決意
私はあれからママに治療を施され
傷は完ぺきに癒えた。
なんで出かけたはずのママがいるのかというと、
あの事件を聞いてすぐに戻ってきたから。
なんと、パパも戻ってきている。
「ごめん、もう一度言ってくれる?」
『冒険者になりたいの! パパ、ママ!』
あの戦闘を経て私は火がついてしまったのだ。
それを止めようと必死になってママが説得をしてくる。
「いい? カナタ。冒険者っていうのはね、
すごく危険なのよ?
貴女がさっき戦ったようなのなんてゴロゴロいるんだからね?」
ママは私の肩をがっしり掴んで逃がさないような気迫で迫る。
「おいおいイセリア、治療は済んでるとはいえ、
カナタは痛み上りもいいところだ。
今日はもう遅いし、休ませてやれよ。」
パパに言われて私は大きなあくびをした。
そういえばそろそろ寝る時間だ……
「おやすみ、カナタ。」
パパは笑顔で私に挨拶した。
『ふぁーい…… おやすみ…… パパ…… ママ……』
私は眠い目をこすりながら寝室へと行った……
「あなた……」
「わかっていたことだろ? 俺とお前の子だぞ?」
「でも、まだ5歳よ? 普通ならまだ元気に遊んでる頃よ?」
「前々から冒険者に興味を持っていたじゃないか。」
「それはそうだけど、あなたは心配じゃないの?」
「心配じゃないといえばうそになる。
だが、カナタをこれ以上家に縛り付けておくのも限界がある。」
「街の者から聞いたのだが、
あの騒動の時、指揮をとっていたのはカナタだったそうだ。
お前に似て周りを見て指示をだせる子だ。」
「だけど、あの子はあなたにも似て好奇心旺盛よ?」
「さすが俺の子だな。」
「笑い事じゃない。」
「もし、俺が同じ状況ならどうすると思う?」
「家出してでも冒険者になろうとする?」
「よくわかってるじゃないか。
きっとカナタもそうするだろうな。」
「そんな、大それたこと……」
「いや、するだろうな…… カナタなら。
で、カナタ達をどう見る? ラルフ。」
「カナタは戦闘をしながら、冷静に突破口を探るのはさすがと思った。
一緒にいた二人に負担をかけないように、
順番を考えて魔法を撃つ相手を選んでいるあたり、
とても5歳児とは思えん…… 本当にあの子は5歳なのか?」
「それは間違いはない。」
「ええ、間違いなくあの子は5歳よ。」
「他の二人に関しては目立ったことはないようだが、
あくまでも冒険初心者ってレベルでの話だ。
5、6歳であのレベルなら結構な才能だぞ。」
「それ程か?」
「ああ、間違いなく俺の最年少記録を塗り替えるだろうね。
うらやましい才能だよまったく……」
「あなた…… もしかして……」
「それ程の才能なら腐らせるのはもったいないな……
あした、三人を集めて気持ちを聞こう。」
「それ本気?」
「ああ、本気で冒険者やりたいなら許可を出す。
他の二人に関しても俺から話をしよう。」
「私は許さないわよ!」
「まぁ、冒険者っていうのは危険が付きまとう上に、
実入りは少ないからな、大変なのは間違いはないだろう。
俺たちが実際そうだったわけだしな。」
「だったら!」
「だがな、自分の行動で人々が笑顔になるのは、
どんなものよりもかけがえのないものだと思うぞ?」
「それはそうだけど……」
「暖かく見守ってやろうじゃないか……」
「わかったわ…… 貴方がそこまで言うなら……」
「もうちょっとぐずるかと思ったがなかなか素直だな。」
「あの子は貴方の子だもの……
呆れるくらい似てるわよ……」
「容姿はばっちりお前に似てるけどな。
あれは美人になるぞ。」
「まったく…… おだてても何も出ないわよ?」
「うおっほん…… いちゃつくなら俺の見てないところでしてくれ。」
朝起きたらパパに呼び出され、
行ってみるとアルスとシナモンも来ていた。
そして、何事かと二人の両親も来ている。
「こんな朝早く呼び出して済まない。
二人の親御さんも来てもらって済まない。」
「うちの子が何かしでかしましたか?」
「しでかしたといえばしでかしたんだが、罰するほどじゃない。
それよりもだ……
カナタ、お前は本当に冒険者になりたいか?」
『うん!』
私は即答した。
昨日もそうだったけど簡単にはあきらめられない!
「ダメだと言ったら?」
『家出してでもなる!』
「だろうな、そういうと思ったよ。」
『こんなワクワクすること、我慢なんてできないよ!』
「まてまて、俺はだめだと言ったら? とは言ったが、
ダメだとはいってないぞ?」
『じゃ、じゃぁ!』
「ママを説得するのは苦労したぞ?」
『パパ、大好き!』
私はパパに抱き着いた。
「と、カナタは言っているがお前たちはどうする?」
パパは私を抱え上げながら、アルスとシナモンに向き直った。
「カナタが行くなら俺も行きたいけど……」
「私も二人が行くなら……」
二人ともはっきりしないな……
ご両親がいるからか……
「君たちの本心はどうだ? 冒険者とは危険がつきものだ。
場合によっては死ぬことだってあり得る。」
『パパの言ってること事実だよ。
私は覚悟の上で冒険者になりたい!
でも、二人は私に付きあう必要はないんだよ?
もし、冒険者になるのが私がいるからってだけなら、
やめたほうがいいよ?』
私はあえて厳しく行った。
確かに三人と行けたら楽しそうだけど……
「俺は行く! 母ちゃんには悪いけど、
カナタは俺が守ってやらないと無茶しそうだからな!」
やだ…… 深い意味はないだろうけど目が真剣だ……
これ、あと10年後だったら告白に等しいよ。
「私も行く! 確かに怖くて不安だけど、
二人だけだと危なっかしいから、私がきっちり面倒見ないと!」
さすがシナモン、お姉ちゃんだなぁ。
「二人とも、本気か?」
パパの真剣な表情に、二人とも力強くうなずく。
「わかった、奥でイセリアが準備している。
装備をうけとってこい。
あと、二人のご両親は俺と話そう。」
『パパ、ありがとう!』
私はパパにお礼をいって、二人を連れておくに行った。