その35
ニュイフィデ地雷ですやめてください!!!!!(クソデカボイス)
「……俺ね、シューレがいなくなったらって思うと、怖いの。だって、シューレは俺の全部なんだもん」
そんなませた言葉、どこで覚えてきたんだ。思わずそう言いそうになったが、シュティレは堪える。イノセンスは今にも泣き出しそうな顔をしていた。おそらく、昔のことを思い出しているのだろう。消したくても消えない、嫌な記憶は誰にでもある。
シュティレは、イノセンスのその顔には弱かった。
「……わかった、あとで一緒に探すから。お願いだから、今は部屋にいて?」
「……ほんと?」
「ほんと、約束するから」
シュティレは自身の立場に関わるものや金銭に関わる約束は守ってきたが、それ以外のものはあまり守ってきたことがなかった。守ったところで意味がないことを知っていたからだ。だが、イノセンスとの約束は破ったことがなかった。
「後で戻るから、ちゃんと部屋にいてよ?」
「うん、わかった」
早く帰ってきてね、イノセンスの声を聞きながら、シュティレは急いで部屋を出る。
それからが大変だった。ナハトを血眼で探す上層部に、ベレッタを拷問にかけ情報を聞き出そうとする者。全員の弱みを握り、動きを抑えるのに、フィデーリタースを自分の側近とすること。寝る間も惜しんで必死になった。あの時の貸しをここで返してやる。その一心で動いていた。
シュティレは薄暗い路地裏に来ていた。約束の時間になるまで、後一分弱。
「やあ、ストリクトさん」
「……名で呼ぶな」
時間になって、奥から出てきたのは、安っぽい服に身を包んだ髪の長い男だった。頭の高い位置で結んではいるが、解けばフィデーリタースといいとこ勝負になるんじゃないか、シュティレはと思っている。
格好だけ見たら、低賃金で雇われている一介の労働者だ。
「はいはい、コルトさん。待ってたよ」
「……長居はしない。簡潔に済まそう」
ストリクトと呼ばれた男は周りを警戒しながら、小声で話す。
「で、何が聞きたいの?」
「『懐刀』と、それと今後の動向だ」
「わかった」
もし今この現場を見られたら、シュティレは銃殺刑だけじゃ済まないだろう。死んだ方が幸せ、という言葉があてはあるような拷問を受けるはずだ。
シュティレの言葉を一語一句聞き逃さないという感じで、ストリクトは耳を傾けている。
ストリクト・コルトは敵国のスパイだ。この男と関わりを持ったのは、ナハトが帝国から逃げる少し前だった。
一年前、帝国がもう長くないと悟り、シュティレは最初は自身の保身のためにこの男に接触した。けれど、ナハトが逃げ出したことでイノセンス、フィデーリタース、ベレッタとその妹の身を守るために帝国の情報を明け渡し始めた。けれど、今はその条件を変えている。ナハトの身も守ることも条件に付け加えた。向こうはそれを承諾した。
「ねえ、コルトさん。聞きたいことあるんだけど」




