その52
ス腐ラと結衣ゴスとTOBL楽しすぎて忘れてました。ごめんなさい。
シュティレは列車に乗りながら、窓の外を眺める。向かいの席に座るナハトは、本を読んでいる。だがページは動いておらず、手も震えている。俯いて顔を隠して。
足手まといを連れて行けだなんて、ウィンチェスターもいい趣味をしている。
シュティレは葉巻を取り出すと、火を付ける。禁煙車両じゃないのだし、別に吸ってもいいだろう。
「……あんた、煙草、嫌いなの?」
ナハトの体が震える。俯いて顔を隠してはいたが、気配は隠せていない。
「これで終わりにするから、我慢して」
それだけ言って、シュティレは煙を吐き出す。いい煙草だな、これ。賄賂として渡さなくて正解だった。ナハトは自身の気持ちを悟られないように必死だった。怯えて気配を隠して。
首都に着くのまであと一時間近くかかる。その一時間、ナハトと二人でいなければならない。気まずいにも程がある。沈黙を楽に感じる相手ならいいのだが、ナハトはそう感じることのできない人間だ。
「……ねえ、あんたの友達ってどんな人?」
ナハトの体が震えた。シュティレは煙を吐き出しながら言葉を待つ。
何も知らずに相手に会う、これは危険以外何者でもない。少しでも情報を、そして気まずい雰囲気をどうにかできればと思った。
「……あ、アールツトは」
顔を上げたナハトは泣き出しそうになっている。責めてはいないし、怒りも感じていない。人に話しかけられて怯えてしまう。今までの環境が原因でこうなってしまったのだろう。
「アールツトっていうの? そいつ」
「は、はい……アールツトは、その……」
「何?」
「……俺の幼馴染で、医者を志望してて、その」
「言いなよ」
「……態度が粗暴です」
「……それ、医者としてどうなの?」
態度が粗暴な医者なんて聞いたことがない。医者は誠実なものではないのか。いや、でも賄賂で靡くような奴もいる。そいつもその部類の人間なのだろうか。
「なんか、面白いね、そいつ。あんたと正反対じゃん」
煙を吐き出して、シュティレは煙草の火を消した。




