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心緒  作者: 宮田カヨ
57/62

その57

 シュティレはイノセンスを探していた。帰ってきたら姿が見えなくなっていた(今回、トイレに行っている隙に外へ出てしまったようだ)。

 ナハトは眠っていて、フィデーリタースはベレッタとフリューリングに呼ばれて薬品の仕分けを手伝っていて。どこに行ったのだろうか、姿が全く見えないのだ。

「イノセンス? いないの?」

 シュティレの呼びかけに、元気な声が聞こえた。その声はシュティレを求めている。何してんだろう、とシュティレは声のした方へ向かう。

「……どうも」

 グレーゼがそこにいた。イノセンスは笑顔で、グレーゼと何かを話していたようだ。

 シュティレの姿を確認すると、何も言わずにどこかへと行くグレーゼ。少し愛想良くしたらいいのに、と思うができないことは知っているので何も言わない。

「何話してたの?」

「内緒」

 子供が見せるいたずらっ子の笑顔。あのことを話したわけではないようだ。

 シュティレはため息を吐いてイノセンスの耳元に口を寄せる。

「内緒にするから、言って?」

 小さい囁き声。こうすれば、イノセンスは背伸びしてくる。今度はイノセンスが耳元に口を寄せる。屈んで合わせてやれば、イノセンスが口を開いた。

「あのね、ウィンチェスターさんのこと」

「ああ、何か言ってた?」

「あのね、大好きって」

「……そっか」

「それでね、俺のこと羨ましいんだって」

「なんで?」

「シューレに大好きって言えるのが。言えたらよかったって」

 むず痒いな、こういうの。直接聞くとなるととても恥ずかしい。

 イノセンスはシュティの手を掴むと振り回すようにした。自分で言っておきながら、あの言葉に照れているのだろう。

「イノセンス、ナハトのところ行こ?」

「ねえ、ナートとフィーは喧嘩してるの?」

「違うよ。不貞腐れてるの」

「なんで不貞腐れるの?」

「子供は知らなくていいの」

 ほら、と歩き出すとイノセンスは大人しくついてくる。その間、イノセンスは上機嫌に話していた。

「ナートはフィーが好きなんだよね、なんで好きって言わないのかな?」

「さあね」

「俺はシューレのこと好きだよ」

「ありがと。俺もお前のこと好きだよ」

 こう言うと、イノセンスは喜ぶのだ。嬉しそうに、しかし恥ずかしそうに笑って、余計に腕を振り回すように振る。

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