新ペース戻せませんでしたすんませんでした

 ねえシューレ、とイノセンスが声をあげる。

 まだ夜も明けていない。そんな時間からシュティレは自室で札束の枚数を数えていた。ナハトのことはフィデーリタースが見ている。眠っていたし少しだけなら目を離してもいいか、と思っていた。

 早く金に変えなければ。ずいぶん枚数も減ったな、もうここ最近減るばかりだ、そんなことを考えていた。

「ウィンチェスターさんって、おじさんたちとなんのおしゃべりしてるの?」

「……おじさんたちとゃべりって、どれのこと?」

 イノセンスはクッキーを食べながら(腹が減ったとせがむから与えた)、自身の思いつく限りの言葉を紡ぐ。

「あのね、この前グレーゼさんがお友達とおしゃべりしてるの聞いたの。なんかね、『ウィンチェスター殿やあの人たちが裏切っていたなんて』って言ってたの」

「いつ言ってたか覚えてる?」

「えっと……この前」

 札束を数えていた手を止めてる。まずい、シュティレはイノセンスの腕を掴んで部屋を出た。

「イノセンス、ちょっと急ぐよ」

「うん!」

 早く姿を眩ませないと。いったいどこからあのことが漏れたんだ。内通者がいたとでも言うのか。

「ナートたちも一緒?」

「うん。イノセンス、結構急ぐからちょっと待ってな」

 ナハトの部屋に入る。ナハトは起きていた。目の下に隈を作り、少し痩せている。フィデーリタースも起きている。同じように隈を作り、ただそこに立っている。おそらく見張りのためだろう。

「シュティレ……?」

「そうだよ、おはよう。ちょっと出るから、ナハト、これ着て。フィデーリタース、ベレッタと妹のところに行ってこれ渡してきて、それであいつと一緒に俺のところ来て」

 ナハトにはここに来る前に作業員の服を投げつけて、フィデーリタースには小さな紙切れを渡す。

「……了解しました」

 フィデーリタースは一礼すると部屋から出ていく。その様子を、ナハトは困惑したように見つめていた。

「シュティレ? どうしたんだ?」

「いいから、さっさと着な。着たら教えるから。着たら俺の部屋来て」

 シュティレはナハトの部屋から出て自分の部屋へと向かい、札束と書類など、必要なものを乱雑に鞄にまとめた。そうしていると、服を着替えたナハトがやってきた。

「あ、あの、シュティレ。着替えたけど……」

「そう、イノセンス、おいで」

 ナハトの後ろから顔を出すイノセンス。帽子を被らせて、腕を引っ張る。

「ナハト、ほら、いくよ」

「ま、待って。行くってどこへ……?」

「俺の家。ここで説明したら誰が聞いてるかわかんないから、俺の家で全部言う」

 だから早く来い。

 シュティレはイノセンスの腕を引っ張り、足早に宿舎をさろうとする。ナハトはそんな二人の後ろをついて歩く。

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