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心緒  作者: 宮田カヨ
54/62

その54

遅れてすんませんでした

 シュティレは必死になって考えた。ナハトとベレッタになんて説明するべきか。

 ナハトの父親に関すること、まずは入院している病院へ足を運んで話を聞いた。

「ムラマサの面倒を見ているのは、この人なんですか」

「ええ。詳しいことはその人から……」

 対応してくれた職員は歯切れが悪そうだった。なぜだ、シュティレは考える。

「……わかりました、ありがとう」

 シュティレは電話を借りて、先方に連絡を入れた。あなたのところへ赴きたい、と。先方は快く承諾してくれた。

「全く、変わんないね。あなたも。酒癖と煙草癖」

 目の前にいる男は笑って酒を注ぎ足し、シュティレのグラスにもそれを注ぎ足した。男はビールよりもワインを好んで飲んでいる。だからワインをプレゼントとして買ってきた。

 このワイン、なかなかいい味だ。今度個人的に飲むために買おうか、そんなこと考えた。

「まあな。お前さんも変わってないがな。相変わらず酒を見る目がある」

 男は機嫌良く酒を飲んでいき、シュティレはそんな男を見ながらため息を吐いて、葉巻を手渡す。目の前に座る恰幅のいい男はそれに火をつけて煙を噴き出した。

「いい代物だな」

「欲しけりゃあげるよ。なんでもね。でもお願い聞いて?」

「なんだ?」

「ナハト・ジェニングスの父親のミナヅキ・ムラマサの身を引き渡してくれる?」

 目の前にいる男は何かと懇意にしてくれる政治家の一人だ。だがあくまでそれはシュティレが利益をもたらすから。

「……ジェニングスの父親のこと、誰から聞いた?」

「ジェニングス本人」

「そうか、あいつはまだ信じてるのか」

 シュティレは煙草を吸おうとしていた手を止めた。そして怪訝そうに目の前にいる男を見る。

「信じてるって? 何を?」

 男は笑っている。本当に機嫌がいいのか、何度もワインを飲んで、シュティレにも大量に飲ませてくる。このままのペースでいくと潰れそうだ、とシュティレは話をするよう求めた。

「いいこと教えてやる」

「何がいいことなの?」

「ミナヅキ・ムラマサは死んでる」


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