表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心緒  作者: 宮田カヨ
34/62

その34

シュティニュイ(シュティナト)みたいだけどそんなことないです。


 イノセンスは袋を受け取った。少し不服そうだが、納得はしてくれたようだ。その頭を撫でて、シュティレは部屋を出た。

 シュティレはある場所を目指しながら、こう思った。もし、こいつがまた姿を眩ましでもしたら。今度は全員を守りきれる自信はない。きっと、上の人間も、もう賄賂なんて欲しがらない。あの人たちを守るためにも、ナハトには今しばらくここにいてもらわないといけない。あの人たちを逃す手立てが思いつくまでは。

 一年前のあの時、ナハトは帝国から逃げ出した。ナハトが戦争や帝国に嫌気がさしていることは気づいていた。逃げ出したいというなら友として手を貸してやるつもりだった。まさか、自分に何も言わずに出ていくとは思っていなかった。

 この帝国で、ナハトと一番近い関係にあるのはベレッタだ。だから、誰よりも早くベレッタの元へと向かい、逃亡の件を問いかけた。ベレッタは少し悩んだようだったが、お前なら大丈夫か、と呟くと全てを話した。

「あいつは、逃げたんだよ。俺が手を貸した」

「……なんで、俺に言わなかった」

「口止めされてたんだ……お前のことを面倒ごとに巻き込みたくなかっただとよ」

 ナハトと関わりを持っている時点で面倒ごともクソもない、シュティレはそう言い返した。

「……どいつもこいつも、どうしてこうもバカばっかりなの……!」

 滅多に顔を出さない怒りと虚しさが、胸の中を支配する。詐欺師として働いていた頃も、今も、裏切ることはあっても、裏切られることはなかった。信じていた相手に裏切られるというのは、こんなに辛いことなのか。かつて、自分が騙していた相手を思い出す。嘘つきと言われたこともあった。お前なんか信じなければよかったと言われたこともあった。正直、何を言っているんだと思った。

 信頼関係を築いているとでも思ってたの、そう思っているのはお前だけだろ。嘆いている相手にそういえば、相手は面白いほど喚き散らしていた。

「……意外だな」

「……何が?」

「俺のこと、あいつらに売ると思ってたぜ」

「……殴られたくなかったら黙ってて」

 ナハトが逃げ出した今、できることをしなくてはならない。ベレッタとその妹、置いていってしまった側近の身を守らなければ。シュティレはドアノブに手をかける。

「……お前には妹の分含めて貸し二、ナハトのバカにも貸し二」

「……悪いな」

「……そう思うなら、最初から俺に相談してよ」

 シュティレは扉を開け、外へと飛び出ると、急いで自室へと向かった。ドアノブに手をかけるより前に、扉が開く。

「イノセンス、どこいくの?」

 この忙しい時に、いい加減にしてよ。思わずそう言ってしまいそうだった。別に八つ当たりしたいわけではない。

「フィーのところ。ナート探しにいくんだ。シューレも一緒に行こ?」

「……ダメ、部屋にいな」

 シュティレは足早にクローゼットの前へ行くと、奥から袋を数個取り出した。写真や明細書があるのを確認すると、部屋を出て行こうとするが、イノセンスが立ち塞がった。

「どうして?」

 納得いかない。そう顔に書いてある。子供と言うのは本当に面倒だ。

「どうしても。忙しくなるから、部屋にいて」

 今はイノセンスに構っていられるほど余裕はない。早く手を回さないと、全てが手遅れになってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ