表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心緒  作者: 宮田カヨ
22/62

その22

人を呼ぶべきだろうか、以降の部分が抜けていたので付け足しました(2020/05/17)

 明日のために、帝国の軍人達は代わり番で睡眠を取っていた。ニュイはそこから少し離れた場所にいた。損壊された民家の壁に寄りかかりながら、夜空を見つめていた。雨はとっくに止んでいる。

「ナート、寝ないの?」

 声がしたほうを向いた。赤毛を靡かせて、無垢な笑顔を見せている青年は、戦地に似つかわしくない。

「イノセンス……どうしたんだ?」

「どうしたもクソもないよ、さっさと寝てくんない? 俺が寝れないの」

 イノセンスの後ろからシュティレの声が聞こえた。だるそうな声に、すまない、と謝ればシュティレは面倒臭そうにため息をつき、ニュイの隣に座った。

「……あいつなら、ベレッタが面倒見てるよ」

 頭冷やすのにはちょうどいいんじゃない、シュティレは面倒臭そうな態度を崩すことなく言った。

「……そうか」

「何も言わずに出てかないでよ、こいつもう少しで寝つきそうだったのに」

 シュティレの隣で、イノセンスは機嫌良さげに体を揺らしている。

「ねえシューレ、今日は星が見えるね」

「雨降ったからね、明日は晴れるよ。そうすりゃ、星なんかいくらでも見れる」

「じゃあ、明日はもっと綺麗に見える? 俺、星見たい」

「星見たかったらナハトに頼みな。こいつ詳しいから」

 何勝手に決めているんだ、そう言おうとする前にシュティレの方が早く口を開いた。

「いいでしょ? どうせ夜は暇なんだし。それに、もうこいつ見る気だよ」

 イノセンスが期待を込めた顔でこちらを見つめている。わかった、そう言わないと駄々をこねるのは目に見えているし、イノセンスの機嫌を損ねれば後々面倒なことになる。

 わかった、と言おうとした瞬間、誰かの気配を感じた。服の下に手を伸ばし、銃を取り出しながら気配がした方を向く。それはシュティレも同じで、服の下に忍ばせていた銃を取り出した。

 気配を感じたら銃を握る。軍人としての悪癖が、ニュイを動かす。

「……誰だ」

 ニュイの問いかけに、気配はしばらく動きを見せなかった。人を呼ぶべきだろうか、そう悩んだ。

「……敵対の意思はない。話がしたいだけだ」

 所々発音がおかしいが、帝国の言葉を流暢に操っている。男の声だった。闇の中から出てきたのは、フィデーリタースとそう歳が変わらない若い男だった。背が高く、戦いに向いた体つきをしているのは暗闇でもわかった。それよりも目を引いたのは、男の着ている軍服だった。あの軍服は、帝国が敵対視する連合国の大元のものだ。

「おじさん、誰?」

 イノセンスの声に、男が目を剥く。

「こんな幼子まで……帝国は戦地に駆り出すというのか……!」

「幼子? 誰のこと言ってるの?」

 シュティレが聞いた。男は憤慨した様子で、声を上げる。

「そこの子どものことだ! 年端も行かぬ子供を、なぜ戦地に連れてきた!」

 男はイノセンスのことを言っているようだ。当のイノセンスは小首を傾げている。

「……もしかして、こいつの事言ってるの? こいつ、俺より年上だよ」

 シュティレが呆れたように言った。警戒も解かず銃は構えたままだが、撃つ気はないようだ。ニュイも同じで、男を撃つ気はなかった。銃はあくまで警戒の意思を示すために使っているだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ