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心緒  作者: 宮田カヨ
37/62

その37

マンメミッ

「言ってもいいよ、俺のこと」

 少しからからかってやろうと、あえて挑発してみた。

「兄貴の罰もきっと軽くなるしね。それに地位も上がるし。言ってもいいよ」

 ベレッタは、あの戦場での素行が原因で謹慎処分を受けている。降格処分すら検討されている状態だ。

 フリューリングは黙り込んでしまった。このあとどんな反応をするだろうか、とシュティレは反応を待つ。お前は人が悪い、とナハトからはよく言われる。こればかりは性分なので、仕方がない。直そうと思っても直らないのだから。

 フリューリングが何かを言う。けれど、それは小声でシュティレの耳には届かなかった。なんて言ったの、と聞き返せば、フリューリングは真っ直ぐと、シュティレを見つめた。

「あたし、言いません! 兄ちゃんの友達を、売るなんて酷いこと、あたし絶対にしません!」

「……いや、冗談。からかっただけだよ、ごめん」

 少し間を開けてから、シュティレはそう答えた。怒っているのか、拗ねているのか、告げ口してもいいと言われたことにシュックを受けているのか、フリューリングの目には涙が溜まっている。

「え、いや、なんで泣くの?」

「……泣いてませんもん」

 いや、泣いてるじゃん。

 フリューリングの目から涙が流れた。もしこのことがベレッタに知られたら、シュティレはきっと殴り飛ばされるだろう。

 なんて言って慰めようか、と頭を巡らせる。

 今後、子供をからかうのはやめよう。泣かれたら面倒だし、改めてわかった。子供が泣く姿を見るのは残されたわずかな良心が痛む。

「……悪かったよ、揶揄いすぎた。泣かないで」

 イノセンスや大人の女は勝手がわかるが、他人の妹で、しかも年頃の少女の扱いはわからない。下手を打てば本当に面倒なことになる。

「……ヴォルカニックさん」

「……何?」

 フリューリングは目元を拭う。

「あたしと兄ちゃんのこと、いつになったら信用してくれますか?」

 まだ少女ではあるが、女というのは、どうしてこうも聡いのか。

 シュティレはため息を吐く。その質問には答えてやれそうになかった。

「……妹、そろそろ帰らないとベレッタ心配するよ」

 もう空が暗くなってきた。そろそろ帰らないと、抜け出したことが知られてしまうし、イノセンスが駄々を捏ね始める。

「ほら、帰るよ」

 シュティレは歩き出す。フリューリングも、その後に続いた。

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