その46
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初めて、他人を家に呼んだかもしれない。
「こっちきて」
痛む腹の傷を抑えながら、ナハトを寝室まで案内する。ナハトをここに呼んだのは、他でもないイノセンスと自分のためだった。
シュティレは、自分の家がどこにあるのかを教えていない。帝国にある書類に記載している住所は偽のもので、書類に記載している住所には誰も住んでいない。
シュティレの今住んでいる家は、屋根裏部屋のように狭い家だった。大家は詐欺を働いていた頃の取引相手で、今も軍の上官などの情報を提供する代わりに家賃を免除してもらっている。
「イノセンスの世話、手伝って?」
「……なぜ、俺に?」
「お前は馬鹿じゃないからね。あいつに言葉教えるの、手伝って?」
シュティレはあまり口数が多い方ではない、意識しないと喋っていられない。ナハトも口数の多い方ではないが、ベレッタのように口が汚いわけではない。
「ここ、あいつがいるの」
寝室の戸を開けると、クマのぬいぐるみで遊ぶイノセンスが出迎えた。部屋に散らばる子供用の積み木や絵本、ぬいぐるみ。全てシュティレが買い与えたものだ。ウィンチェスターから、子供の養育には必要なものだ、とメモを渡された。
イノセンスはシュティレの姿を見ると笑顔を見せたが、ナハトの姿を見るなり表情が怯えに変わった。歩けないため、体を引きずってベッドまで持っていくと、ベッドの影に隠れてしまった。
「イノセンス、こっちおいで」
イノセンスは首を横に振り、その場から動こうとしなかった。
「……ごめん」
「……いや、いいんだ」
ナハトはどうすればいいかわからず、まちぼうけの状態だった。
二人は一度寝室から出ると、リビングへと向かった。これでも掃除はしたのだが、ナハトから見れば散らかっているのだろう。
「悪いね、来てもらったのに」
仮にも客人である人間を、自分の都合で連れてきた人間を、もてなさずに帰るのは気が引けた。せめてコーヒーの一杯でも出さないと。
書類を避けて座れるスペースを作ると、座るよう促す。
「え、そんな、大丈夫ですから……」
「……敬語、やめてって言ってるでしょ」
「……すまない」
警戒してしまうのはわかる。つい最近まで、自分はナハトを嫌っていたのだから。
「……悪かったね、イノセンスのこと」
コーヒを入れて、それを差し出すと、ナハトは小さく礼を言って(また敬語を使われた)ゆっくりと渡したそれを飲んだ。
「い……や、いいんだ」
少し居心地悪そうに、ナハトはゆっくりとコーヒーを飲んでいく。
友人と呼べる人間も、きっとさしていなかったのだろう。ベレッタとは幼馴染であると聞いた。あの家へ行く途中と、帰る途中、ベレッタの会話のほとんどは家族のことかナハトのことだった。
ベレッタや家族から、さぞ大切にされていたのだろう。世間知らずで、世の悪意も知らず、生きてきたのだろう。
「……もう一回、明日来てくれる?」
「……ああ、わかった」
イノセンスに言葉を覚えさせるのは、だいぶ先になりそうだ。




