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心緒  作者: 宮田カヨ
52/62

その52

ス腐ラと結衣ゴスとTOBL楽しすぎて忘れてました。ごめんなさい。

 シュティレは列車に乗りながら、窓の外を眺める。向かいの席に座るナハトは、本を読んでいる。だがページは動いておらず、手も震えている。俯いて顔を隠して。

 足手まといを連れて行けだなんて、ウィンチェスターもいい趣味をしている。

 シュティレは葉巻を取り出すと、火を付ける。禁煙車両じゃないのだし、別に吸ってもいいだろう。

「……あんた、煙草、嫌いなの?」

 ナハトの体が震える。俯いて顔を隠してはいたが、気配は隠せていない。

「これで終わりにするから、我慢して」

 それだけ言って、シュティレは煙を吐き出す。いい煙草だな、これ。賄賂として渡さなくて正解だった。ナハトは自身の気持ちを悟られないように必死だった。怯えて気配を隠して。

 首都に着くのまであと一時間近くかかる。その一時間、ナハトと二人でいなければならない。気まずいにも程がある。沈黙を楽に感じる相手ならいいのだが、ナハトはそう感じることのできない人間だ。

「……ねえ、あんたの友達ってどんな人?」

 ナハトの体が震えた。シュティレは煙を吐き出しながら言葉を待つ。

 何も知らずに相手に会う、これは危険以外何者でもない。少しでも情報を、そして気まずい雰囲気をどうにかできればと思った。

「……あ、アールツトは」

 顔を上げたナハトは泣き出しそうになっている。責めてはいないし、怒りも感じていない。人に話しかけられて怯えてしまう。今までの環境が原因でこうなってしまったのだろう。

「アールツトっていうの? そいつ」

「は、はい……アールツトは、その……」

「何?」

「……俺の幼馴染で、医者を志望してて、その」

「言いなよ」

「……態度が粗暴です」

「……それ、医者としてどうなの?」

 態度が粗暴な医者なんて聞いたことがない。医者は誠実なものではないのか。いや、でも賄賂で靡くような奴もいる。そいつもその部類の人間なのだろうか。

「なんか、面白いね、そいつ。あんたと正反対じゃん」

 煙を吐き出して、シュティレは煙草の火を消した。

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