その31
ニュイ編は一旦終わりです。次の主人公が誰なのかは、次回の更新お楽しみに。
硝煙の匂いがこびりついて離れない気がした。銃を下ろし、荒く呼吸をする。砂埃も一緒に口の中に入って、ニュイは思わず咳き込んだ。血反吐とともに砂を吐き出し、地面に散ったそれを靴で擦る。
戦っても無駄なことなのに、なぜ彼らは抗おうとするのだろう。他者を傷つけたいわけではないのに、なぜ自分はこの場に立っているのだろうか。
アーデルが何かを言っている。治っていない傷が開き、新たにできた傷から血が流れる。目の前が暗く、足元がおぼつかない。立っていられなくなり、その場に座り込む。痛みには耐えられても、さすがに血液を失うことには耐えられないようだ。
アールツトが近づき、何も言わずに傷の手当てをする。資源を無駄に消費するだけだと言っても聞かなかった。
「聞いてたか? ウィンチェスターの話」
「……いいや」
息絶え絶えに答えれば、アールツトは処置を進めながら口を開いた。
「お前を含む数人は一回帝国に戻るんだとよ」
「……なんで?」
「……ここの連中は、もうお前がいなくても大丈夫って判断でもしたんだろうよ」
ああ、そうか。俺が逃げないか心配なのか。ニュイはため息をつく。
傷を治して欲しくない。このままでいい。そうすれば、きっと死ねるから。
「それに、お前の様子がおかしいことは多分上に伝わってる」
「……そうか」
「……あまり自暴自棄になるな。お前が死んだら、ヴォルカニックの苦労だって、あいつらだって……」
「……ああ、わかってる」
少し眠い。できることなら、今ここで眠ってしまいたい。
アールツトに支えられ、立ち上がる。
ふと、隣に目を向ける。視界の端に、長い銀髪が目に入った。
なんでお前がそんな悲しそうな顔をするんだ。お前には関係のないないだろう。もうこれ以上、俺のことを見ないでくれ。お前に見られると、縋りたくなるから。助けてくれないのなら、どうか突き放してくれ。
そう言いたかったが、眠気には抗えず、ニュイは目を閉じた。




