その57
シュティレはイノセンスを探していた。帰ってきたら姿が見えなくなっていた(今回、トイレに行っている隙に外へ出てしまったようだ)。
ナハトは眠っていて、フィデーリタースはベレッタとフリューリングに呼ばれて薬品の仕分けを手伝っていて。どこに行ったのだろうか、姿が全く見えないのだ。
「イノセンス? いないの?」
シュティレの呼びかけに、元気な声が聞こえた。その声はシュティレを求めている。何してんだろう、とシュティレは声のした方へ向かう。
「……どうも」
グレーゼがそこにいた。イノセンスは笑顔で、グレーゼと何かを話していたようだ。
シュティレの姿を確認すると、何も言わずにどこかへと行くグレーゼ。少し愛想良くしたらいいのに、と思うができないことは知っているので何も言わない。
「何話してたの?」
「内緒」
子供が見せるいたずらっ子の笑顔。あのことを話したわけではないようだ。
シュティレはため息を吐いてイノセンスの耳元に口を寄せる。
「内緒にするから、言って?」
小さい囁き声。こうすれば、イノセンスは背伸びしてくる。今度はイノセンスが耳元に口を寄せる。屈んで合わせてやれば、イノセンスが口を開いた。
「あのね、ウィンチェスターさんのこと」
「ああ、何か言ってた?」
「あのね、大好きって」
「……そっか」
「それでね、俺のこと羨ましいんだって」
「なんで?」
「シューレに大好きって言えるのが。言えたらよかったって」
むず痒いな、こういうの。直接聞くとなるととても恥ずかしい。
イノセンスはシュティの手を掴むと振り回すようにした。自分で言っておきながら、あの言葉に照れているのだろう。
「イノセンス、ナハトのところ行こ?」
「ねえ、ナートとフィーは喧嘩してるの?」
「違うよ。不貞腐れてるの」
「なんで不貞腐れるの?」
「子供は知らなくていいの」
ほら、と歩き出すとイノセンスは大人しくついてくる。その間、イノセンスは上機嫌に話していた。
「ナートはフィーが好きなんだよね、なんで好きって言わないのかな?」
「さあね」
「俺はシューレのこと好きだよ」
「ありがと。俺もお前のこと好きだよ」
こう言うと、イノセンスは喜ぶのだ。嬉しそうに、しかし恥ずかしそうに笑って、余計に腕を振り回すように振る。




