その47
クマサンチャー使いにくいです。
こんにちは、イノセンス。
そう穏やかに話しかけるナハトの存在を、イノセンスは気に入ったようだ。
あの出来事から数週間経った。何度も家に通い、自分と話に興じているのを見てイノセンスもナハトへの警戒を徐々に解いていき、今ではすっかり懐いている。
手遊びに興じるイノセンスと、手遊びを教えているナハトを横目に、シュティレは書類に目を通していた。
ナハトがイノセンスの相手をしてくれているおかげか、溜まっていた仕事もこなせるようになり、何よりイノセンスが言葉を覚え始めた。この前、初めて自分の名前を呼んだ。
それは拙いもので、言葉を話したと言っても何を言いたいのかはあまりわからないものが多い。だが、着実に成長しているし、自己を見せるようにもなってきた。
言葉を覚えて、一人で歩けるようになったら戦場へ連れていかなければならない。イノセンスをあの奴隷商のところから連れてきたのは、自分の側近とするため。ナハトが聞いたらきっと、ダメだ、子供を戦場へ行かせるなんて、というだろう。あいつは、無駄に優しいところがあるから。
「……イノセンス」
名前を呼べば、イノセンスはナハトから視線を外してこちらを振り向いた。決して、イノセンスが自分ではない誰かに懐き始めて、そのことに嫉妬したわけではない。断じて。
まだ傷の残る顔に笑みを浮かべて、こちらへとやってくるイノセンス。その後ろで、穏やかに笑うナハト。
イノセンスのその笑顔が、過去の自分と、あの男を慕っていた時の自分と。ナハトの笑顔が母親の笑顔と重なって。
「……子供って、ほんと面倒」
思ってもないことを口に出してしまった。




