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心緒  作者: 宮田カヨ
50/62

その50

ス腐ラ楽しすぎて忘れてました。ごめんなさい。

「……あんた、馬鹿でしょ」

 シュティレがそう言ったのは、ナハトが自分を庇い負傷してから、数日が経った後だった。

 戦地から戻り、療養を命じられ、一人部屋で暇そうに本を読んでいたナハトは、突然の訪問者に驚きを隠せていなかった。

「なんで俺を庇ったの? 庇わなきゃ嫌なやつ一人いなくなってたんだよ」

「……なんでって、その」

「言って」

「……俺には、それしかできないからです」

「はあ? 何言ってんの?」

 それしかできない、何を言っているんだこいつは。お前は必要とされてるのに。

「ふざけたこと抜かしてんじゃないよ、馬鹿にしてんの?」

 シュティレはナハトの胸倉を掴んだ。ナハトは怯えて震えているし、早く事が収まるのを待っている。

 それが癪に触った。

「……ふざけんのも大概にして! 俺のこと馬鹿にしてそんなに楽しいわけ?」

「ば、馬鹿になんかしてません……」

「じゃあなんで俺を庇ったの? 『俺にはそれしかない』? そんなの理由になると思ってんの?」

 可哀想なくらい、ナハトは震えていた。

 こんな苛立ち、ぶつけてもしょうがないのに。自分が惨めになるだけなのに。頭ではわかっていた。けれど、感情が抑えられなくて。シュティレは内心戸惑っていた。

「……ねえ、なんで辞めないの?」

 ナハトは答えない。

「やめたいなら手伝ってあげるよ。あんたに貸したまんまにしたくないし」

 ナハトは顔を上げた。涙が溜まっている目は、期待に満ち満ちている。

「……本当、ですか?」

「……ほんと。なんで辞められないか、教えてくれない?」

 ナハトは目を擦り、涙を拭う。震えているのは恐怖からではなく、期待から。

「……父さんが、病気になったって。それで、治療費の代わりに戦えって」

 なるほどね、卑怯な手を使う。家族を人質に取られて、無理に闘わされている。

 こいつの性格、よく理解しているな。シュティレは胸ぐらから手を離すと、ため息を吐いて、姿勢を崩す。

「父親、今どこにいるの?」

「一番、大きい病院で。都市にある……」

 ナハトは引き出しから手紙を出す。封筒に書かれた住所に、シュティレは頷いた。

「ああ、あそこね」

 都市の大病院で、お偉いさんが面倒を見ている。少し面倒だが、まあなんとかなるだろう。

 さて、こいつの父親の命を握っているのは誰かを探らないと。お偉いさんなのは間違いない。だが個人はわからない。お偉いさんを買収して、ナハトにはさっさと辞めてもらって、自分は無事昇進。いい構図だ。

 シュティレは部屋から出て、向かう先はまずは自分の部屋。

 シュティレは基本、資産となるものは自室で管理している。銀行は当てにならない。もしなんらかの原因で金銭が引き出せなくなったらと思うと、怖くてたまらなかった。

 宝石、札束を持って部屋を出る。次に向かうのは役所の資料室。役所の人間にはある程度顔を利かせている。個人に関する資料くらいなら、見せてもらえるだろう。

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