その48
「コルトさん、そっちはどうなってる?」
「大事ない。最後の大戦に向けて準備を進めている。お前の亡命も、受け入れてくれると言った」
「そりゃよかった」
ストリクトは相変わらずの鉄仮面だった。自分も含めて、全部道具としてしかみなしていない。けれど、それに相反してストリクトの目の奥底には自分への執着心が見えている。はて、なぜそんな感情をこちらに向けるのだろうか。
それにしても、らしくないな。シュティレはそう思った。今回の亡命は、相手に金を払っても自分に払われることはない。貯めていた金が減っていくことは嫌だと思うし、できるのであれば減る金を減らしたいとも思う。けれど、今回はそういうわけにもいかない。
「大変だね、お互い」
「……俺はもう戻る。時期を見誤るな、ヴォルカニック」
「ご忠告、どうもありがとう」
ストリクトは暗闇の中へと消えていく。さてと、早く次に行かなければ。
シュティレは足早に路地を抜けると、そこから少し離れた場所にある、建物の中に入っていった。建物はレストランとなっており、今は夜の営業に向けて準備中だ。けれど、店員はシュティレの顔を確認すると、快く中へと入れてくれた。
「ウィンチェスター様がお待ちです。ご案内します」
「どうも」
店員に案内された部屋には、料理も並んでいないテーブルを囲んでいるウィンチェスター含む数十人がいた。
「来たか」
「ごめんなさい。遅くなって」
「構わん」
シュティレが席に着くのを確認するとウィンチェスターは一息つく。そして、緊張感のはらんだ声でこう言った。
「会議を始める」
ここにいる数十人は全員帝国の軍人だ。それも中枢を担う人間が何人も揃っている。全員、帝国のやり方に賛同できていないものばかりだ。
帝国が富国強兵を掲げていることには賛同しているが、特定の人種に対する差別や迫害を許せていなかった。その原因となっている総統を止めようと結成されたのが、ウィンチェスターを筆頭にしたこの集団は、いわゆるレジスタンスだ。
「ヴォルカニック、コルトはなんと言っていた」
「俺らの亡命は受け入れてくれて最後の対戦に向けて準備を進めてるってさ。なるべくナハトを早くあっちによこさないとね」
ナハトの名前が出た瞬間、空気が張り詰める。ウィンチェスターを除いて、全員ナハトを嫌っている。ナハトは戦争を助長させ、あの時戻って来さえしなければ終戦は確実だったからだ。
「……俺も頑張るから、ナハトには手を出さないでよね」
あいつには恩がある。仇で返すような真似だけはしたくない。それだけだ。友情なんかじゃない、決して。
「……お前たち。この前の話、覚えているな」
ウィンチェスターが無理やり話題を変えた。このままだと言い争いが起こりかねない、そう判断したのだろう。
眉間を押して皺をほぐす。触る前から堀が深いとわかっていた。一昔前はずっとこんな顔してたっけ、シュティレはため息を吐く。




