その21
今度こそ本当のその21です
銃は撃ち落とされ、抵抗する術は奪われた。
弾丸を全て失い、逃げ場を無くした軍人の一人が両手を上げていた。それに続くように何人も銃を捨てて手をあげた。
「全員、銃をおろせ!」
アーデルの声が響いた。ニュイは銃を下ろして、胸を撫で下ろした。もう銃を握らなくていい、誰かを打たなくていい。一時の安息をかみしめるように、息を吐き出す。
けれど、その号令は合っていないようなものだった。帝国の人間は軍人達に向かって銃口を向けては、弾丸を撃ち込んでいた。なんて言っているんだ、というグレーゼや他の者の笑い声が聞こえた。それに対して、アールツトが声をあげた。
「何してやがる、このソドム野郎!」
アールツトはグレーゼに打たれ、虫の息となっている敵国の軍人のもとへ駆け寄ると、医療器具を広げた。絶対に助けるから、待ってろ。アールツトは敵国の軍人に向かって、必死にそう呼びかけた。息絶え絶えになった敵国の軍人は、アールツトに必死に助けを求めていた。
「下人を助けるのか? ベレッタ」
「俺は治せる奴は全員助ける! 敵だろうが何だろうがな!」
「そうかそうか」
鈍い音がした。アールツトの顔と軍服に血が飛んだ。額に穴が空いた敵国の軍人は、穴から血を吹き出している。アールツトの肩が震え、次に視線で殺すと言わんばかりにグレーゼを睨みつけた。
「ぶっ殺してやる! ぶっ殺してやるこの……!」
グレーゼに殴りかかろうとしたアールツトを、シュティレとイノセンスが急いで止めた。今ここで手を出せば、アールツトの立場が危うくなる。それでも殴りかかろうともがくアールツトを横目に、グレーゼはニュイに向かって銃を差し出す。
「ジェニングス、お前も撃ってみろよ。己のを貸してやる」
なぜ自分に声をかけるんだ。いやだ、とニュイは言った。ニュイが一歩下がれば、グレーゼは一歩距離を詰めてくる。庇うようにフィデーリタースが間に入る。それが気に入らないのか、グレーゼは露骨に嫌悪を示す。
「どうした? できないのか?」
「やりたくない……来ないでくれ」
「つれないなあ……簡単なことだろう? 狙いをつけて、引き金を引けばいいだけだ」
グレーゼの、至極愉快と言う笑い声につられるように、他の軍人達も笑い声をあげた。フィデーリタースに銃口が向けられる。
「そうだな、お前が撃たないと己がこの下人を撃つ、というのはどうだ?」
どうしてこいつは、こうも悪辣なのか。銃を受け取りたくはない。けれど、受け取らなければ側近が撃たれてしまう。グレーゼはこれを冗談で言っていない。
その時だった。銃声が響いた。皆が一斉に音の方を向いた。アーデルが空に銃口を向けている。
「この者達は今から我ら帝国の捕虜となった。これ以上条約を破るというなら、今ここで罰則を与える」
アーデルの、低く怒りを込めた声が響いた。
「グレーゼ、私の言葉を忘れたのか? 帝国の品位を貶めるような行動は慎め」
アーデルはグレーゼの銃を取り上げた。
「お前達もだ。処分は追って行う」




