表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心緒  作者: 宮田カヨ
16/62

その16

bp1.5倍期間なので皆さんもDbDやりましょう

「……その口の利き方、直してやろうか?」

 グレーゼが一歩近づくと、フリューリングが庇うようにアールツトの前に立った。

「兄ちゃんに近づかないで!」

 心底苛ついた顔をしながら、グレーゼは子供相手に悪態をつく。

 その頭を撫でながら、アールツトはグレーゼを睨みつけ、機嫌が悪い時によく出す声で喋り始めた。この声を聞くのは随分と久しかった。この声を最後に聞いたのは、ニュイの夢が潰され、軍に入隊することになった時だ。

「うるせえな、近寄んな気色悪い……そういや、上官……ウィンチェスターに呼ばれた理由はお前の身の振り方に関してのことだとよ。さっさと行った方がいいんじゃねえの? あいつ、怒ると怖いんだろ?」

 その名前が出ると、グレーゼは歯軋りを立てて、アールツトを睨み付ける。口汚い罵り言葉をこの部屋の中にいる全員に吐き捨てるように言うと、荒々しく部屋を出て行った。

「大丈夫か、二人とも」

 完全に気配が消えたことを確認すると、アールツトは部屋のドアを閉めた。声のトーンも変わっており、普段喋る時の、快活な声に変わっていた。

「あ、ああ……」

 ニュイは彼に礼を言った。怪我のことについて触れれば、ああ、と軽い返事が返ってきた。

「グレーゼの奴、お前のこと探してるって聞いたからな。俺が伝言引ったくってお前のとこ行こうとしたら妨害しようとした奴がいてな。殴ってここまできた」

「お前……医者がしていいことじゃないだろ」

「いいんだよ、馬鹿は治らねえんだから。馬鹿は殴って直すか放置だ」

 フリューリングはそれに続いて、馬鹿は治らない、と笑顔で言った。そうだな、お前は頭がいいな、とアールツトは彼女の頭を撫でていた。

「つーか、俺よか礼言うべき奴がいるだろ」

 アールツトはフィデーリタースを指差した。

 庇ってくれた側近が何か言いたげにこちらを見つめている。どうした、そう聞けばおずおずと口を開いた。

「……ナハト、その……」

 手を離してください。そう言われて、今初めてニュイはフィデーリタースの軍服を握りしめていたことに気付いた。いつの間に握っていたのだろう、グレーゼに庇われた時にでも握ったのだろうか。無意識のうちだったのか、覚えがない。

 すまない、そう言ってすぐに手を離した。何度も縋りたいと思った背中に、こんな形で縋ることになるなんて。先ほどまで口も聞きたくないと思った相手に、こんな失態を見せるなんて、情けなくてたまらなかった。

「まあ、積もる話もあるだろ」

 アールツトが口を開いた。

「話したいこと、話せばいい」

 口で言うのは簡単だ。アールツトは二人に深く関わり、二人の心情も理解している。けれど、あくまでニュイとフィデーリタース以外は部外者だ。

 ニュイは口を開かなかった。フィデーリタースも同じで、ニュイに一礼すると、元いた場所へと戻っていってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ