その32
ニンジャラ楽しいです。それはさておきシュティレ編始まります。
戦地から帰って数日が経った。あそこはもう取り戻した、その報せを受けたのは、ここに帰ってきてから一日経ったか経っていないか、それくらいの時だった。
シュティレは、相変わらずナハトの監視役としてこき使われている。もしナハトの精神が安定していたら、からかうなんなりして遊んでいたが、今それをしたところで、きっと面白くない。
少し寝る、ナハトがそう言ってからもう何時間経っただろうか。そろそろ起こすべきか、とも考えたが、なぜそこまで世話を焼かなければならないんだ、という考えも浮かんでくる。世話焼きと後で言われるのも面倒だ。飯を食いっぱぐれてもこいつの責任だ。
札束を纏め、袋の中にしまう。近いうちに金か何かに変えなければならない。そして、それを安全にしまっておける場所も探さなければ。きっと、近いうちに今よりも大変な時代が来る。それはきっと、ナハトが引き起こすだろう。なんとなくだが、シュティレはそう考えている。
「ねえ、シューレ。もう終わった?」
声のした方に顔を向ける。行儀が悪いから足を揺らしながら座るな、と注意はしているが直そうとする気配がない。ナハトやベレッタが言ったら聞くのに、俺が面倒見てやってんだからな。心の中でそう悪態をつく。お前に甘えている証拠だ、と言われるがいまいちそれが理解できていない。
「うん、もう終わったよ」
イノセンスの顔が輝いた。確かに、体つきや仕草、顔だけを見たら坊やに見えなくもない。
「本は読み終わったの?」
絵本でもなんでも、一日に一冊は読むように言っている。イノセンスは簡単な文字なら読み書きができるが、難しい文字はまだ読み書きできない。年齢をある程度重ねた人間に教育を施すのがここまで難しいとは。
「うん、読んだよ」
イノセンスの隣には積み重ねたり、広げたままの本が放置されている。片付けろ、そう言っても聞いた試しがない。
「面白かったの?」
「ううん、面白くない」
ナートが書いた方が面白い、イノセンスはそう言って笑った。
ナハトは物語を書かなくなった。何も思いつかないから、と言っていたが、本当は書けないのだろう。
自己嫌悪を含む負の感情。それらがナハトを蝕んでいる。
あの時、プラヴァスに対して言った、殺してくれという言葉。おそらくあれは本心だ。自分が死ねば、もう無駄な争いは起こらないとでも考えているのだろう。だが、間違ってはいない。
「……ねえ、シューレ」




