その50
ス腐ラ楽しすぎて忘れてました。ごめんなさい。
「……あんた、馬鹿でしょ」
シュティレがそう言ったのは、ナハトが自分を庇い負傷してから、数日が経った後だった。
戦地から戻り、療養を命じられ、一人部屋で暇そうに本を読んでいたナハトは、突然の訪問者に驚きを隠せていなかった。
「なんで俺を庇ったの? 庇わなきゃ嫌なやつ一人いなくなってたんだよ」
「……なんでって、その」
「言って」
「……俺には、それしかできないからです」
「はあ? 何言ってんの?」
それしかできない、何を言っているんだこいつは。お前は必要とされてるのに。
「ふざけたこと抜かしてんじゃないよ、馬鹿にしてんの?」
シュティレはナハトの胸倉を掴んだ。ナハトは怯えて震えているし、早く事が収まるのを待っている。
それが癪に触った。
「……ふざけんのも大概にして! 俺のこと馬鹿にしてそんなに楽しいわけ?」
「ば、馬鹿になんかしてません……」
「じゃあなんで俺を庇ったの? 『俺にはそれしかない』? そんなの理由になると思ってんの?」
可哀想なくらい、ナハトは震えていた。
こんな苛立ち、ぶつけてもしょうがないのに。自分が惨めになるだけなのに。頭ではわかっていた。けれど、感情が抑えられなくて。シュティレは内心戸惑っていた。
「……ねえ、なんで辞めないの?」
ナハトは答えない。
「やめたいなら手伝ってあげるよ。あんたに貸したまんまにしたくないし」
ナハトは顔を上げた。涙が溜まっている目は、期待に満ち満ちている。
「……本当、ですか?」
「……ほんと。なんで辞められないか、教えてくれない?」
ナハトは目を擦り、涙を拭う。震えているのは恐怖からではなく、期待から。
「……父さんが、病気になったって。それで、治療費の代わりに戦えって」
なるほどね、卑怯な手を使う。家族を人質に取られて、無理に闘わされている。
こいつの性格、よく理解しているな。シュティレは胸ぐらから手を離すと、ため息を吐いて、姿勢を崩す。
「父親、今どこにいるの?」
「一番、大きい病院で。都市にある……」
ナハトは引き出しから手紙を出す。封筒に書かれた住所に、シュティレは頷いた。
「ああ、あそこね」
都市の大病院で、お偉いさんが面倒を見ている。少し面倒だが、まあなんとかなるだろう。
さて、こいつの父親の命を握っているのは誰かを探らないと。お偉いさんなのは間違いない。だが個人はわからない。お偉いさんを買収して、ナハトにはさっさと辞めてもらって、自分は無事昇進。いい構図だ。
シュティレは部屋から出て、向かう先はまずは自分の部屋。
シュティレは基本、資産となるものは自室で管理している。銀行は当てにならない。もしなんらかの原因で金銭が引き出せなくなったらと思うと、怖くてたまらなかった。
宝石、札束を持って部屋を出る。次に向かうのは役所の資料室。役所の人間にはある程度顔を利かせている。個人に関する資料くらいなら、見せてもらえるだろう。




